「坊っちゃん文学賞よみ芝居」視聴ノススメ①『ジャイアントキリン群』
上記の映像は、松山市の主催する「坊っちゃん文学賞」の第19回にて大賞を受賞された、そるとばたあさんの傑作ショートショート「ジャイアントキリン群」を「よみ芝居」という形式で舞台化したものです。原作は以下の松山市のリンク先からお読み頂けます。
そるとばたあさん著「ジャイアントキリン群」原作
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/machizukuri/kotoba/bocchan.files/19th-01-giant.pdf
上記の原作をお読み頂くとご理解いただけると思いますが、この作品を舞台化するにあたって一番のネックとなるのはやはりグラウンドに突如として現れたジャイアントキリン(大きなキリン)の群れをどう立体化(表現)するかでしょう。
しかも、このキリン達は高校球児達に野球の指導まで行わなくてはなりませんから、単なる舞台上の置き物では機能しません。「キリンが野球を教える」という極めて魅力的かつシュールなシーンにどれだけの説得力を持たせられるかが、この舞台の成功の鍵であると言っても過言ではありません。
そして、野球のグラウンドというのは舞台という空間に比して広大です。その広い空間を個性あふれる野球部員達が一丸となって白球を追う青春群像劇を原作のエッセンスを壊すことなく舞台の上で再現しなくてはならないわけですから、実に高いレベルの演出と演技が要求されることは明らかです。
映像をご覧頂くとおわかりいただけると思いますが、背景に黒一色の幕が降りた舞台の上には野球場を示すものは一切ありません。ところが、高校球児に扮した俳優の皆さんが息の合ったコミカルな演技をするうちに観客である私達の目にはいつしか、抜けるような青空の下で太陽の光を浴びる広大なグラウンドが浮かんできます。
そうして観客の心の準備が整った絶妙なタイミングでキリンが舞台の上に姿を現します。キリンの衣装も実に見事なのですが、なんといっても素晴らしいのはキリンを演じる俳優さんの身体の動きです。スラリと背筋の伸びた立ちポーズから爪先立ちで足を運ぶそのしなやかさと美しさはバレエダンサーのようで、不思議な静寂と可笑しさを舞台にもたらします。どこか能楽の舞台に通じる幽玄の美を感じたのは私だけでしょうか?
キリンが舞台に現れた瞬間から、この「よみ芝居」はイッキに観る者を物語の中へと導いていきます。
原作ではキリンがその長い首やまだら模様といった身体的特徴を活かして野球の指導を部員達に施すわけですが、キリン役の俳優さんが装着している被り物には長い首がありません。その制約も、朗読のナレーションと音楽の伴奏に上手くタイミングを合わせた巧みな演出と演技で乗り越えていて、さすがプロの表現者の方々だなあと唸るばかりです。
原作を読み込むことで、舞台化するにあたって困難と思われるシーンを演出と演技力でいかに見せているのかという発見ができるのも、この「よみ芝居」の楽しみ方のひとつと言えるでしょう。
「ジャイアントキリング=大逆転」という言葉遊びから生まれたジャイアントキリン群と球児達の青春に込めた、そるとばたあさんのメッセージが爽やかな笑いと感動とともに胸に押し寄せる素晴らしい舞台公演です。原作と合わせて動画をご視聴頂くことで「よみ芝居」をより深く楽しむことができると思います。
大好評のうちに幕を閉じた2023年11月公演に続き、2024年8月公演の開催が迫って参りました。以下はそのご紹介になります。
「坊っちゃん文学賞よみ芝居2024」
観劇チケットのご予約は下記の予約フォームからお願い致します。https://forms.gle/qnPnGyeXWdsCFxvCA
各回200名様。
前売り:一般2,000円・高校生以下1,000円
当日 :一般2,500円・高校生以下1,500円
※前売り券は当日券に比べて500円割引になります。
公演日程は以下の通りです。
8月3日(土曜日)18:00開演
8月4日(日曜日)11:00開演・15:00開演
会場は松山市総合福祉センター1階 大会議室(松山市若草町8-2)です。
観劇前に原作をチェック!
今回舞台化される3作品の原作を読んでみたいという方は
下記のリンク先(松山市ホームページ)からPDF形式にてお読み頂けます。
『ドリームダイバー』
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/machizukuri/kotoba/bocchan.files/17th-01-dream.pdf
『父の化石頭』
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/machizukuri/kotoba/bocchan.files/18th-04-chichikaseki.pdf
『空色ネイル』
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/machizukuri/kotoba/bocchan.files/19th-03-sorairo.pdf
過去に上演された「坊っちゃん文学賞よみ芝居」をご覧になりたい方は
下記YouTubeチャンネルから!
https://m.youtube.com/@engeki.office59
ご興味を抱かれた方は是非ともよろしくお願い致します。
さらに2024年7月28日(日)の13時から、下記サイトにて、そるとばたあさんと舞台芸術倶楽部「ごそく楼」の皆さんのインスタライブが開催される予定です。原作者と演者の間でどのようなトークが繰り広げられるのかとても楽しみですね。
https://www.instagram.com/botchan_yomi/
最後になりましたが、わたくし中乃森も「父の化石頭」という作品を今回舞台化して頂くにあたり、僭越ながら以下のようなメッセージを配信しております。よろしくお願い致します。