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#小説

ふしぎのきもち

ふしぎのきもち

 彼は自分が知らないことなどこの世にないと思っていた。幼いころから本の虫で、ありとあらゆる本を貪るように読んだ。食事時も本を読むのをやめないものだから、母親が怒って無理やり本を取り上げると、腹を立て、ぶつぶつ不平を言っていたのを、母親は放って置いたのだが、しばらくすると静かになっている。不審に思った母親が彼を見ると、一心不乱にドレッシングのラベルを読んでいた、そんなこともあった。
 そんな具合だっ

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彼女の言い分

 彼女の良いところは、たいていの人やモノに対してあまり執着しないところで、彼女自身もそれが自分のいいところだと思っている。ある事情で仕事を辞めなければなくなったときは、ひと時の仮住まいだったかのように後を濁さなかった。連絡が来れば当然返事をし、突然連絡が途絶えてしまっても特になにも考えなかった。彼女はうるさいことを言わず、来るものは両手で受け入れ、離れていくものにはくるりと背を向けた。
「それなら

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