【短編小説】前夜

※この物語はフィクションです。




今までずっとほしかったものを買ってきた。
今夜は大好きな野菜スープを食べて、ずっとやりたいと思っていたゲームをやって、ずっと読みたかった本を読むつもりだ。夜が明けるまで。

今までの人生、散々だった。
学生時代はいじめられ、両親は自分をいじめから守ってくれるどころか、殴られた。
虐待は当たり前の家で育った。
友達は今まで一人もいなかった。みんな、すぐ離れていったから。
勉強は苦手だった。仕事も失敗ばかりで怒られてばかり。
夢もあったけど、どこかへ消えてしまった。
何もかもが上手くいかなかった。
でも今まで楽しいこともたくさんあった。
今はもう辛いことがすべてを覆い隠してしまったけど。

それも、もうすぐ終わる。
最期に最高に美しい景色を見て、そこから飛び立とうと思う。
天使になって、大空へ羽ばたこうと思う。
だから今夜は、最期の晩餐。
最期の前夜。
夜明けまで、したかったことをたくさんしよう。
だって最期の夜なのだから。
そして明日で世界とお別れだ。さよなら、世界。

せめて最期の時は、幸せで、楽しい一時を。














※この物語はフィクションです。

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