もう二度と見たくない映画「関心領域」
前置きとして、私は決してこの映画を批判したいわけではない。
批判どころか素晴らしいと思った。
これはアカデミー音響賞で文句なしというほどに感銘を受けたのだ。
そこまでの映画を何故「もう二度と見たくない」と強い言葉で表現するのかと言うと、
劇場で見て数日間は恐怖で眠れなくなってしまい、
今でも時々思い出してしまうからだ。
私はこの世で怖いものは幽霊でも化け物でもなく人だと思っている。
この関心領域は人の負の感情である恐怖や憎悪といったものが凝縮されているのだ。
ネタバレなしに簡単に内容を述べると、
アウシュビッツ収容所の隣で暮らしていた一家の暮らしを2時間ほど見ることになる。
たったそれだけ?と思う方もいることだろう。
ただこの関心領域は題材が題材であり、音響賞獲った。
そこがキモであることから当方が語れるのはここまでとなる。
深く知りたくばやはり本編を見ていただきたい。
(ちなみに第二次世界大戦におけるドイツ史を知らない方は、軽くその歴史に触れてから映画を見るのをおすすめする)
私はといえば、
いつものように劇場に足を運び、いつものように鑑賞した。
が、この映画はいつものようにとはならなかった。
序盤から私は恐怖し、中盤を迎える頃には帰りたくなっていた。
そしてとうとうエンドロールを最後まで見終えることができなかった。
某国民的名探偵アニメの映画や某マーベル作品のように、エンドロールの終わりに何かしら映像を流す場合があるので、劇場の明かりがつくまでは席を立たないようにしている私でも、エンドロールの途中で退避してしまったのである。
だが、私はその先に何かがあったとしても、その場を一刻も早く去りたかった。
その先があったとて、もう何かを見たいと思えないほどに恐れ慄いていたのだ。
さて、もう二度と見たくない理由は先述の通りだが、映画に限らず作品は一度でも人の目に触れた時点で成功ではないだろうか。
この映画は一度見ただけで恐怖を植え付ける。
即ち人類の恐ろしい所業を多くの人に再認識させ、二度と同じ過ちを起こさないようにという啓発としては十分過ぎるのではないかと考える。
アカデミー賞というのはなにも美しく綺麗なものだけが賞賛されるのではない。
映画「関心領域」は賞を獲るに相応しい、人々を恐怖させ、平和への関心へ導く良い映画だと思った。
機会があれば是非ご覧いただきたい。
可能であれば最高の音響で臨むのがおすすめだ。