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人生が嫌になった鬼

日曜の朝。昨日あんなに反省したのに、今日家族を起こした時間は8時近く。ギリギリまで子の通う保育園の卒園文集の入稿データをつくっており、遅くなってしまった。それにしても夫は自ら起きることはない。

日曜の朝はパンだ。4歳児は朝食づくりを手伝いに母についてきた。なんか切りたい、というので、サラダのきゅうりと切ってもらうことに。昨日海苔巻きに使ったきゅうりの残りを渡すと、あ!これ昨日の残りだね、と4歳児。マイこども包丁できゅうりをさまざまな厚みで輪切りしてくれる。父は娘の切ったきゅうりが入ったサラダを「食感にリズムがある」と評していた。

伸びに伸びた子どもらの髪の毛を切る目的で、母の通う下北沢の美容院へ。母カットにつき、未就学児のカットはサービスで切ってくれるやさしい美容院だ。かれこれ15年以上は通っていて、担当の浅川さんは私とおそらく同世代。子どもを連れて行くといつも可愛がってくれるのでありがたい。子がふたりとなり、いくら子どもといえども、ふたりぶん切るのはそれなりに手間がかかってしまうから、ひとり分はお金を払わせてもらえないかと頼むと「子どもっていろいろ動くしちゃんと切れないので、お金を頂かない方がこちらも気が楽なんです」という返事。浅川さんなりの優しさ発言かもしれないが、そう言ってもらえるとこちらも少し心が軽くなった。

2歳児が美容院で切るのは今日が2回目。前回はマントをしてくれたのに、今日は拒絶モード。裸になる?と聞いて服を脱がそうとするも、それこそオイラの沽券に関わる!とばかりに断固拒否する。しょうがないので服のままでカットした。よだれだらだらの2歳児の首周りは常に湿っており、カットした髪の毛が次々にへばりつく。かゆいかゆいとなってあばれるが、浅川さんは意に介さず、一瞬の隙をついてすばやくカット。匠な技だ。動きまくる2歳児をものともせず、手際よく俊敏にカットしてくれ、ものの3分くらいで「これくらいかな?」と出来上がったカットの完成度に感動する私。本当にありがとうございます。

カット後、夫と合流し、どこでお昼たべる?と相談。下北沢に子連れできたら、保育園のOBがやっているかまいキッチンが多い。おもちゃスペースがあったり、狭めなトイレにも工夫してオムツ替え台が設置されていたり、子どもが食べこぼしたり騒いだりしても「ここはそういう場所なので」と許容してくれるので、子連れでも気軽に来れる。
だけどこの日は夫もいるし、たまには別のところにする?となって、小上がりがある農民カフェに向かう。久々にいくのでGoogleMapをたどっていくと、建物ごと空き地になっていた…。

結局近くのヴィレバンのハンバーガー屋さんへ。朝パンなのにお昼もパンなのが気になったけど、子どもらの食いつきはいい。子どもプレートのハンバーガーには国旗がついた楊枝が刺さっていて、4歳児はフランス、2歳児はブラジルだった。4歳児はもうすぐブラジルに行ってしまうクラスメイトのことを思ったのか、ブラジルの旗の方を欲しくなり、「〇〇(2歳児)、おねえちゃんの旗の方には青がはいっているよ、交換しない?」と、青好きな弟をたくみに誘導し、見事交換していた。

「あ、今日節分やる?」子らの昼寝後、夫が言う。あ、今日なのか、やろう、と気軽に返事。夫が先日、アマゾンでリアルな鬼のお面を買っていたことしか知らないが、どうやら子どもらをおどろかす彼の企画があるらしい。とりあえず準備ができたら連絡する、とのこと。あ、そうだ、赤い服を着たら?、と夫にメッセージを送ってみた。

1分後にいきます、という返事がきた。子らはダイニングテーブルで遊んでいる。いいよマークを送ると、窓を叩く音が。窓から出てきた夫が赤い服どころか本格的な鬼の仮装セットを着ていて、想像以上に仕込んでいたことに驚く。子どもらは阿鼻叫喚。4歳児は鉄砲豆みたいなスピードで逃げ出した。私は怖くて椅子から転げ落ちそうな2歳児を救出し、豆、豆と豆の入った容器をふたりに渡そうとするも、子どもはそれどころじゃない。「鬼は〜そと!福は〜うち!」と投げてみせると、4歳児が正気に戻って鬼に豆を投げはじめ、鬼はしぶとく子らを驚かせようとするもようやく出ていった。

着替えた父がみんなのところに戻ってくる。何してたんだよ〜とうちゃん!と怒ってみる私。4歳児は本物の鬼が来た!と父に報告しつつ、鬼の描写については「赤くてね、とうちゃんぐらいの体の大きさで、とうちゃんそっくりのメガネしてた!」と話しているから、これ以上深ぼって聞かない方がいいと思ったのだが、夫はおもしろがってどんどん聞くので、4歳児はなぜかとうちゃんに似ていた鬼について熱く語る。結局、さっきみた鬼は、とうちゃんみたいな人間が人生嫌になって鬼になったんだ、という設定になった。

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