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私の作品が盗まれた!? ~Web小説作家の無断転載対策~ 第3章 無断転載対策 ~中村尚裕の考察~

 今回の無断転載は、実は起こるべくして起こったと思われるフシがあります。
 Web小説サイトのセキュリティが甘かったことも、もちろんあります。
 ですがそもそも画面に表示する性質のものである以上、複製対策がイタチごっこに陥ることは火を見るより明らかです。

 問題の無断転載サイト対策としては、いくつかの手法が提案されました。ただし、それも丹念に手をかければ抜かれてしまう点ではあります。
 また、問題の作品を検索から除外するよう申請する、というのも大切な手続きです。と申しますのも、この申請は著作権を主張する手続きの一環であるからです。
 ですがこれは作者本人が無断転載を一つ一つ申し立てなければならない上に、一つの検索エンジンから結果が除外されるだけのことに過ぎません。
 ではいざ無断転載されるまで、ただ怯えていることしかできないのか——といえば。
 必ずしもそうではありません。普段からできる無断転載対策があります。

 これは〝無断転載を根絶する〟というより、〝無断転載が起こっても、正当な著作者として振る舞えるようにする前準備〟と捉えていただいた方がよろしいでしょう。

 ここで考えておくべきは、以下のポイントと考えます。

 1.最初に発表した証拠を残す。
 2.著作権表示を明示する。
 3.状況証拠として、〝作者が著作者本人であること〟を示し続ける。

 以下、順に詳細を述べていきます。

 1.最初に発表した証拠を残す。

 具体的には、Web小説サイトの履歴を公に残すわけですね。
 ここで証拠とするのは、Web小説サイトの投稿タイム・スタンプ。〝同じ内容を誰より先に公開していれば、著作権を主張できる〟という目論見です。
 要は、〝Web小説サイトから作品は削除しない〟というわけです。削除してしまったなら、今度は無断転載作品の投稿日時を示すタイム・スタンプの方が古くなってしまいます。こうなると不利な要素が増えることになる——という、これは考えです。

 2.著作権表示を明示する。

 タイトルやあらすじ、本文末尾などに著作権表示を明示します。
 これによって、著作権を主張する意思が示されたことになります。無断転載の抑止になるかどうかというより、1.と合わせて、〝いざという時に権利を主張するためのもの〟と考えていただくのがいいでしょう。
 具体的には、以下の3点です。

 (1)著作権記号:©の記号ですが、これは機種依存文字ということもあって、慣習的に(C)で代用可能であるようです。
 (2)著作権者の氏名:これはペンネームでも構いません。誰が著作したかが特定できる、周知された名前であることが要件だとのことです。
 (3)最初の発行年:最初のヴァージョンが最初に発表された年を明記します。

 3.状況証拠として〝作者が著作者本人であること〟を示し続ける。

 これは、先の2.(3)最初の発行年 を裏付けるものでもありますが。
 要は、〝作者が誰よりも先駆けてその作品を発表した〟事実を残すのです。
 具体的には、活動報告やブログに「○○年△△月に、第□話を投稿します」といった文言を残しておくことになります。コメントを残してくれた方がいらっしゃれば、その方は一種の証人ということになりますね。うまくすれば、〝最初の発行年〟に誰より早く作品の投稿を始めたことも証言してもらえるかも知れません。

 これをもっと推し進めて考えてみましょう。
 Web小説サイトと並行して、作品を対面で配布する——というのが私のご提案です。

 具体的には。
 まずnote.muやBOOTHといった場での無償公開や配布(もちろん有償配布という選択肢もあります)、という手が考えられます。これは、言ってみれば作品の作者直販に近い形ですね。

 一部の公募小説賞の規約に引っかかる可能性はあるので要検討ですが。
 実は、これは旧来の出版業界が行き詰まる可能性を考え合わせての策でもあります。
 と申しますのも、出版社の事情で出版が凍結されてしまう事例も散見されておりますからで。
 場合によっては直販の方が自由が利き、なおかつ諸権利も作者側に保留できる——という寸法です。

 まあ、公募小説賞に応募する前提の作品に限らずとも。
 掌編、短編などを細かく広く無償配布するだけでも、作者の名前を広めるのには役立ちます。本命の作品の著作者であることを主張するためにも、〝作者としての自分を広く売り込んでおくこと〟に損はないはずなのです。

 なので、Web小説サイトだけに留まらず交流を拡げておくことも有用であろう——という、これは考察です。


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