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こどものお肌 湿疹・アトピー性皮膚炎について
はじめに
湿疹やアトピー性皮膚炎は小児科と皮膚科どちらに受診するのが良いのでしょうか?私の考える答えは、”どちらでも良い” です。処方される薬は、どの医療機関でも大きな違いはないと思います。大切なことは、ある程度の時間をかけて、しっかり診て、よく説明することだと思います。皮膚全体の状態をよくみること、スキンケアの方法、軟膏の塗り方、今後の計画などを具体的に説明することがとても重要です。そのため、特に初回の診察は、どうしてもある程度の時間が必要になると考えます。今回は普段の外来でお伝えしている内容を、簡単にまとめてみました。
ポイント
お風呂では、泡をたっぷり使って、手でやさしく洗い、最後に泡をよく流しましょう
軟膏、保湿剤は十分な量を塗りましょう。てかてか、ティッシュが皮膚に張りつくくらいが目安です。
湿疹を繰り返す場合には、お薬の塗り方・やめ方を相談しましょう
湿疹・アトピー性皮膚炎とは
湿疹とは皮膚の炎症で、体質的な要因や、外からの刺激など複数の要因によって発症します。アトピー性皮膚炎は、かゆみや湿疹を繰り返す病気で、1歳までの乳児では2か月以上、それ以外の年齢では6か月以上続く慢性の湿疹があり、病変部位や左右対称など、湿疹の特徴もふまえて診断します。つまり、湿疹の一部はアトピー性皮膚炎に含まれることもあって、基本的な治療も大きくは変わりありません。また、食物アレルギーは湿疹・アトピー性皮膚炎などで機能が低下した皮膚から食物の影響を受けることで発症すると言われており、乳児期の湿疹はあまり長引かせないことが大切です。
治療
薬物療法
ステロイドは炎症を改善させる薬で、湿疹がある部位に塗ります。症状の強さに応じて、薬の強さを選択します。治療で大切なことは、しっかりと量を塗ることです。目安は、皮膚がてかてかしてティッシュが張りつくくらいの量です。また、チューブの薬の場合は、人差し指の先端から第一関節まで薬を出すと、その人の手のひら2枚分塗れるとも言われています (1 FTU = finger tip unit, 約0.5g)。効果が出ない場合の原因としては塗る量が不足していることが多いです。
塗り方は、症状がある時のみ塗る「リアクティブ療法」と、症状が改善した後も徐々に間隔をあけながら薬を続ける「プロアクティブ療法」があり、症状を繰り返す人はプロアクティブ療法を選択します。
ステロイドの心配な点は副作用ですが、通常の量であれば全身に影響するような副作用の心配はなく、皮膚の局所にみられる副作用 (皮膚萎縮・毛細血管拡張・多毛など) のほとんどは薬の終了により元に戻ります。
また、ステロイド以外の炎症をとる薬である、モイゼルト軟膏 (ジファミラスト)、コレクチム軟膏 (デルゴシチニブ) は新しい薬ですが、乳児期からでも使用できます。ステロイドでみられるような副作用がなく、長期に安全に使用できることがメリットです。ステロイドの代わりとして使用したり、ステロイドや保湿剤を補うような形で使用することが多いです。当院でも、乳児期からアトピー性皮膚炎と診断したお子さんに処方しています。
スキンケア
皮膚のバリア機能を改善・維持するために重要です。
お風呂の際には、子ども用の低刺激の石鹸・ボディーソープを使用して、しっかりと泡を立てて、ガーゼやスポンジは使わずに人の手で洗います。汚れがたまりやすい皮膚のシワをのばして洗って、泡が残らないようによく流します。
お風呂から上がったら水をタオルで拭き取って、出来るだけ早めに保湿剤を塗ります。保湿剤もステロイドと同じで、皮膚がてかてかしてティッシュが1枚張りつくくらい塗ります。全身に保湿剤を塗った場合に必要な量は、6か月の赤ちゃんで1回4gくらい、1-2歳で1回7gくらいになります。
増悪因子の除去、環境の見直し
通常の治療を行っても改善が乏しい場合には、汗、食物、環境中のダニや細菌、花粉などの影響について検討し、必要あれば除去、環境の見直しを行います。しかし、食物が関与して悪化するアトピー性皮膚炎は全体のごく一部です。環境中のダニなどは、少ないにこしたことはないので、部屋や寝具の掃除・洗濯をこまめにしましょう。
まとめ
湿疹・アトピー性皮膚炎の治療は最初が肝心です。毎日、軟膏や保湿剤を塗ることは、実際には時間も必要で、中には軟膏を嫌がるお子さんもいますので、大変なことです。しかし、アトピー性皮膚炎は年齢とともに良くなることが多い病気で、逆に年齢が上がると治療も難しくなってきます。かぜは特効薬もなく治療の効果が実感しにくい病気ですが、湿疹・アトピー性皮膚炎は皮膚の様子やかゆみなど治療の効果が実感できる病気です。子どものお肌のことで気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
皮膚に関する診療も、診療時間内であればいつでも受け付けていますが、普段の診療では10時半〜12時、15時〜16時ごろが比較的空いている傾向がありますので、より受診しやすいと思います。
参考資料:
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024
小児科診療 2024年 第87巻 春増刊号
※note内では医療や健康に関する、個別のご相談・ご質問に対応することは出来ません。ご了承ください。