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70年代ベストアルバムランキング5位~1位



5位 Gil scott-heron&brian jackson/it's your world

「黒いボブ・ディラン」とか言う変な異名を付けられたギル・スコット-ヘロン。もともと詩人としてポエトリーリーディングなんかをしていたそうだが、フライング・ダッチマンから録音デビューすると徐々に音楽との融合を果たしていく。
音楽的盟友、ブライアン・ジャクソンとの双頭リーダー名義で数作発表したうちの1枚。LPでは2枚組でA面がスタジオ録音、その他はライヴ。スタジオでの3曲は引き締まったジャズ・ファンク。統率された音が実にクール。解き放たれたライヴ録音では2人のパーカス奏者を擁し、ラテン・テイストも強い。
白眉は⑦と⑨。どちらも長尺だが緊張感と疾走感溢れる名演である。両曲ともカヴァーも多い。この2曲の間に挟まる⑧はギルの喋り。アメリカ建国200周年当時の情勢を皮肉を交えて語っていくのだが、当時の状況も英語も詳しくわからない人にとっては、演奏も一切ない9分弱の喋りはなかなかに退屈なものがある。
しかしながらこれを乗り越えると名曲⑨が聴けるので一種の苦行と思えばいいのかも。ラテン・ジャム的な展開も含める素晴らしい曲。詩人らしくアルコール依存症を通してアメリカの現実、闇を描写する。後年本人が薬物依存症に苦しむことを思えば何とも皮肉である。
その後はブライアン・ジャクソンと袂を分かちて活動していく。そこでの数作も素晴らしいが、やはり音楽的にはブライアン・ジャクソンの存在は大きかったようで、二人の才能がぶつかり合った燃え盛るような本作と、ストラタ・イーストからの冷たい「ウィンター・イン・アメリカ」は歴史に残る名盤である。

4位 Grant green/live at lighthouse

いくらLA時代とは言えブルー・ノートを名乗って欲しくないほどのダサいジャケのせいで針を落とすことをためらう1枚。何故禿げたオッサン(グリーン本人)の顔をマトリョーシカみたいに並べて良しとしてしまったのか。しかも裏返しても開いても出てくるグリーンの顔。同じジャズ・ギタリストではジョー・パスがキャロル・ケイとジャズ・ファンクに挑んだ名盤「ベター・デイズ」というアルバムも禿げたオッサン(こちらも本人)のイラスト・ジャケであった・・・。
しかしながらご安心なされよ。内容は猛烈な爆走ジャズ・ファンクである。メロウはスタイリスティックの③のみ。後は鬼神の如く高速でギターを弾き倒す。走り出したら止まらない。レムコ・エヴェネプールの如し。勢い余って崖下に転落もやむなし。
グラント・グリーンと言えばシンプルなワン・ノート、ワン・フレーズを繰り返すことで知られるが正にその極北。執拗なまでに同一フレーズを繰り返す。ミス・トーンなんて知らん。全曲10分超えの長尺高カロリーでの80分弱。聞き終わった後の疲労感は半端ではない。
ドナルド・バードの④、ファビュラス・カウンツ(のちにカウンツへ改名)の⑥等カヴァーもやるがそれがどうこう言うこともない。俺は俺の道を行くだけさ。ワウトがエース?そんなこと知るか状態で走るナショナルチームのレムコ、いやライトハウスのグリーン。
ファンク時代のグリーンのスタジオ盤はレアグル、サンプリングネタとしても重宝されているが、本作の荒々しい演奏はそんな奴らを寄せ付けないどころか、近寄ってくる輩を大声で怒鳴り散らし、裸足で逃げ出させる暴君である。本作は1972年録音。1970年のライヴ「アライヴ!」はドラムがアイドリス・ムハマッドでもう少しミドル・テンポ。そちらのほうがネタ使いしやすいかも。なお2006年には1971年のモザンビーク(店の名前)でのライブも発掘されており、3枚とも素晴らしい。

3位 Jimmy smith/root down

JB'sがファンク開眼なら、自分のジャズ、ジャズ・ファンク開眼の1枚はこちら。
ブルー・ノート時代の「チャンプ」やベイビー・グランドでのライヴのような音が溢れだし迸るようなプレイは少ない。その分バンドとしてのグルーヴを重視し、一丸となって突き進む。
①⑥のようなアップ、②⑤のようなポップも実にグルーヴィ。⑤はもちろんアル・グリーンのカヴァー。そして表題曲④。チャック・Dの「bass! how low can you go?」への答えに差し出したくなるド低音のベース・リフにドラムのフィルが被さり、オーディエンスのハンド・クラップ、ワウ・ギター、そしてパーカスが入る。ポール・ハンフリーのドラム。ウェルトン・フェルダーのベース。まさに漆黒のグルーヴ。
のちにビースティ・ボーイズが同名曲にて大々的にサンプリングしたが、オリジナルを聴いてしまうと威勢よく入ってくる3人の「アキキルーダウン」ですらやかましいと感じるほどの完成度。どこまでもディープになりそうな③のブルースにおいても横揺れもグルーヴが心地よい。
オリジナルの①④⑦では曲前のMCや曲中でオミットされている箇所があり、現行流通しているCDや配信はカットなしのヴァージョン。
我が家には本作が複数枚あるのだが、最初に入手したものは1998年発売の国内盤CD。オビには「世界初CD化」とある。ライナーノーツはおそらく完全にジャズ畑のライターであろう。ビースティの件の曲が1995年だがライナーではそのことはおろか、ヒップ・ホップやレア・グルーヴサイドからの評価についての言及も一切ない。ジャズ界のレジェンドの彼の作品、それこそブルー・ノートでの諸作が繰り返しリイシューされているのに、98年にようやく初CD化、それでいてこのライナーという所からしても、ジャズ・ファンからの本作の評価は推して知るべしであろう。

2位 Parliament/chocolate city

パーラ、ファンカとも混沌としていた初期から徐々に音も活動も整理されてきた時期。
後の「ドクター・ファンクケンシュタインvsサー・ノーズ・ディボイドファンク」(カタカナ表記をどうしたらいいのかよくわからん)の壮大なファンク・サーガはまだ始まっていないとはいえ、クリントンの喋りと「gamin on ya!」の掛け声?でスタート。前半はいよいよ本格参加のブーツィのベースがウニョウニョとうねりをあげ、ワサワサとしたコーラスが歌うと言うこれぞP-ファンクついに完成という激烈ファンク。最高。
B面頭の⑥はバーニーのピアノやシンセをバックにエディ・ヘイゼル(?)が朗々と歌いあげるP-ファンク流オペラとでも言おうか。どこまで本気でやっているのかわからないが。テレビ番組のテーマ曲っぽい楽しげな⑦も小品ながら良い。
ブーツィとバーニーが音楽的なイニシアティヴをとり、いよいよP-ファンク黄金時代の幕開けを高らかに告げるアルバム。この後は言わずもがなの名盤連発で最高っす。

1位 James brown/the payback

JBである。
それ以上の言葉が必要であろうか。シングルメインでの活動で、アルバムは適当なのものが多いのでどうしてもライヴか編集盤を選んでしまう中、これにしてみた。
ジワジワと焼き付く①③、疾走する④⑥、ミドルで絡みつく⑦⑧。アルバム全体を得も言われぬ緊張感が貫く。まさに⑥でJBに「今!今!」(空耳)とドヤされ、せかされる音の塊である。
ジェームス・ブラウンとP-ファンクについてここで多くを語る必要はない。ひたすらにクロく、ひたすらに熱い。これこそが生きる証。これこそがファンク。

総評

JBとP-ファンクが1,2フィニッシュと言うなんとも面白みに欠ける結果に落ち着きました。
今度はオールタイムでベストアルバムランキングをやりたいと思いつつ、本ランキングに入った作品がそちらにもかなり入ってしまいそうな感じ。自分の嗜好が60年代末〜70代初めのブラック・ミュージックに偏っている事を改めて実感。

ご覧いただきましてありがとうございました。


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