農の考察 #5 農業における微生物
農業における微生物の位置
農業において、微生物はどのような位置にあるのか。一般的には食品の微生物で腐敗菌や食中毒を起こす微生物を思い浮かべるかもしれないが、農業においても微生物は良い方にも悪い方にも大きく関わっている。良い悪いと言っても微生物は一生懸命生きているだけなのだけどね。
悪い方から言うと人間に対して病気を引き起こす菌がいるように、植物に対しても病気を引き起こすものがいる。うどんこ病やナス科で見られる青枯病などがある。私もトマトを栽培していて青枯病になる畑があり、非常に困っている。
悪さをする微生物がいる一方で、これら病害菌の繁殖に拮抗して抑制する微生物がいる。私は青枯病に対して有効に働く微生物がいる可能性に期待しており、いくつか微生物資を含む資材や微生物の働きをよくするような資材も試している。また、土を豊かにしてくれる微生物もいる。有名なものにマメ科の根を住処にする根粒菌がある。根粒菌は窒素固定細菌であり、空気中の窒素を植物が利用できる形に加工して植物に分け与える。代わりに植物は光合成で生成した炭水化物などを提供するという共生関係にある。
このように、農業においても微生物は多岐にわたる働きをしており、農業を考えるうえで欠かすことのできないピースとなっている。
微生物とはどんな生き物なのか
微生物とは言うものの、この名称はざっくりし過ぎており、正直どう説明してよいか困ったものである。分類していけばどれだけでも細分化していく沼のようだ。微生物という名称からすると、目視できないサイズ感の生物ということしか分からない。それでもどんな働きを持ち、どんな環境で生活するのかを知ることで微生物を効果的に利用することができると思う。
根粒菌 マメ科の根に根粒を形成し窒素固定を行う。好気性。
乳酸菌 有機物を分解して植物の生長を促進する成分を生成し、phが低下することで他の微生物が繁殖しにくい環境を作る。微好気性。酸素が多すぎると死んでしまう。
放線菌 有機物を分解して土を肥やすと共に抗生物質を生産し病気や害虫を防ぐ。通性嫌気性。酸素があってもなくても生きられる。堆肥の熟成が進むと白く見えるものが放線菌らしい。
バチルス菌 有機物を分解して土を肥やすと共に抗生物質を生産し病気や害虫を防ぐ。好気性。納豆菌はバチルス菌に含まれる。
トリコデルマ菌 有機物を分解して土を肥やすと共に、病原菌や害虫に寄生して生育を阻害する。嫌気性。
微生物を活かすために
いくつか農業でよく出てくる微生物について簡単に説明しましたが、それぞれ働きも生育しやすい環境も異なります。
まずは何を目的に微生物を利用したいのかを明確にし、それに適した微生物を選択します。そしてその微生物が好気性なのか嫌気性なのかによって、地表面付近で増えるのか深い所で増えるのかも変わります。好気性のものであれば酸素が供給される地表面付近に施用したり、畝を高く立てたりしたほうがいいかもしれない。嫌気性なら深めに埋めるなど。
このように、目的の働きを最大限引き出すには環境を整えてやる必要があるし、ヒトと同じようにエサも必要となることから、有機物を土に与えるのは前提となる。
以上のように微生物を活用してより良い農業をやっていきましょう!