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拝啓、小学5年生の私。あなたは悪くなかったよ。


拝啓 小学5年生の私。


こんにちは。私は、28歳になったあなたです。


私はいま、「お話」をすることで、誰かの幸せを一緒につくるお仕事をしています。想像つくかな。きっとつかないよね。だけど、私は、あなたともお話をしたいと思っています。でも、それは難しいから、手紙を書きます。



もう18年前になるんですね。

今のあなたは、これっぽっちも望んでいなかった中学受験の勉強から解放されたころでしょうか。


塾に通う前は楽しかったよね。帰ってきたら部屋にランドセルを放り投げて友達と遊びに出かけたり、金管バンドクラブでトロンボーンを吹くのに夢中になってたね。あの時、はじめて音楽が楽しいって思ったんだよね。


本当に突然だったね。あなたは、今まで通っていた近くののんびりした塾から、電車で4駅も先にある、東京ならだれもが知るエリート塾に通うことになりました。

入塾テストを受けさせられて、8クラス中下から4クラス目とかいうなんとも中途半端なクラスに入って。国語算数理科社会、膨大なテキストを渡されたね。



毎日毎日出される宿題、しんどかったよね。いや、違うか。宿題がしんどかったんじゃないね。「なぜ、これをやらなくてはいけないのか。」の理由が分からなかったのが、一番しんどかったんだと思う。


ママとパパは舞い上がって、あなたが地元の一番頭のいい中高一貫の女子校に入ってくれないかとウキウキしてた。あなたは、家の隣のある三中に行きたかったのに。



宿題がやりたくなくて、やれなくて、ママにも塾の先生にもいっぱい怒られたね。どんどん成績は下がって、最終的に下から2番目のクラスになっちゃったね。

でも、正直ちょっと、気が楽になったと思わない?あの子もあの子も、あなたと同じだった。「私たち、一緒だね。」って心の中で思ってたんだよね。言えなかったけど。



新しい塾に通い始めてからあなたは、自分の気持ちをうまくコントロールできなくなるんだ。ストレスで友達にあたったり、文字通りの火遊びに興味を持ち始めたり。お父さんのライター持ち出したこと、よく覚えてる。


周りの友達もそうだった。学年の半分以上が「お受験」をするもんだから、教室には常にストレスが渦巻いていて。いじめも腐るほどあったし、担任を殴ったり、学校から脱走する子もいたし、不登校になる子もいたね。

みんなイライラしていた。
教室も家も、決して、幸せな空間ではなかったよね。


つらいなんて言葉、きっと知らなかったよね。使い方、分からなかったよね。

「あんたにいくらかけたと思ってんの」って、ママに何回言われて。将来、あと何回か言われるからそれだけ伝えておくね。でも、次からは無視していいからね。



あなたは勉強ができなかった訳じゃないんだ。

あなたは本当は、勉強が好きなの。勉強が好きで好きで、興味をもったり目的を見つけられたらとことんやる子なの。

中学3年生になったら、どうしてもダメだった体育と数学以外は全部、成績表に5がつくんだよ。勉強を頑張らないと入れない高校にも入れたよ。ついこの間だって、平均点を余裕で超えて国家資格に合格しちゃったんだから。



あなたは今、勉強ができない自分のことを酷く責めてるけど、頭が悪くて勉強ができないんじゃなくて、そんな状況だから、勉強が”したくない”だけなんだ。

目的のない勉強なんて、したくなくて当たり前だよ。大人だってそうなんだから。あなたは全く悪くない。



あなたのママとパパは、東京にきて5年が経ったんだけどね。すごく焦ってたんだ。だって、周りの人たちが、みんな、みーんな”スゴい人”だったから。


私は大人になったから分かるけど、そりゃ、まぐれであんな街に住んでしまったらそうなるのも分かるんだ。

パパは大学を卒業していないし、ママは有名な大学に入れなかった。「じゃあ、飛鳥なら。」って思っちゃったんだろうね。今の私はね、ママにもパパにも、きっとどこかで劣等感があったんじゃないかなって、思うの。


でも、そんなこと、あなたには本当は関係ないはずなの。ママとパパの劣等感をあなたが埋めるなんて、ちゃんちゃらおかしい話ってわけ。




だから私は、あなたのことをめちゃくちゃ褒めたいと思っています。


あなたが、「受験を辞めたい」とちゃんとママに言えたこと。泣きながら。叫びながら。超つらかったろうに、よく頑張ったね。


あの時、ママはあなたを怒った。ひどく怒った。

でも、そこであなたがちゃんと自分の気持ちを伝えられたから、あなたは、「親の敷いたレールに乗らない」という選択肢を永久に手に入れた。

そこが一番偉かった。本当に感謝してるんだ。ママはあのリビングで絶望したけどね。



だって、あなたは言えたけど、他の同級生は言えなかったじゃない。本当は受験なんてしたくないって。

あの子たちだって本当は嫌々言いながら塾に行ってた。だから、「飛鳥ちゃんは、友達と遊ぶために塾辞めたんだ。」なんて嫌味を言われたんだよ。あの子だって、お受験したくて、した訳じゃないと思うの。


あなたは中学受験を辞めたけど、中学受験を辞めたことに今後一切後悔することはないから大丈夫。

どちらかというと、中学受験を辞めたことよりも、ママのあの絶望、の方が後を引いてるかな。


ママは、弟にも同じことをさせようとする。私がダメなら弟こそ、って思ったのかな。私はそれを横目で見てることしか出来なかった。それだけはほんのちょっと後悔してるかもしれない。



あなたは、人生でもう2回だけ、どんなに反抗してもママとパパの言うことに従わなくちゃいけない時がきます。


それは、中学1年生の夏と大学4年生の秋。ごめんね、こんなこと言われたらもっと絶望してしまうかな。でも、それさえ乗り越えたら、もうあなたは、自由になる。


あと12年もかかる。ごめんね。


もっと自分を大切にすれば良かったね。

もし、もう一回人生をやり直せるなら、私は今のあなたから人生をやりなおしたい。でも、やっぱりそれも難しいから、心づもりだけしておいてほしい。




それでも。


どんなに人生に絶望しても、毎回、毎回、ママでもパパでもない誰かが、ちゃんとあなたを助けてくれます。



中学のときの塾のチューターのT先生は、ちょっと怪しまれる距離感になるくらい、私の話を聞いてくれる。とっても素敵な先生だった。


高校時代のバンドメンバーのSちゃんは、私が大好きな彼氏に振られたときに一緒に泣きながらなぐさめてくれる。


大学の友達や先輩は、みんなあなたの人生の最高のよき友になってくれる。あなたがずっと笑顔でいられる「居場所」を作ってくれたよ。


会社員になってからは、上司のFさんやKさんにめちゃくちゃ助けられます。23歳のあなたは、40歳オーバーのおじさんたちと、頻繁にお酒を飲みに行って、愚痴をたくさん聞いてもらいます。




そして、28歳の今の私もまた、誰かに助けられています。



あなたは、将来大好きな人とちゃーんと結ばれます。


あなたは今から18年後の秋に結婚するんだけど、この人は、私を何回も何回も救ってくれました。


心におっきなおっきな怪我をしてしまったときも、あなたが急に体調が悪くなって倒れた日も。もう無理、と人生諦めそうになった日も、何回も何回も、この男はあなたを守って、励ましてくれました。

だから、今から会えることを楽しみにしていてね。




そして、今の私を助けてくれた人がもう一人います。


その人には、不思議となんでも話せちゃうんだ。友だちでも、先輩でも、家族でもない、不思議な関係。

きったない感情も、自分の夢?とか希望とかも、全部恥ずかしがらずに話せちゃうの。今のあなたにも、こうゆう人がいてくれたらよかったのにね。私はこの人を、あなたに紹介したいくらいだよ。




今のあなたの周りには、助けてくれる人がいないと思う。



つらかったと思う。相談なんて、誰に・どうやってすればいいか、分からなかったんだと思う。

でも、あなたはこの「人生最悪の危機」を自分で乗り越えた。「受験なんてしたくない!」って叫べた。本当にすごい。誰の力も借りなかった。


あなたは、最高だよ。よく頑張ったよ。



あなたは悪くないよ。




あとは誰かの力を、ちゃーんと借りながら生きていってね。最初は難しいけど、ちゃんと手を差し伸べてくれる人がいるから。




人生は案外悪いもんじゃないから、それだけ信じて、

あと18年間、なんとかやってみてください。




28歳のあすかより。






***






「インナーチャイルドセラピー」というカウンセリングを受けたことがあります。インナーチャイルドとは、自分の内側にある、傷ついた子どもの心のこと。このカウンセリングを受けた時、私の対人関係の悩みが、小学校5年生のときの傷ついた記憶に関係していることを知りました。



子どもの頃の記憶と、今の悩み。一見関係のないことでも、あなたの心の中ではひどく糸が複雑に絡まり合います。幼い頃に傷ついた記憶は、私たちの無意識レベルで脳に刻み込まれていて、いつだって感情をややこしくしてしまうのです。


私は、勉強なんかできなくたって、”良い学校”になんか入らなくたって、そのままを愛されたかったのだと思います。私と弟は、「条件つきの愛」を与えられてきました。親の関心が私から弟へ移った時は、寂しいけどどこかほっとしていたような気もします。条件を渡されなくて済んだので。


私たち兄弟は、なんとか自分のやりたいことや勉強する目的を見つけ出し、それぞれ猛勉強をしました。”自分が決めた目的”さえあれば、私たちはもともと、自分でいくらでも勉強なり努力なりをする子どもだったのです。私の母親と父親がそれに気づいたかは分かりません。



このnoteを書こうと思ったのは、あなたが今とっても悩んでいて辛いことも、きっと過去の傷ついた経験と複雑に糸が絡み合っているからかもしれないよ、お伝えしたかったから。あなたがまずすべきは、過去の気づいた子どもの自分を癒してあげることかもしれません。


勇気がいることだと思うけど、ぜひ、いつか、子どもの頃の自分にnoteを書いてみてください。そして、その子の痛みを分かってあげてください。癒してあげてください。その子が感じている苦しさを、あなたが包んであげてください。



インナーチャイルドセラピーでは、「インナーチャイルドを抱きしめる」という表現を使います。もう、大丈夫だよと、言いながら、どうかその子を、ぎゅっと抱きしめてあげてください。


今のあなたが、これ以上苦しまないためにも。



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《中野あすかとは》
月曜日が辛くない生き方を一緒に作る28歳のコーチ。
仕事が大好きすぎて頑張ってきたけど組織活動が苦手で社会不適合が大加速。大絶望の末に「対話」に出会い、裸足のままフリーランスになる。
「勇気づけの対話」を常に考えています。
文章を書くこと、本を読むこと、音楽を聴くことが好き。岡村靖幸ファン。
成功よりも幸せを優先できるようになった人🐧

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