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娼年からの爽年

 昨日久しぶりに夢を見ました。
この暑さが示す地球への恐怖が潜在意識の中にあるのでしょう。
激震とともに地面が割れて、あちこちから噴煙が上がっています。
キター!と思っても、段差に足をとられて動けません。
実際、私たちは背後に恐怖を抱えながらも、現実を生きています。
どうつなげていいのかわからない双極をもっているのではないでしょうか。 
そうして私は今日も現実の中にいます。

 図書館で、なにげなく借りてきた本です。
石田衣良先生といえば『池袋ウエストゲートパーク』の印象がとても強い私です。   この本を読み始めて、あれ?これは『娼年』?て思いました。
大分前ですがネットフリックスで『娼年』を見ました。
読みはじめてすぐに気づいて、原作者を調べたら石田衣良先生で以外に感じました。 そしてこの作品が恋愛小説とカテゴライズされていることにも驚きました。
とにかく『娼年』は衝撃的な映画でした。
松坂桃李さん演じるリョウが、大学生で20才の時に、バイト先のバーにあらわれた、会員制ボーイズクラブのオーナー御堂静香から誘われて、とまどいながら娼夫の仕事をはじめることから始まります。
『娼年』の最後で、Le  Club  Passionは、警察に摘発され御堂静香は逮捕されます。
1年後に静香の娘、咲良とリョウとアズマによって再開されてからの話が『逝年』です。  この『逝年』のなかでHIVだった御堂静香は逝去します。  その7年後が『爽年』に描かれています。
20才だったリョウも30に手が届こうとしています。

 リョウは、何年もの間、女性のなかに潜む様々な欲望に触れ、それをリョウ自身が、最高の形でかなえることに尽力してきました。
時には本人ですら気づいていない欲望を引出すこともあります。
それはもともと寡黙なリョウならではの、仕事のありかたです。
夫婦とか、恋人とかの関係性があると帰って言いづらい欲望も多い中、  時間で買われた娼夫だからこそ叶えられる欲望もあるのです。
その双方の間にギャラが発生するのだから、他人がとやかく言う筋合いのものでもありません。   ウインウインなら問題ないのです。
娼夫ってあまり表だって話題になる事はないのですが、そういう世界はあるんだと思います。  でも不思議な立ち位置です。
ホストみたいに、自分に惚れこませてお金使わせるのとは違います。
もっとストレートに性的なものなはずなのに、風俗とも違います。
料金の話はあまり出てこないのですが、クリスマスの1日を買ったら、中間管理職のボーナス位ってことは、付加価値もあって当然かなと思います。
契約した時間内であれば、どんな満足を求めてもつきあってくれる感じです。  ドラマでみた、デートクラブの高級版みたいな気がします。
興味深々になってしまいましたが、大枚叩いたところで、リョウ君みたいな繊細な人がくるとは限らないです。
たぶん私は快楽だけを切り離して解放できない、タイプだと思います。
いろんなクライアントとのケースが描かれています。
高い料金を払って買うのですから、特殊なケースも多いです。
概ねかなり年上のですが、40才を過ぎてバージンにコンプレックスを感じて、それを喪失するためだったり、拒食症のように瘦せていて、心も身体も開けない人だったり、70才を過ぎた美しい人だったりです。
よく男性には、起つ、起たないのフラッグがあるようですが、それは訓練でコントロールできるのでしょうか。
それともリョウがどんな人にも魅力を見いだすからでしょうか。
全体を通して、性的な描写が多いのに、生々しく感じないのは、松坂桃李さんの演じるリョウが、イメージ出来ているからかと思います。

 日本人は性についてコミュニケーションをしないから、結婚してある程度の年数が経つと、セックスレスの夫婦が多いそうです。
確かに、身も心も繋がっていたら理想的ですがそんな夫婦は、数少ないようです。  それどころじゃない問題も発生しますしね。  

 咲良とリョウは、妊娠を機に結婚します。
咲良もリョウも娼夫という仕事になんの疑問も抱きません。
二人とも、この世界しか知らないので・・・。
人生にはいろんな深みがありますね。
これは、リョウという繊細で寡黙な青年が娼夫という仕事を通して自己を解放していくファンタジーであり、松坂桃李さんが演じたからこそ実在したストーリーだと思います。


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