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空き地にできた本棚タイム

1年ちょっと続いた常駐の仕事が1月でひと区切りした最初の週。たくさん学ばせていただきつつも、終わるとやはり羽が伸びた思い。自分の裁量で仕事ができることはこの上ない幸せだ。久しぶりに自社に出社すると浦島太郎状態で、会社がある代々木の街もいろいろ変わってしまって驚いた。思えば2人の子の産休育休とコロナ禍が重なり、間に何度か出社したことはあったものの、落ち着いた気持ちで出社したのは5年ぶりくらいだった。会社で生で会うメンバーも懐かしく感じる。

自宅作業の日の朝、こども部屋兼寝室の和室を掃除をしていて、ふと棚やキャビネットの周りを大きく囲っていたベビーゲートを外した。下の子も2歳を超え、もういらないかもとずっと思っていたのだが、急にふと「いま外そう」と思い立った。ベビーゲートを外すことで、今まで使えなかった棚も使えるようになり、増え続ける絵本を置ける棚が増えた。2歳児がぎゅうぎゅうに詰め込まれた本棚から絵本を取り出せなかったり、4歳児が本を片付ける時に入りきらなくて本棚と本の頭の隙間にまで絵本を押し込んだりすることも、これでなくなるだろう。外したらいいことだらけだとわかっていたがなかなか外すことが出来ずにいたのに、突然外す勢いが来た。

夕方家に帰ってきた子どもたち。夫もすっきりした部屋が嬉しかったのか、部屋が変わったことを子らに伝えると、子らは見ずにはいられないと2階の和室に駆け上がる。戻ってきた4歳児にどうだった?と聞くと、「いいんだけど、あの白いの(ベビーゲート)が家からなくなっちゃうのはさみしい」と言う。彼女が赤ちゃんの頃からあって、ある種心象風景のひとつのなっていたのかもしれない。かれこれ4年間ほどあったものが無くなるのは、先日まであった物件が、急に解体されて空き地になってしまったような一抹の淋しさもあった。

お風呂からあがって寝る前の和室タイムが来た。新設された本棚に置かれた絵本を、さも新しい絵本のように物色する子どもだち。2歳児にいたっては、古い本棚から新しい本棚に絵本を移植しはじめ、傾いた本の上に次の本を重ねるスタイルで押し込むので、本棚がカオスになってゆく。

私は朝、絵本を整理しながら「今晩これを読もう」と思っていた『じごくのそうべえ』(たじまゆきひこ 童心社 1978年)を取り出した。去年のクリスマス会で年長の親が演じていた劇の原作だ。あまりにもおもしろい劇だったので、それ以来、この絵本のファンになっている。子らも自分が読んで欲しい本を1冊ずつ持ってきた。子らのリクエスト本を読み、最後に『じごくのそうべえ』を読む。子どもらはケタケタ笑い、私も読んでいておもしろかった。地獄と鬼の絵のユニークさと、桂米朝の上方落語の「地獄八景亡者戯」を題材にしたという関西弁の調子のよさとが相まって、愉快痛快な珍道中絵本だ。型染めで描かれた絵の質感もすばらしい。田島 征三さんと双子の兄弟ということもおどくべきことで、天才双子作家の作品をもっと読みたいと思う。あぁいい絵本だった、と充実した気持ちのまま寝た。

『じごくのそうべえ』(たじまゆきひこ 童心社 1978年)


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