見出し画像

1周目

僕は『ナンプレ』が好きだ。
数独ともいう。
3×3のグループに分かれた9×9のマスに1から9の数字を入れていく。

僕は1から順番に入れられるところを探していく。
「ここに"1"が入るな、ということはここにも"1"が入る。」
「もう現段階では"1"は手詰まりだな。」
「"2"はどこか入るかな、、だめだ。"3"は、、」
このような形で、"9"まで考える。
そしてまた"1"から考える。

2周目では1周目では埋まらなかった"2"も埋まるようになるし、少ししか進まなかった他の数字もどんどん埋まるようになる。
2周目、3周目、4周目と進めることで、少しずつ数字が埋まっていく。
「周を重ねるたびに、見る景色が変わるのがたまらなく気持ちいい。」
これが僕が『ナンプレ』が好きな理由だ。

3月末の朝も羽田空港へ向かうモノレールの中で『ナンプレ』を解いていた。

その日は地方へ出張へ。
飛行機での移動は2年ぶりぐらいだった。

【空港での手続きは時間がかかる】と思っていたので、
搭乗時刻の2時間前には羽田空港駅に着いていた。

お腹が空いた。
駅を出て左に曲がると、『サブウェイ』があった。

【サブウェイの注文はめちゃくちゃ難しい】という噂は耳に入っていた。
『ラーメン二郎』と同じ理由で四半世紀、一度も足を踏み入れたことはない。

期間限定メニューの看板の前で立ち尽くしていると、
自分と同じぐらいの年齢の女性も『サブウェイ』を見上げていた。
そして『サブウェイ』に吸い込まれていった。

(自分も行かなくちゃ)
(明後日から2年目だもん)

カウンターへ向かった。
「この期間限定のやつで!」

ここから4つの試練が始まった。
[1]から[4]の各工程を進み、最終的にレジにたどり着くと言った感じだ。

[1] パンを選ぶ
店員:「大きさどうしますか?」

僕:「レ、レギュラーで。」
期間限定を選んでしまったことにより、サブウェイ初心者だとバレてしまったのではないか、、
一抹の不安を覚え、少々おどおどしてしまった。


店員:「パンは焼きますか?」

はいはい、これは知ってる!三四郎ann0で聞いたよ。
パンは"ちょい焼き"がいいんでしょ?
でも、、
"ちょい焼き"って言って、通じなかったら恥ずいなあ
僕:「はい。。焼いてください。お願いします。」
自信がなくなってきた。

[2] トッピングを選ぶ
店員: 「トッピングはどうなさいますか?」

多すぎる。。わからない。。
僕: 「そのままで。。」

[3] 野菜4種の量を選ぶ
店員: 「レタス、トマト、ピーマン、オニオンの量はどうなさいますか?」

僕: 「全部多めで。」
もう余裕がない。

店員さんが器用に手早く、野菜等を詰めているのをただただ眺めていた。

「出来上がりこちらでよろしいでしょうか?」

床屋でしか聞いたことがない言葉だ。
「はい。」

これ以外の返しがあるのだろうか。

[4]ドレッシングを選ぶ
店員「ドレッシングどれになさいますか?」

多すぎる。
記憶はない。何かを選んだ。

会計を済ませ、席につき、一口食べた。

美味すぎる

意識を取り戻し、先ほどの決断疲れを一気に吹き飛ばしてくれた。

ひと口、ふた口と食べ進んでいったところで、
「オリーブ、ピクルス、ホットペッパーも!」
そう聞こえた。

・・・そんなトッピングあったか?

よく見てみると、
記憶を失っていた"[4]ドレッシングを選ぶ"の工程の場所に

「オリーブ、ピクルス、ホットペッパーの
トッピング無料!」

の文字が。

人は余裕がなくなると、視野が本当に狭くなるのだと感じた。

でも、1周目だ。

『サブウェイ』2周目は、余裕ができて、視野も広がりオリーブもピクルスもホットペッパーも注文できる様になっているだろう。
恥ずかしがらず、"ちょい焼き"にも挑戦してみよう。
店員さんと「おすすめはなんですか?」なんて会話をして、トッピングを楽しむのもいい。
期間限定商品じゃなくて、BLTとか、定番のものを選んでみよう。
一旦出来上がりをみてから、「ちょっとトマト足してもらってもいいですか?」なんて言えたらかっこいいよなぁ。

4月になって、社会人2年目に突入した。
昨年の今頃と比べたら、見ている景色は明らかに違う。

まだまだ、わからないことは多いけれど、3年、4年と周を重ねていけば、全部わかる様になるのだろう。


先日床屋に行った。
1年間通い詰めた床屋だ。

この1年間、天気、花粉、コロナとオリンピックの話しかしていない。

その日も花粉の話で持ちきりだった。

「出来上がりこちらでよろしいでしょうか?」

「はい。」

早く2周目の会話がしたい。

なかじま

いいなと思ったら応援しよう!