
社内AI推進初期に直面するリアルな課題と学びを、挑戦中のBizOps視点で共有します!
こんにちは!nakamuと申します。
普段は株式会社SmartHRの事業推進本部でBizOpsをしております。
タイトルの通りなんですが、事業会社のBizOpsとしてAI推進に奔走するなかで、ぜひ皆さんにシェアしてBizOpsというキャリアを盛り上げたいと熱く思い、アドベントカレンダーに参加しました! 🙏
BizOpsとしてAI推進初期に直面する課題や必要な環境整備、実際のハードルを現在進行系でシェアすることで、少しでも誰かの為になればとても嬉しいです!
なお、この記事は BizOpsアドベントカレンダー2024 8日目の記事です
前回は のてきよみ さんの『ひとりBizOpsは仲間を作りたい』でした 👏
想定読者イメージ
BizOpsに携わっていて、AI大事そうと感じているけれど、AIの開発ってどんな感じかはよく分かっていない
自分自身ではChatGPTなどを使ったことがある
社内のAI活用といえば、個人利用や社内版ChatGPTが運用されている程度
このような方の参考になればと思って書くので、細かい説明は端折ります!
また、LLMというとややこしくなるのでここではAIと表現します、ご了承ください 🙇♂️
このnoteを書こうと思った背景
僕は新卒で営業になりまして、数年経験したあと今の会社に転職しインサイドセールスになりました。その後ISOpsを経て24年からはBizOpsとして活動しています。
24年7月ごろから社内AI活用のチャンスがありまして、AI全く分からなかったんですけど、なんとか徐々に理解しつつPython勉強しつつやっております。
元々「仕事を仕組み化して組織の総合力を上げる」みたいなところに強く関心があり、オペレーション設計や技術による仕組み化・構造化に没頭してきました。GPT-3以降、これぞまさに総合力UPのテコじゃないか!という感じでAIに無限の可能性を感じている人間です 🔥
SmartHRでのお話はつい先日noteに書きましたので、もしご興味あればご覧ください!なぜBizOpsがAI推進に適任だと考えているかなどにも触れています。
本noteではSmartHRがどうこうではなく、1事業会社にいるBizOpsという視点で、「AI全然分からない」から実践を経て「AIちょっと分かる」になってきた中で見えてきた、初期段階の課題や学びがあるのでシェアをしたいと思います。
BizOpsは少数チームが多いでしょうし、AI活用これからだよって会社もあると思います。先が見通せていると進め方も変わると思いますので、少しでもBizOpsの価値をあげられるような貢献ができればという次第です!
前提:AIは予想以上に簡単に使えてしかもめっちゃ安いって知ってほしい
1年前と比較して、なんかすごいスピードでAI活用なんて当たり前だぜみたいな空気になりましたね〜!皆さんは、AIに対してどんなイメージを持っていますか?
イーロン・マスクが人型のAIアンドロイドを発表したり、OpenAIが凄そうなモデルを出したり、GoogleもGeminiがなんたらかんたら、、、なんか、早すぎてよくわからん!情報多すぎ!ってなりますよね 😂
こんなニュースを色々見るなかで、AIって高級で高等技術が必要なものだと感じませんか?
僕はそういうイメージを持ってたんです 🤔
でも、僕らの周りのAIは実はそんなに難しくないし、めっちゃ安いものだということをまずは知っていただきたいです。
まず今世間を賑わす"AI"とは基本、OpenAIやGoogleの大規模言語モデル(GPT-4o, Geminiなど)のことを指しています。
そしてそれぞれの大規模言語モデルは、APIを提供しています。
多くのSaaSのAI機能/オプションは、裏側ではそのAPIを使っているのですが、僕らも申請をすれば同じようにこのAPIを使うことが出来ます。
つまり基本僕らBizOpsの周りで使われるAIはAPIベースでして、普段からツールのAPIを使っている方からすると、基本は全く一緒に扱えるのです。
URLに対して、必要な情報を持たせてHTTPリクエストするだけで、すぐに使うことが出来ます。
また、そのAPIの利用料は物や使い方にもよりますが、基本的には従量課金制で、めちゃくちゃ安いというのがポイントです!
例えば今人気であるOpenAIのGPT-4o-miniというモデルは、ざっくり言うと、AIに問いかけるときに1文字約0.04円、AIが出力するときに1文字約0.17円くらいです。
(参考:https://openai.com/ja-JP/api/pricing/)
僕らが会社で運用しているビジネスサイドのAI(↑に貼ったnoteで紹介しています)は現状、トータルコストで月額1万円もしません!
色んなSaaSやツールを使っていたら簡単に1,2名の利用料で掛かるコストで、大人数の利用コストを賄いきれる程度の低価格なのです!
もちろん注意点や壁も存在しますのでこのあと紹介するのですが、とにかく高尚なイメージを持っていたら、怖がらなくて全然大丈夫!ということがお伝えしたいのです。
事業会社でAI推進して得ている学びや感じる壁
それでは本題です。BizOpsがAIに取り組むのをオススメしたいと思うに至った背景となる学びや、待ち受ける壁があるので、それぞれシェアします!
その1:Bizのデータの流れと在り処が整理されていないと始まらない
AIは僕らのことを基本知りませんし、コンテキストとなる文脈がわかりませんから、データを与える必要があります。
与えるといってもいわゆる「学習させる」必要はありません。
よくAIに学習させるって聞きますが通常利用シーンではそこまでしなくて良いんです!👍
必要なのは、AIにプロンプトを投げかけるときに、参考情報を一緒に書いて渡すだけです。(いわゆるRAGと呼ばれるもの)
これによって、AIは知らないことでも参考情報を元に回答するようになります。
↓プロンプトのイメージ
以下の参考情報を基に、商品『SuperWidget 3000』の特徴をユーザーに簡潔に説明してください。
参考情報:
- 軽量で持ち運びに便利なデザイン
- 高解像度ディスプレイ
- 長時間バッテリー
- Bluetooth対応
- 出張や外出先での使用に最適
ユーザーの質問:この商品の特徴は何ですか?
今回は商品が固定なので参考情報も固定でいいんですが、商品に応じて参考情報も変わるように設計すればいいわけです。
これを業務に応用しようとすると、SFA/CRMに電話の録音データや商談録画などが蓄積されていたり、自社プロダクトの利用データがデータストレージに入っていたりすることが必要不可欠だと分かります。このとき、そもそも録音データや商談録画が無いとなると、一つ目の壁となってきます。
何から何までデータ化しないといけないわけではありません。あくまで、AIに参考に使ってほしい情報から少しずつ手を付けるのが良いと思います。
まずは電話を録音できるCTIツールの検討や、商談の録画をルール化するなどで一歩目を始めましょう!
このあたりは株式会社ネクサフローの中村さんがより深く解説されていましたので、ぜひ読んでみてください! 👏
その2:AIの真価は人の認知負荷軽減とナレッジ共有にあり
AIは業務効率化はもちろんですが、Bizにおいては、人の認知負荷を下げたりナレッジ共有することに最もインパクトを発揮すると感じています。
例えば営業組織で、2:6:2の法則で言う上位2割のナレッジをシェアしようとしたとき、今まではマニュアルづくりや、それに合わせたSFAデザインが効果的だったと思います。僕もそうしてきました。
しかし、AIを前提に考えると、ナレッジを参考情報(RAG)として使うことで、人間はマニュアルを読んだり覚える必要がなくなります。
目の前の商談に必要な情報だけを参照してサジェストしてくれる状態を作れます。
ただし、ここに壁があります!
ナレッジもAIが作れたら最高なのですが、正しい情報を正しくナレッジとする必要があり、それをAIにやらせるのはかなり応用的なので、参考情報となるナレッジは人力で作ったものを使う必要があるでしょう。
この、参考情報となるナレッジ作りが地道で大変なんです 😭
マニュアル作りって際限がないし、AI使うのにマニュアル作るの?!って思いますよね〜、分かります。
一歩目として、まずは現存する言語化されたナレッジを、少なくていいので使ってみて、現場が効果を感じてくれるところを目指すのがよさそうです。
そうするとナレッジ作りの仲間になってくれるメンバーが出てきて、少しずつ範囲を広げて体系化できる(ゆくゆくはそのプロセスをAIに、、!)と思っています。
僕もここは挑戦中なのでまた見えてきたらシェアしますね!
その3:SaaS時代のオペレーション基盤からAI時代のオペレーション基盤への転換が必要
BizOpsが司るツールはベースとなるCRMの周りにきっと数多くあるはずです。それぞれがAPI連携されていたりすると思います。そしてそれらは人間が画面操作をして、システム間連携されるような前提で作られています。
それはもちろん素晴らしいことなのですが、今後は人間よりも、いかにAIフレンドリーに設計するかという転換が求められると感じています。
AIエージェントと呼ばれる概念(これも詳細はネクサフロー中村さんのnoteを参照ください)がありますが、ざっくり言うとAIがAPIを使って各種システムを操作するということを指しています。すごい時代になってきてます 😂
ツールを選ぶときには、もう基本的にAPIが公開されていることはほぼ必須条件となっていくと思いますし、AIエージェントが実行できるような豊富な機能を持つものを選択する必要があると思います。
また、例えばSaaS自体にAI機能/オプションがあるケースが多くありますが、これは他のSaaSのデータを読み込むことが出来ない場合、あまりAIフレンドリーとは言えないと思います。
ここで壁が立ち塞がります。事業会社の立場からすると、ツールのリプレイスってめっちゃ大変で腰重いですよね 😭
AIフレンドリーになるのは良いけど、切り替えるのにはオペレーションを組み替えないといけないし、関連する開発物があったら、、、と思うと大変なことです。
いまのオペレーションはこのツールで問題なく回ってるしなぁという現状維持バイアスとの戦いがそこにはあるんです。ただ、これってオーナーシップを持てるのはBizOpsだと思うんです!大変ではあるんですが、AI時代の基盤作りが必要だと見通しておくことは大事だと思ってます。
その4:使おうという意識すら持たせない導線設計
皆さんって普段ChatGPTなどAIツールって使ってますでしょうか?また、皆さんの組織ではどうでしょうか?
必死に社内推進をしていて日々すごく感じることなのですが、能動的に動作させる必要があるAI(ChatGPTみたいにチャットがわかりやすい例)って、最初は良いんですがリリースから時間が経つと、6,7割くらいは使わなくなっていきます。
ちょっと気になって調べたら、日経新聞でもこんな調査がありました。体感に近いです。
企業向けのアンケートでは生成AIを業務で利用している割合は46.8%だった。米国(84.7%)、中国(84.4%)、ドイツ(72.7%)に比べて低い。
便利なことは分かっていても、今までそれが無くて生きてきたし、わざわざなにか文字を入力して使うのはちょっと面倒だなとか、ちょっと期待と違った回答があってそれから離れてしまったりという感じのようです 😭
これも、推進しようとすると出てくる壁のひとつです。
研修や啓蒙でこれを打破する試みは一歩目として有効そうです!
社内用GPTsを作る研修プログラムを作ったり、まずAIってどんなものなのかを社内でまず知ってもらって、身近に感じてもらうようなアプローチを僕もしていく予定です。
あとは、僕はAIはオペレーションの導線に自然に溶け込ませるのが効果的だと思っていまして、使うものではなく勝手に寄り添うものとしてデザインすると良いと考えているんです。
ここはBizOpsの腕の見せどころなんじゃないかと思っています。BizOpsって、それぞれ独立したシステムをうまいこと繋ぎ合わせてUIをデザインして、自然なオペレーションを設計することが得意な人たちなので、オススメしたいなぁと感じました!
さいごに
これから労働人口が減っていき採用も難しくなるなかで、少ない人数で大きな成果を上げるレバーとして、AIは間違いなく効果的です。
AIエンジニアが社内にいて、かつBizサイドの活用に開発リソースを割いてくれるならそれが最高ですが、なかなかそんな状況はないと思います。
また、今回話したようなAPI利用だけではなく、販売されているAIツールを導入する選択肢もありますね!注意したいのは、上記のような課題は内製でも外部ツールでも発生する可能性があるということです!
自社の環境に合わせた初期の推進方法や導入方法があると思いますが、いずれにせよ、BizサイドにおいてAIをチャットbotに留まらせず、ひとつの労働力へと変えるキーはBizOpsにあると思っています。
僕も本当に駆け出しで恥ずかしい気持ちもあるのですが、どこかのAIチャレンジャーのBizOpsの役に立てばいいなと思い、来年は公開可能な範囲でこまめにアウトプットしていきますので、一緒に頑張りましょう 🔥
もし僕で役に立てることがあればお気軽にご連絡いただければ幸いです!https://twitter.com/nakamu_033