タクシーのダイナミックプライシング
タクシーのダイナミックプライシングについて以下の記事を見て、気になったのでメモ。
タクシー運賃に「ダイナミックプライシング」導入へ 国交省
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230424/amp/k10014046911000.html
以下のところ、意味わからないと思うので裏の事情も含めて言及します。「例えば、日中の需要の少ない時間帯には運賃を下げる一方、雨の日や週末の夜など、需要が高まると予想される場合、運賃を上げることができます。通常の運賃と比べて、5割引きから5割増しの範囲で変動させることが可能となりますが、タクシー事業者はこの仕組みを導入することで運賃収入が増えないように料金を設定することが求められます。」
交通経済は産業組織論の一分野で私も海運の分野で論文も書きまして、ちょっと知っているので、裏事情も含めて解説します。
交通経済、元々は電力みたいな自然独占を想定してますよね。移動手段が鉄道しかなかった時のような状況を想定してください。なので、電力と一緒で総括原価が元々ベースです。
ただし、今はプライスキャップ価格低下のインセンティブをつけるのが自然です。JRはプライスキャップを採用してます。私鉄と東電はいまだに総括原価。なので、30年前ものすごく高かったJR、今では私鉄と逆転しているところも多いですよね。ただ、当然質と価格のトレードオフがあり、プライスキャップの方が質は落ちます。なので東電の方が安全のクオリティ高いはずなんですが、見た目の安全は維持してて大事なところはしてないから、ほんと総括原価方式ってどうよって思っちゃいます。
ただ、それ以前に交通の場合、自然独占かどうかという根本的な問題がありますね。というのも、マイカーのように競合手段がたくさんあるので、違うって言った方が正しい場合が多いでしょう。そりゃあ、みんなマイカー使うやろとか、JRと京急全然競合するやんって感じです。
そういう事情で独占でないのに総括原価になっているっていうことで、正直根拠薄いんですが、タクシーも総括原価使ってるわけです。なかでも、タクシーの場合、完全競争やんけ、ってことで更に規制の意味がないように見えます。ただ、それでも規制しないといけない事情が2つあります。
1つは、競争なので自由化していいはずなんですが、ITあまり使えてなかったときにNYCで自由化したら、まさに独占的競争の弊害で、競合のタクシーはたくさんあるのに値段は自由に決められて高い値段つけたので、高いタクシーの空きタクシーが長蛇の列になったそうです。まさに過少供給になる独占的競争の長期均衡の教科書通りの話。なので、NYCなんかでは規制しようって話になったって御大に聞きました。それが一つの割とまともそうな理由です。
でもじゃあIT化してて、価格情報も行き渡ったら独占的競争じゃなくて、普通に競争やんって話になりますね。でも日本は特にかたくなに総括原価守ってUber 入れず、Taxi Goでさえ、駅には止められない。これは官僚の抵抗なんかもあるんですが、以下の事情だと思います。というのは、そもそも単純労働って、参入が簡単ですよね(棒。しかも道全然知らないタクシーの運転手とか、近距離だと無茶苦茶態度が悪くなる運転手とかでも操業出来ているので、参入が容易です。そうするとどこかで規制しないとどんどん参入して、しかも質だけ悪くなるって話になるので、規制しているっていうのが本音のところではないかと思います。
Uber やTaxi Goで情報開示すればクオリティもわかるので、当然クオリティもよくなりますが、それでも誰でもできるというのは変わらないんじゃないですかね。そうするとどこかで参入規制しないと最低限の賃金が維持できないという問題があると思います。ただ、そうすると参入規制の建前上、交通機関としての公共性とかを前面に出さざるを得ず、総括原価で利益出しちゃいけないみたいな話になるのかと。まあ、経済学者的にはそれでも競争促進しろって言いたくなるので、交通系の先生でそう仰せの先生は批判しないですが、この単純労働の過剰参入の阻止って、本当に難しいので(なので港湾労働なんかも暴力でなんとかするしかなくて...以下察し)、どうでしょうか?
なお、この記事この実証実験の結果を受けた記事だと思います。
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk1_000027.html
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