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花組全国ツアー『哀しみのコルドバ』についての勢い余った感想文
花組全国ツアー『哀しみのコルドバ』@神奈川県民ホール。
これまで再演を何度か観てきたけれど、今回はひときわ繊細で美しく感じてしまったのはこれ如何に?
おそらく、山下公園から見える景色があまりに気持ち良くて私の心の感度が上がっていたせいもあるだろうけれど、なんといってもこの名作を今の時代に即してさらに深く咀嚼して見せてくれた演者の皆さんの作り込みの賜物なのかなと思います。
主演の二人はもちろん周りの人たち一人ひとりの演技が深く感じるものがとても多くて、時節柄数カ所しか回れないのが残念すぎ。48都道府県全てツアーして全国の人に観て欲しいよ〜という気分の中でこれ書いてます。
まず、柚香さんのエリオが登場シーンから完璧すぎでまさにグラン・エリオ。一挙一動に目が釘付け。やはりこの役は踊れる人がやるとその魅力がいっそう際立つんですね。
エバという役は大人の女性な部分と少女のような純粋さを併せ持っていないといけなくて、観るたびに難しい役だなと思うのですが、これまた今の星風まどかちゃんにぴったりでした。
イケオジっぷりに期待のロメロひとこちゃん(永久輝)、最初は正直印象が薄いかなと思ったけれど、決闘が中止になった以降が真骨頂。幕切れは、彼だけがエリオの本当の思いを知っているという表情で全て持っていきましたね。
柚香さんとひとこちゃんって、どちらも精緻にストイックに役をつくっていくタイプだと思うのだけど、「硬」の柚香さんに対して「柔」のひとこちゃんと持ち味は対照的。そんな二人がぶつかり合うお芝居が俄然楽しみになりました。
で、今回は前哨戦のビセントをめぐる物語が迫真に迫っていて、観客としてはまずここでエネルギーを消耗してしまう感じ。ビセント(聖乃 )vs司法長官(一之瀬 )、100期対決バチバチ!! それで、前半の盛り上がりの山が高いほど、後半の山がもっと高くなるんですよね、この作品は。
音くり寿ちゃんのアンフェリータがこれまでと一味違う役作りで新鮮。 スペインの大地に根を張って生きている血の通った女性。そして、純真なようでいて実はエリオ以上に恋の危うさをわかっている女性でした。同じくフェリーぺも、これまでの白軍服の王子様的なイメージから脱却した、冷静で理知的な面を押し出した役作りが優波くんらしくて良かったです。
今回のバージョン、残された人々のその後が見える。…それで、何となくなのですが、女性たちはこの後幸せになる気がするんですよね。エバはリカルドと、アンフェリータはフェリーペと。
柴田作品ならではの奥深い台詞と寺田先生の美しいメロディーが心に染み入るひととき。闘牛士と軍人、貴族と庶民、立場や職業による生き様の違いも、今回の再演での新たな発見でした。
ちなみにワタシ的優勝はアントンの親父さん(和海)、準優勝は司法長官です。二人のお芝居が、この作品をめっちゃ底上げしてたと思います。
まどかちゃんが加わった花組の新しい座組みがこれからどんな舞台を見せてくれるか、いっそう楽しみになった今日の観劇でした。
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