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山のものと炊き込みごはん
明け方、4歳児が突然起きて「かあちゃんのふうとうにはいっていい?」と聞いてきた。こちらは眠気まなこで、封筒?と思ったが、いいよ、と返事したら、布団に入ってきた。たしかに布団は封筒に似ているかもな、と思いながら目覚めた朝。
この日も別クラスの懇談会があるため、夕方は大きな原っぱのある公園で子らをお迎え。いつもよりちょっと早く帰宅した子たち。4歳児が「ゆうごはん かーちゃんとつくる!」と言って鼻水を垂らしながらキッチンにやって来た。3歳の誕生日プレゼントでもらった赤いあんぱん柄が入った手作りエプロンを着て、気合充分だ。
4歳児には、野菜を洗ったりポテサラのじゃがいもをフォークで潰したり、きゅうりのカットをお願いした。途中の味見が楽しいらしい。食卓に並べると食べないのに、味見だといくらでも食べてくれるものだ。毎回のごはんを味見スタイルしたら、いっぱい食べてくれるかもしれない。
この日の夕食は炊き込みご飯と豚汁とポテサラ。ポテサラは次の日の遠足のお弁当に流用するためにつくった。4歳児が「おかずはないの?」と、いつもおかずを残す癖に聞いてきた。今日はお汁がおかずだよ〜と言って、4歳児もそんなに執着がないのかその場はおさまる。ポテサラは自分がつくったんだと誇らしげに父に報告する4歳児。2歳児も一頭最初にポテサラを食べ切った。
2歳児は自分が食べないものをトレーの外に置くのだが、今日は炊き込みごはんが外に置かれていた。あれ、食べないの?と聞くと、炊き込みごはんに入っている山菜を指をさして、これが気に食わないと伝えてくれる。具が大人すぎたようだ。ここはおにぎりとチーズの力を借りるしかないと、急きょ焼きチーズおにぎりをつくる。差し出すと案の定食べてくれたのだが、途中、やっぱり山菜が入っていることに気づき、取り出そうとする。
私は、これはかこさとしの『だるまちゃんとやまんめちゃん』に出てくる、やまんばあちゃんがだるまちゃんにお土産で渡した山のおいしいものと同じだ、と説明すると、2歳児はそうなの?という顔をしながら「はへ」と返事をし、山菜を食べてみてくれた。いけるじゃん、という感じでそのまま全部食べ、おかわりを要求し、結果4個もおにぎりを食べた。
消灯後しばらくして、何気なく2歳児をみると暗闇でずっと目を開いている。こちらの目線にも気づかず、ひとりでじっと宙をみていた。それをみて、なんだか馬に似ているな、と思った。遠野の馬も、近くにいるけど目をあわせず、だからと行って遠くにいかず、ずっと別のところをみている。隣にいるけど別世界にいるみたいな感じ。いま2歳児も、暗闇のなかでひとりでいる。