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濱田さんの白

昨日の保育園の懇談会で、保育士に「早起きが基本」と言われたばかりなのに、いつもより1時間遅い7時半に子どもらを起こすていたらくな土曜の朝。夫にいたっては起こされるまで寝ている。

いつもならなかなか起きずにぐずぐずしている4歳児も、いつもより1時間多く寝たことによってすっくと立ち上がり、母と一緒に朝食をつくる気満々だ。普段寝かせるのを1時間早めなければならない。

夫が夜中に食した永谷園のお茶漬けのおまけについてきた、東海道五十三次の絵がプリントされたカードがキッチンカウンターに置かれている。江戸時代とはこういうものだと4歳児に伝えたくてカードを渡した。

「昔は人間とかお馬さんが荷物を運んでくれたんだよ〜。お馬さん優しくて力持ちだからね」と言うと、お馬さん、おおきいんだよ〜の話になり、400キロもあるよ〜と伝えると、「え?それってどういうこと?」と4歳児が聞くので、「そうだね〜、〇〇(4歳児)が16キロだから25人くらいいる感じかな?」と答えると、4歳児はケケケと笑った。

土曜の午前は掃除をしたくてたまらない。平日満足に掃除できていない部分が気になって仕方ないのだ。そして1月10日の期限から20日間以上遅延している保育園の卒園文集に掲載する我が家の誌面づくりも、いい加減進めねばならない。

午前中、子らの外遊びを夫に任せ、私は掃除と文集誌面づくり。文集誌面は在園家庭は必ず提出する必要があり、卒園する子たちへのメッセージや、我が子の成長ぶりなどをA4用紙1枚に自由に書く。年長親については枚数無制限なので思いの丈を書きまくることが可能だ。我が家は上の子が生まれてから3年くらいは毎月発刊していた家族新聞のフォーマットで毎年寄稿している。なのであとはコンテンツだけだ。普段発刊していたものは Googleスライドで完結させるのだが、卒園文集ではAdobe Indesignで清書するのが常となっている。ちなみに業務でそんなに使わないけどAdobeのソフトではIndesignが一番好きで、使っていてワクワクする。

夫は行きたい展示が5個くらいあるらしい。午後はひとつでも展示に行ってもらえたらと、夫1人で行くか、家族で行くか、父母が相談している様子を4歳児が聞きつけ「〇〇(4歳児)も行く!」と言って昼寝もしないで親を見張りはじめた。弟の2歳児も「いくぉ!!」となっている。というわけで下の子の昼寝後、家族で出発することにした。

訪れたのは、神保町の STACKS BOOKSTORE 。写真家・濱田晋さんの“Snow will fall on to someone’s town”という展示があり、オープニング日ということで濱田さんは在廊していた。

濱田さんの作品は水色塗られた長い木のフレームの中に、白い写真が一筋に並んでいた。白い写真というのは離れてみると白い写真という意味で、真っ白というわけではなく、近づくとようやくわかる白に近いグレートーンの写真だった。よおくみると、薄く青も入っているよう。年末に濱田さんがみた風景を展示してほしいというオファーがあり、「大喜利みたいにしたくなかった」と濱田さんは言った。タイトルに”snow”とあるが、雪の写真ではなく、雪景色みたいに淡い白に変換された日常の写真で、とても静か。そんなふうに変換する濱田さんならではの視点もいい。

STACKS BOOKSTORE ははじめて訪れたがおもしろいお店で、本とクラフトビールと服と雑貨が売っている。足元のバザーコーナーみたいな箱の中には、氷を入れてプロペラが回るペンギンの形をした「元祖冷風機」まで置いてあって子どもがそれを欲しがった。POPEYE の編集なんかもされていた方がつくったお店とのことで、昭和時代かな?という感じのビンテージPOPEYEも置かれていた。

キュレーションされた本屋さんの本棚はつい見入ってしまう。いろいろ店内をみていくと、写真家で文筆家の植本一子さんの棚に行き当たる。『家族最初の日』という日記本を開くと、夫でラッパーの石田さん(ECD)に節約のために水筒を持たせたなどのエピソードともにその日の出費が赤裸々に書かれていて、読むのが止まらない。『うれしい生活』は植本さんが娘を産んでからECDが亡くなるまでの10年間の家族の様子をとらえた写真集で、こちらもじっくり拝見したく、2冊購入した。レジに持っていくと、濱田さんが「一子さんしか撮れない写真がありますよね」と言い、ECDのライブでグッズを買おうとしたら一子さん受付してくれたエピソードなども聞き、古くから知っていることに驚いた。

私が本に夢中になっている間に、いつのまにか4歳児がカウンターに座ってお酒を飲む大人たちと肩を並べて場に参加していた。飲むものもないのに乾杯まで参加していたので少し不憫になり、カウンターに並んだブルーベリージュースを注文。2歳児と半分こで飲んでもらった。

電車の中で、4歳児はずっと私のメモ帳に絵を描いている。私はなぜか何度もバナナの絵を描かせられた。帰りは疲れ果てた2歳児がぐずりそうだったので、動画に頼ると2人とも夢中に。途中4歳児が足をバタバタさせはじめたので、「おしっこだ!」となる親たち。次の駅で夫と4歳児がトイレのために降り、私と2歳児はそのまま電車に乗って先に帰ることに。扉がしまると、私たちと離れ離れになってしまったことに対して泣き叫ぶ4歳児の声が聞こえ続けた。弟の2歳児は次の駅をすぎてようやく2人がいないことに気づき、「〇〇はぁ?〇〇はぁ?」と姉の名を連呼し、また動画の世界に戻っていった。帰宅は夜の9時半。お風呂も入らずすぐに寝た。

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