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Brother ahh(robert northern)/ sound awareness (1973年)
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スピリチュアル・ジャズってなによ
スピリチュアル商法って怖いですね。一回騙されてしまうと抜け出せなくてしょーもない壺とか絵とかを何百万も出して買わされちゃうなんて。周りから見たら絶対おかしいのに、騙されてる本人にはそれがわからない。
そのせいで人生を狂わされるという事件が日本でも起こった。
スピリチュアル・ジャズもある意味そういうものかもしれない。
だってわけわかんないもの。アウトオブキー、アウトオブリズム。チューニングすら適当。あまつさえ、やれ神に感謝、とか心の平安を求め、とか言い出すんだから。これはやべぇ。
スピリチュアル・ジャズの始祖はジョン・コルトレーンと言われている。
コルトレーンの良さって本当に理解できている人はいるのだろうか…特に黄金のカルテット崩壊以降の後期コルトレーンって、意味分かんなくないですか?「あーなんかすごいことやってんなー」とか「なんかわかんないけどなんか崇高だなー」みたいな感じじゃないですか?私もよくわかりません。
もっとも「スピリチュアル・ジャズ」って言葉自体は後のクラブ世代によって使われ始めたと言われる。リアルタイムでは「フリー・ジャズ」ひと括りにされていたみたいだが。
3大スピリチュアル・ジャズ・レーベル
スピリチュアル・ジャズ3大レーベルという物がある。多分ほとんど人のがそんなこと言ってないし、そんなこと知られてないけど。
トライブ
ブラック・ジャズ
ストラタ・イースト
名前を聞いただけで近寄りたくないと思うレーベルてはない。3大スピリチュアル・ジャズ・レーベルだ。
トライブとブラック・ジャズはまだいい。ファンク寄りだったりソウル寄りで以外と聴きやすいから。レア・グルーヴとしても人気だし。
ストラタ・イースト
問題はストラタ・イースト。とにかくよくわからん作品が多い。普通に聴くと「え、なにこれ、フザケてるでしょ?」って言いたくなるような作品もある。ギル・スコット・ヘロンとかウェルドン・アーヴィンみたいなわかりやすいのもあるよ。なまじそういうのがあるから余計にたちが悪いかも。
チャールズ・トレヴァーとスタンリー・カウエルのよってニューヨークで設立。デトロイトに「ストラタ」というレーベルもあり分かりにくいが、繋がりのあるレーベルらしい。
リーダーに全面的なプロデュース権限を与える事で、自身の望む音楽を創造できるという環境を作るのがレーベルカラー。
ブラザー・アーさんの本作
ジャケ右下にはちっちゃく「Max roach」の名前が。もっと大きく表記すればもう少し売れたかもしれないのに。
スペシャルサンクスにはサン・ラの名前も。サン・ラ・アーケストラとかコルトレーンの作品にも参加しておったようです、ブラザー・アーさんは。
各面1曲ずつの収録だが、サブタイ付きの組曲風使用。
A面はアンビエントというか環境音というか。
何だか怪しげなフルートとチェロからひっそりと始まる。風の音のようなものは自然音?
3分半ぐらいから掛け声とパーカスが一瞬大きくなってちょっとビビる。その後女性コーラスが入ってくる。
その後もリヴァーブのかかった打楽器の音とコーラス。10分過ぎぐらいからはパーカスの音が増え、コーラスなのかホーンなのか判別不能の音がホラー映画の音楽みたいで怖い。
15分過ぎにやや落ち着きを取り戻したのか正気に戻ったのかホーンとコーラス、そしてパーカス。19分からは曲が変わったと思えるようなはっきりしたメロディのあるフルートの音色でフィニッシュ。
ひたすら自身の内なる精神世界へ潜っていく22分間のインナー・トリップ。
内ジャケの解説を読むとやはり瞑想云々の記載が。
「東大寺のお水取り」という毎年2月に行われる儀式がキングのワールド・ミュージック・シリーズでかつてCD化されていたけどそれに通じるものがある静謐で神聖な雰囲気。
B面はマックス・ローチと彼のパーカッション・プロジェクトであるM'boom percussion ensembleが参加。
笛の独奏でスタート。クレジットには「african3 hole flute」とある。これもどこか日本のお祭りで聴ける横笛のような音色。
その後はチューバやパーカス、鳥の鳴き声のような音も。
そのうちマックス・ローチが喋りだしバンドがレスポンス。ローチの「say loud! loud!」に徐々に熱を帯びるコー・レス。ドラム、シンバルも大きくなってくる。
13分頃からはメロディを歌うコーラスも聴こえてくる。ローチはずっと喋る。15分過ぎるとローチの喋りが終わりM'boom percussion ensembleが締める。もう少し盛り上げて終わってもよかったような16分間。
まとめ
一応「フリー・ジャズ」の括りにはされているけど、フリーキーにアウトするホーンとかは全くない。
前述の通りどこか宗教的な厳かな雰囲気を漂わせる。東洋宗教的音楽が好きならかなりオススメできる。そんなのが好きな人がどれくらいいるのかわからないが…
スピリチュアル・ジャズは結構こういう東洋思想をいい意味で誤解、誤って解釈した作品があって、個人的には好き。ファラオ・サンダースの「japan」とか、いかにも外国人が日本の仏教を勘違いした牧歌的サウンドが素晴らしいと思う。
なぜか私、20代の頃東洋の宗教的音楽にハマっていた。我ながら謎過ぎる。
スピリチュアル・ジャズの中でも異端で、通常の音楽を聴いている人が聴くにはかなりの忍耐力が求められるかもしれない。
手元に置いておけばいつかは理解できる日が来る…とか気安く言えるものでもない。
まあ配信でも聴けるので、最初は変に構えず、BGM的に流してみるのが良いのでは。
もちろん私はこのアルバム大好きです。