クラゲを食べる生き物は珍しい?!~「衝撃!ペンギンはクラゲを食べていた 国立極地研が世界初の発見映像を公開」【投げ銭note】(J-CASTニュース)~
1.はじめに
海をフワフワ漂い、泳いでいるクラゲ。この夏に海水浴に行かれた方には、海でクラゲを見かけた方、多かったのではないでしょうか?
水族館に見に行ってクラゲに癒されたり、食用のクラゲを買ってサラダに入れて食べたり、海水浴では毒のある種類に刺されて病院に運ばれたりと、人間とクラゲは昔から長い縁があるようです。特に、食べ方に関しては、種類が限られるものの、独特の歯ごたえがあって、食材として親しまれてきた(*1)地域があるようです。
このクラゲですが、自然界で捕食する側は非常に限られている。そのように、今までは考えられておりました。しかし、この度、どうやらペンギンもクラゲを捕まえて、食べていたことが分かったニュースをキャッチしました。
タイトルを読んで、食用クラゲの存在を知っていた私は「なぜ、自然界ではクラゲを食べる動物は珍しいのだろうか?」と、首をかしげてしまいました。毒があるものの、栄養価の高そうなクラゲもいますが、命の危険までさらして、クラゲを捕食する動物はいないということなのでしょうか?
そこで、今回はペンギンがクラゲを食べた事実が、どうして衝撃的なのか?J-CASTニュースを読みながら、考えてみようと思います。
(イメージ画像:クラゲを捕食することが確認されたコガタペンギン)
*1:「くらげ普及協会」によると、食用クラゲは6種類あるそうです(参考:http://www.kurage-fukyukyokai.net/JPA003.htm )。確かに、レシピサイト「クックパッド」で「クラゲ」で検索すると、「生クラゲの中華和え」や「くらげときゅうりのサラダ」など、1000を超えるレシピがヒットしました(参考: https://cookpad.com/search/%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%92)
2.「衝撃!ペンギンはクラゲを食べていた 国立極地研が世界初の発見映像を公開」(J-CASTニュース)から分かること
2-1.今回の調査概要
最初に、オンラインニュースの冒頭を読んで、今回の調査のいきさつと方法を確認しましょう。
"衝撃!ペンギンはクラゲを食べていた 国立極地研が世界初の発見映像を公開
2017/9/24 08:00
海を軽快に泳ぎ回って魚を追いかけるペンギンが、栄養がほとんどないクラゲを食べていることが国立極地研究所などの研究チームによって世界で初めて明らかにされた。この発見は、ペンギンの背中に備えつけた小型カメラの映像でわかった。
同研究所は研究成果を2017年9月22日、米生態学会学術誌「Frontiers in Ecology and the Environment」に発表すると同時に、衝撃の動画( http://www.nipr.ac.jp/info/notice/20170922.html )をウェブサイトに公開した。
(「衝撃!ペンギンはクラゲを食べていた 国立極地研が世界初の発見映像を公開」(J-CASTニュース))”
なるほど、「なぜ、自然界ではクラゲを食べる動物は珍しいのだろうか?」の謎は、オンラインニュースの「栄養がほとんどないクラゲ」の一言で、解決しました。栄養が魚や他の獲物に比べて、ほとんどないクラゲと考えれば、わざわざ、クラゲを捕食する必要はないわけです。特に、哺乳類と同じく、常に体温を一定に保つ必要のある鳥類のペンギンにとっては、なおさら、クラゲを食べるのは、コストパフォーマンスが悪いのかもしれません。
そう考えれば、納得はいきます。しかし、今回のニュースでは、クラゲを食べるペンギンの姿が「国立極地研究所などの研究チームによって世界で初めて明らかにされ」ました。それは、どのような様子だったのでしょうか?
ペンギンによるクラゲ捕食、および調査方法は、ニュースの画像にまとめられていました。引用させて頂きます:
ニュースの説明では、別の個体のペンギンに設置されたカメラが、もう一匹のペンギンがクラゲを嘴で捕食していた場面を撮影していた模様です。
2-2.どのくらいクラゲには栄養価がないのか?
ニュースの続きでは、自然界ではどのくらいクラゲに栄養価がなく、捕食する側の解説がされたあと、今回の発見で、ペンギンがクラゲを襲って食べた酔推測がなされています。
”■栄養がほとんどないクラゲをなぜ食べるのか?
同研究所の発表資料によると、近年、世界各地の海でクラゲが大量に出現する現象が報告されている。しかし、クラゲの体はほとんどゼラチン状の水分でできているため栄養価が低く、大型の海洋生物のエサにはなりにくいと考えられてきた。そこで、クラゲが生態系の食物連鎖で占める位置の研究が、南極の昭和基地を含む南半球の7か所で、日本や豪州など5か国の共同チームによって進められてきた。
(「衝撃!ペンギンはクラゲを食べていた 国立極地研が世界初の発見映像を公開」(J-CASTニュース))”
からだのほとんどがゼラチン状態で、おまけに水分で構成されていたら、確かに栄養価は低いですね。そう考えれば、「大型の海洋生物のエサにはなりにくいと考えられて」いたわけですが、それを確かめるためにか、今回、「クラゲが生態系の食物連鎖で占める位置の研究が、南極の昭和基地を含む南半球の7か所で、日本や豪州など5か国の共同チームによって進められてきた」ようです。
ニュースに戻りましょう。
” 特にペンギンのような大型海洋動物がクラゲを食べているかどうかは、クラゲの体が壊れやすいため、ペンギンが吐き戻したエサを調べる方法では不可能だ。今回、最新の小型ビデオカメラをペンギンの背中に取り付け、映像を解析する手法をとった。4種のペンギンの合計106羽にカメラを取り付け、数日後に回収した。
その結果、延べ350時間の水中映像を再生したところ、オキアミや魚など以外に、クラゲを捕食しているシーンが198回も観察された。しかも、他のエサがいる時でも頻繁にクラゲを捕食していた。これまでマンボウやオサガメがクラゲを食べていることが知られていたが、のんびり回遊し、少ないエネルギーで生活できる特殊な動物の例と考えられてきた。冷たい南極海で体温を保持するために消費エネルギーの大きいペンギンが、クラゲを常食していることに研究チームは衝撃を受けたという。
(「衝撃!ペンギンはクラゲを食べていた 国立極地研が世界初の発見映像を公開」(J-CASTニュース))”
ペンギンの嘴は強く、「吐き戻したエサを調べる方法」を持ち、クラゲのからだがゼラチン質であるので、ペンギンがクラゲを食べるのは困難だと考えられていました。しかし、今回の小型カメラ設置による調査では、「延べ350時間の水中映像を再生したところ、オキアミや魚など以外に、クラゲを捕食しているシーンが198回も観察され」ました。
なお、既存のクラゲを捕食する側の海洋生物は、マンボウやオサガメで、これらの生物は回遊することで「少ないエネルギーで生活できる特殊な動物の例」として、研究者の間では扱われてきたようです。だから、恒温動物であり、「冷たい南極海で体温を保持するために消費エネルギーの大きいペンギンが、クラゲを常食していることに研究チームは衝撃を受けた」というストーリーが今回の調査にはありました。
2-3.研究グループの考える「ペンギンがクラゲを食べる理由」
衝撃を受けたものの、研究に携わる国立極地研究所など調査側は、ペンギンがクラゲを常食にする理由を次のように考えています。
” 研究チームは、発表資料の中でこうコメントしている。
”「栄養価が低いクラゲをなぜペンギンが食べるのか、その理由ははっきりとしません。ただ、クラゲの生殖器官や内臓は比較的栄養価が高いので、ペンギンが栄養価の高い部位を狙っている可能性があります。今後、栄養素や化学組成についての研究を進め、クラゲなどのゼラチン質動物が生態系の中で果たす役割についての正しい理解を深めることが必要です」”
(「衝撃!ペンギンはクラゲを食べていた 国立極地研が世界初の発見映像を公開」(J-CASTニュース))”
あくまで、「クラゲの生殖器官や内臓は比較的栄養価が高いので、ペンギンが栄養価の高い部位を狙っている可能性」を注視して、研究グループは「クラゲなどのゼラチン質動物が生態系の中で果たす役割について」の理解を正しく深めようとしている、と。将来的には、「栄養素や化学組成についての研究を進め」、どのようなクラゲの部位をペンギンが食べて栄養を得ているか、という捕食側の消化器官とも関わってくる研究テーマの論文が発表されるかもしれません。
この研究観点から人間の食生活を考えてみましょう。例えば、貧血気味だったり、転んで擦り傷を作ったりして、健康のために鉄分やビタミンを欲する状況に、私がいたとしましょう。私の体調を知った周囲の人たちは、実際の私の経験上、焼き肉でレバーを焼いて食べるようにすすめたり、柑橘類の果物を持ってきて栄養を摂取するように言ったり、してきたことがあります。
私の邪推ですが、ひょっとしたら、ペンギンのなかには、体調面から無意識のうちに、ある特定の栄養を欲してクラゲを食べている固体もいるのかもしれません。
3.最後に
以上、栄養価の低いゼラチン状のクラゲを、消費エネルギーの多い生活を送るペンギンが食べていたことが発見されて、衝撃だった!というニュースを取り上げて、コメント致しました。
私は本論に当たる第2項、2-3において、体調の状態によって、ペンギンは特定の栄養を求めてクラゲを捕食することもあるのではないか?と述べました。その他、ペンギンがクラゲを食べる理由は、何が考えられるでしょうか?
自分なりに少し考えてみたことは、嘴でクラゲをつかんだ時の触感(食感)を覚え、それを「おいしい」とか、「面白い」とか、心地よい方向に感じてしまった個体もいる、ということです。人間が料理したクラゲの食感を楽しむように、ペンギンのなかにも、ひょっとしたら、プヨプヨした生きているクラゲをくわえたときの感覚に、ハマってしまうペンギンもいるのでは?という考えです。
もし、そのような嘴での触覚や食感を楽しむタイプのペンギンがいたとしたら、栄養的な補食の観点から見た食物連鎖とはまた違った、クラゲの生態系における位置が見えてきませんか?私は面白いと思います。
何はもとあれ、ペンギンがクラゲを食べる理由が、解明されることを楽しみにしております。
おしまい。
*本記事は、投げ銭制を採用させて頂いております。もし、お読みいただいて得るものがあったとか、少しでも暇つぶしになったとか、ありましたら、寄付をして頂けたら、執筆者の励みとなります。
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