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ドンキのクラフトビール | このビール、資本主義の味がする。
2015年、私は大学で大手ビール会社の競争戦略についての卒業論文を書いた。
そんな大のビール・ビール業界好きである私に衝撃的なニュースが届いた。
なにやら、ドンキがクラフトビールを発売したらしい。
買ってよかったものの記事で書こうと思っていたのだが、思わず熱くなってしまい、文量が多くなってしまったので個別記事として切り出しする運びとなった。
ドンキのクラフトビール
このクラフトビール、資本主義の味がする。
そんな複雑性を孕んだクラフトビールがドン・キホーテのPB・情熱価格から発売された。
ブルワリーがこだわり抜いたビール、そしてそれを彩るパッケージ。
意匠を盛り込み高めたブランディングをもとに、大手ビールの2~5倍ほどの価格で展開する。
クラフトビール。
そんなイメージで付き合っている。
こんなことを書いておきながらも、私は好きだ。
それらを合理性という爆弾をもとに土足でぶっ壊してきたのがこのドンキのクラフトビールだ。
まず、パッケージが皮肉だ。
多くを語らず、デザインと原材料と各種数値くらいの情報量で飲み手の想像力を働かせるクラフトビール。
翻ってドンキのクラフトビールは、パッケージに全部書いてある。
前戯の良さを知らないタイプ。
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資本主義とクラフトビール
かつてジャスコが町の個人商店を蹂躙してシャッター商店街と化した、ドンキがクラフトビール界を蹂躙している。…と一概には言えないからこそ、私はこのビールを結構なペースで愛飲している。
その理由は以下の通りだ。
あくまでドン・キホーテのPB商品なので、販路はドン・キホーテグループ内に閉じられている。
商品展開はクラフトビールの中ではベーシックで、凝った意匠のプロダクトはない。
"分かりやすさ"に特化しているため、クラフトビール業界にライトユーザを取り込める可能性がある。
"飲みやすさ"にも特化しているため、これもライトユーザの獲得に寄与する。
何が言いたいかというと、ドンキのクラフトビール進出は、市場の独占に踏み出した活動とは捉えられないということだ。
育ってきた既存市場において、既存企業と共生しながら市場拡大の一翼を担う気概を感じる。
世界のクラフトビール市場規模は、2020 年に 952 億 3,000 万ドルで、2021 年から 2028 年にかけて 10.83% の CAGR で、2021 年の 1,025 億 9 千万ドルから 2028 年には 2,107 億 8 千万ドルに成長すると予測されています。
PBを持つ小売企業からしたら、わざわざ無視する必要がないマーケットなのだ。
これが仮に、
全国のスーパーでも買える。
その結果、他のメーカーのフェイスを圧迫し、機会損失が発生。
キリンが時間をかけて実施してきた、よなよなエールを全国展開して獲得し、日本におけるクラフトビール市場の拡大活動を無に帰す。
資本力による暴力を行使。
価格優位に偏重した大手企業による市場競争の加速。
利益が取れず、商品開発費を掛けられず停滞。
日本におけるクラフトビール業界の衰退。
クラフトビール好きの購買行為がクラフトビール業界を壊す。
といった最悪のストーリーは見えない。
ちょっと大袈裟過ぎるけど。
私とビール
話は逸れるが、私はビールの味で言ったらサッポロ黒ラベルが一番好きだ。
クラフトビールも好きだけど、サッポロ黒ラベルのまっすぐで太い味わいが好きだ。
でも、業界全体での活動を見て、好きな会社はサッポロビールではなくキリンビールだ。
よなよなエールを初めて飲んで、クラフトビールというものに触れた。
量販店への販路獲得に向けて動いたのはキリンビールだった。
それを知って、クラフトビール業界の未来が明るくなることを願いながら自身の卒業論文のテーマに取り上げた。
調べるにつれ、キリンビールの取り組みがもっと好きになった。
当時はアサヒスーパードライの味わいが好きだったけど、心の中ではずっとキリンビールを応援していた。
(こう振り返ってみると、応援はしてるけど売上には全然貢献してないな。)
2024年現在も、キリンビールは限界利益率が高いカテゴリーの筆頭としてクラフトビールを据えている。
発泡酒、新ジャンル、RTDカテゴリーにおいては、各主力ブランドの地位をさらに強固にし、狭義ビール以外の需要に応えて いきます。クラフトビールや国産洋酒、ノンアルコールなど限界利益率が高いカテゴリーを拡大することで収益性向上を図ります。
https://www.kirinholdings.com/jp/investors/library/integrated/reports/
上場しているキリン・アサヒ・サッポロの統合レポートにおいて、「クラフトビール」という具体的なワードが出ているのは、キリンだけだった。
アサヒはスーパードライ、サッポロは黒ラベル。それぞれの確固たる既存ブランドのさらなる強化を軸にしている。
特にサッポロは凄い。もともとビールが強いブランドで、酒税法改正による生ビール優位の市場となった。ビール事業だけで見たら、完全に追い風が吹いている。
うーん、なんなんだ俺は。
なんで業界分析してるんだ?
![](https://assets.st-note.com/img/1729296077-yR43rKxaBXPColFjmtHYiMET.jpg?width=1200)
ドンキのクラフトビールはどうなのよ?
前述した通り、分かりやすさ・飲みやすさに特化した味わいだ。
現在発売されている4種類すべて飲んだが、どれも癖がなくそれぞれのジャンルにおける王道の味がする。
故に、このビールではクラフトビールに求めたい味わいすべてを得ることはできない。
各ブルワリーがこだわり抜いた結果としての味のキャラクターはこのビールにはない。
でも美味しい。
この記事を書くくらいには気になる存在になっていたので、リピートして私は既に1ダースほど飲んでいる。
そのうちの半分はSTOUT。黒ビールだ。
コクは深いとは言えない。でも、確かにある。
STOUTはIPA等より20円ほど安く、税別218円で販売されていた。
凝った黒のクラフトビールはチョコレートやコーヒーなどを原料に使っていたり、手の込んだものが多いので高価になりやすいがこれは安価に抑えられている。
この価格帯の黒ビールの中では頭一つ抜けていると思う。
ギネスをあっさりさせて、舌に残らなくさせたような味わい。ギネス青年期って感じ。
冬場に飲むには少し軽いかもしれない。
ちなみに私の推しの常飲できる黒ビールは、サッポロ麦とホップ〈黒〉だ。
これまでだらだらビールへの愛を語ってきた割に、第3のビールかい!とツッコミをいただきそうだが、美味しいから飲んでいる。
酒税法改正前は100円前後で買えたが、現在は安くても140円くらい。
自販機で買うジュースと同じ価格と考えると、満足度は段違い。
また話が逸れた。
分かりやすさと飲みやすさが、ドンキのクラフトビールにはたしかにある。
おわりに。
この記事を書いて、自分自身のビール愛を再確認することができた。
私はこれからもビールを買い続けるだろう。
大手の第3のビールから小さな醸造所のクラフトビールまで。
その選択肢にドンキのクラフトビールが入った。
美味しい(好みの味わいの)ビールが手軽に手に入るということ。
これはビール好きからしたらただただ嬉しいことだ。
素直に喜ぼう。
価格競争の激化を加速する一因にならないように、今まで通り好きなビールを好きなときに買おうと思う。
消費活動を通して、私もその一端を担っている。
その意識を忘れないように。
喉を鳴らして今日も美味しく乾杯したいと思う。
では、皆さんもよいビアライフを!
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