『ニトリ石狩花火大会』
幼馴染みの美帆ちゃんは、お金持ちの家のお嬢ちゃんだから、悩み事なんかひとつもなくて、子どもなのにスラっとしていて、ママと一緒にエステに行って、お肌の手入れなんかもしていたから、とっても美人だったけど、あまり賢くはなくて、天真爛漫というか、いつだって無邪気だった。
あの日わたしたちは、ニトリモールのダイソーで盛りだくさんの花火セットと、青色と緑色の縄跳びを買った。
それなのに近くの河原にも途中の広場にも寄らないで、少し離れた美帆ちゃんの家に行った。
美帆ちゃんのパパがオーナーのマンションの最上階が美帆ちゃんちだった。
牡蠣や帆立がゴロゴロ入った、とびきり美味しいカレーライスをごちそうになってから、わたしたちはリビングの窓を開けてバルコニーに出た。
最上階のバルコニーはものすごく広かった。
わたしたちは花火をして、縄跳びをして、花火をして、縄跳びをして、花火をして縄跳びをしているうちに、花火をしたまま縄跳びをしてみた。
そうしたら火縄銃みたいになって、わたしは左手に、美帆ちゃんは右手に一生消えない痕が残るほどのやけどをした。
わたしは痛みがひいたあともバルコニーでしばらく泣いていたけれど、美帆ちゃんは氷水に手を浸しながらずっと笑っていた。
ようやく泣き止んだわたしを手招く美帆ちゃんを無視して眺めていた風景の中の、少し離れた国道沿いのニトリのあおみどりのネオンサインが、鮮やかでとても綺麗だった。
先日、ニトリ石狩花火大会で久しぶりに美帆ちゃんに再会した。
やけどの痕がくっきりと残っている右手をあげて、ニトリ色の浴衣を死人合わせで着こなして微笑む美帆ちゃんは、相変わらず美人で、相変わらず賢くなくて、相変わらず無邪気だった。