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頼むからトマトアドベンチャーをやらないでくれ
「トマトアドベンチャー」というゲームをご存じだろうか。
知らないならば、この先を読まずにどうかそのまま知らずにいてほしい。
お願いします。
今はなきアルファドリームがGBAで出したこのゲームは、続編も出ず、知名度こそないものの、現在でも根強いファンを多く抱え、ゲーム評価サイトなどで極めて高い評価を受けている名作ゲームである。
「ケチャップをひたすら垂らし続けるCM」のゲームと言えばわかる人も多いかもしれない。
モッタイナイモッタイナイ‥‥‥
あ、間違えました。こっちです。
(※「トマトアドベンチャー」がいまひとつメジャーにならなかったのはこの尖りすぎたCMが良くなかったのではという説もある)
今回、みなさんに伝えたいのはこの「トマトアドベンチャー」というゲームを絶対にプレイしないでほしいということだ。
はっきり言ってこのゲームは非常な名作だ。
かわいらしくもシニカルな世界観、斬新な戦闘システム、テンポのいい会話とギャグ、耳に残るサウンド、全体的に独自の魅力が確立されていて、はまる人には非常にはまるモノとなっている。
ここで培われたノウハウが、のちにアルファドリームの開発した「マリオ&ルイージRPG」シリーズに受け継がれていると言えばその斬新さ、世界観の魅力が伝わるだろうか。伝われ。
では何故、私はここまでの名作を「プレイするな」と言っているのか。
それは一言でいえば、
私の優位性が崩れるから
に他ならない。
よく面白いものに対して「〇〇を知らないのは人生半分損してる」などというが、そこまではいかずとも「トマトアドベンチャー」を知らないのは人生2分5厘は損していると私は感じる。もう少し多いかも。わからない。
私はこれまで多くの場面で「トマトアドベンチャー」に支えられてきた。辛いとき、苦しいとき、「トマトアドベンチャー」が無かったらどうなっていたか分からない。
とりわけ、「トマトアドベンチャー」が効果を発揮するのは人と自分を比べ、劣等感を覚える時だ。
多くの人がそうであろうが、私も自分より優れた人や、自分より結果を残している人、突き詰めていえば自分よりも“勝者”だと感じた人にコンプレックスを抱くことがある。
また、そうでなくとも、乗車マナーの悪い人や、道にポイ捨てをする人間を見たときには喉にベタベタと何かが絡まったような嫌な感覚を覚える。
そんな時、役立つのが「トマトアドベンチャー」だ。
例えば、テストで私よりいい成績をおさめた人間がいるとする。
だが、そいつは「トマトアドベンチャー」をプレイしていない。楽しんでいない。
そうなると「トマトアドベンチャー」という観点から見れば優位性は明らかに私にある。
そうして、ささやかながら溜飲を下げることが出来るのだ。
だって、テストと「トマトアドベンチャー」で一勝一敗、トントン、いや、もしかしたら「トマトアドベンチャー」の方が優位性が高いかもしれない。テストは生涯に何回もあるわけだし。
態度の悪い人間を見てしまった時も同様だ。
彼らは「トマトアドベンチャー」をプレイしていないかわいそうな人間だ。
かわいそうな人間の「トマトアドベンチャー」で道徳を育めなかったために起こした行ないを責めても仕方がない。
そうして私はまた、溜飲を下げる。
つまり何が言いたいのかというと、私から「トマトアドベンチャー」という優位性を奪わないでほしい、ということだ。
ただでさえ優秀なみなさんが「トマトアドベンチャー」をプレイしてしまってはもう私はどうしようもない。お手上げだ。白旗。
鬼に金棒、獅子に鰭、虎に翼とはまさにこのことで、「トマトアドベンチャー」をプレイされては、いよいよ私の立つ瀬がなくなってしまう。
私の唯一といってもいい拠り所が無くなってしまう。
あとはもう肩の関節をずらせることのみを誇りとして一生を過ごすしかなくなってしまう。
だから、みなさん。
決して「トマトアドベンチャー」をプレイしないでください。
もしプレイしても、黙っておいてください。
切に、切にお願いします。