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傑作

ジャケットの絵のアイデアが浮かばないまま眠くなってしまったので、夜もまだまだ浅いけど少し横になる。
完成をエンジニアの友人と喜びあったばかりの音源をiPhoneから小さく流しながら部屋を暗くする。
枕元で音楽を聴きながら寝るなんて何年ぶりだろうか。
うつらうつら、曲が次第に断片的になっていく。
なんかいい曲だなぁ、いい声だ。感動的なコーラスだなぁ。音がブロックのように宙を舞い、大小カタチを変えながら目の前を踊って過ぎていく。ある時は黒く、ある時は光沢が白く光を反射している。なかなかいいメロディだなぁ。
ウトウトと自分が眠っていることに気がつき始め、いい曲だなぁと思っていたものが自分達の作品であることに気がつく。
こんないいものを自分の作品だって謳うことができるんだ。そんな思いが頭に浮かび、その曲を作っていた頃の自分を思い出す。
そんな前のことでもないけど、遠い昔のようだ。疲れて帰ってきた夜、それでもギターを構えて、浮かぶかどうかもわからないメロディーを必死に探していた。ほんとにこれでいいのかな、70点だな、そう思いながら毎日少ししか取れない時間の中で、1ヶ月経っても曲に納得できないもどかしさがあった。1ヶ月もやってこれか。自分に自信がなくなり、打ちひしがれながら日曜のカフェの一番奥の席で不意にイメージがよぎる。ノートにペンを走らせて、これだ、と思う。
あの時からアレンジもだいぶ変わっている。
ウトウトしながら自分の曲を聴いて、いい曲じゃんって思えて嬉しい。もう聴き慣れた音源のはずなのに、磨かれた天然水のようにキラキラ輝いて誇らしい。
夢のほとりで、夢のような気持ちを味わって、結局寝れなくなってしまった夜。
死にたくなったらこの気持ちを思い出して、なんとか生き延びたい。

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