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心をかき乱すもの
ある大学の写真同好会で一緒だったふたり。
優しい写真を撮る人は、もう一人の写真家の息子に、技法を真似されたと言う。写真家の息子は、優しい写真を撮る人に影響されカメラマンを目指したと言う。優しい写真を撮る人は、大手出版社の最終面接で6時間だかの制限で自由に撮ってこいという課題の元、サカキバラ事件で心を病んでいた真っ最中に、出版社に戻る寸でのところで家族写真が撮れて合格した。写真家の息子は、新宿ゴールデン街でパトロンを探し、バグダッドへと旅立った。
バクダッドと銘打つその写真集は、その大手出版社の新人賞レースで次点であったという。優しい写真を撮る人は、ファッション誌でモデルや物撮りをし、いまやユーチューバーを撮りさらに自分もユーチューバーとして活躍しながらも、神社仏閣の写真も収めている。
ヒリヒリする感覚、価値観があっちこっちにいってしまう動揺、何が正しいのか、何はなんという名前なのか、久しく考えていなかった。そんなことを切り取られた優しくきれいで落ち着いていて台風の目にいるような、ひとつの写真から思いは放たれた。わたしにとって、決して楽しかっただけじゃないあの頃のことと繋がってしまう。喉の奥がつーんとする。全てを観たら、どうにかなってしまうんじゃないか。全てを観ることはないのに。
館山祥さん、只今個展を開催中です。明日13日まで。https://www.instagram.com/sho_tateyama/?hl=ja