苦手な音
ピピッという、体温計の電源を入れた時の音が苦手だ。
誰かの体調が悪くなったときの音。
その音が聞こえると、何をおいてもその音の方向に振り向き、誰が熱を測っているのか確認してしまう。
胸がざわざわする。
測り終わったあと
「何度だった?」
と聞かずにはいられない。
体温を聞くまで落ち着かない。
夫と距離をおくようにしてから、夫が体温を測っていても、気にしないようにした。けれど
「ありゃ」
というつぶやきで、ああ、ちょっと微熱だな。
「うん」
と納得したような安堵の頷きで、ああ、下がったな、とわかる。
体温を聞くまでもなく、わかるのだった。
ありゃ、のときは葛根湯を出す。
たいていの微熱はこれで治る。
今、夫とは、これくらいの距離感。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?