
私と共犯者になってほしい。
※注意※
・この投稿は、iitoco!!アドベントカレンダー2024への投稿記事です。
・動物の骨や狩猟にまつわる画像が登場します、ご注意ください。
・死生観に触れた文章がメインです、元気な時に読んでね。
今年、辰年で歳女でした。
でも、厄年でもあったんですよね。
なので、厄落としも兼ねて元旦一発おみくじをひいたんですよ。
実はここまで2年連続で大吉をひいていて、3年連続って、そんな、いや、そんな、

大吉や!!!!!!!!!!!!
3年連続や!!!!!!!!!!
厄落としは元旦で済んだな!!!!と、こういう時だけポジティブな私。
縁起が良すぎて妙な自信がついたんですよね。
これは今年、何があってもハッピーで終わるぞと。
人間ってこういうの大切だと思うんです。
それを踏まえての今年の成果なんですが、これはもう、
美術館での骨の展示。これに尽きる!!!!!!!
2020年のアドベントカレンダーで、この年に埋めた骨たちを美術館に展示したいという内容があったのですが、まさに有言実行できました。感謝感激です。
展示に付随したイベントとして、トークセッションもさせてもらいました。
会場にお越しくださった皆様からたくさんのご質問を頂けたこと、めちゃくちゃ嬉しかったです。

トークではちょっとセンシティブな写真も映しました。
骨、だけでなく、骨になる前の姿…土中に埋める直前の雌鹿の写真です。
これは、生前の面影を知った上で、一緒に骨がマテリアルになるまでの工程を見てもらいたかったからです。

共犯者になって欲しかった、というと聞き感触が悪く全てが本心ではないですが、
生きている時の面影を残した写真から、骨になる過程を一緒に辿ることで、
私が感じた安心や安堵のようなものを、追体験して欲しかったんです。
例えるなら、火葬する前に顔を見て、火葬された後に喉仏の説明を聞いて何かがストンと落ちたように安堵するあの気持ち。

トークではたしか言及しなかったと思うのですが、骨をマテリアルとして扱い始めたり、狩猟を活動の一環として行なった上で、今年一番肌を通して感じ、かつ、結論が出たことがあります。
生きているものが、いちばん怖い。
ってこと。
当たり前かな?
いや、案外、確信を持って言えないんじゃないかなと、思う。
人は必ずどこかで喪失の恐怖を知り、その最たる、命の喪失…
死の恐怖を覚えて成長するから。これは死と生のカルマだ。
表現の世界では、その恐怖が強く骨というモチーフで表されてきたと思う。
だから、死…骨は怖い。と、きっと私たちには無意識に刷り込まれていると思う。

でも、私は狩猟を始めて何が一番怖かったって、生きているものたちが怖かった。
そして、私という生きているものが、失われることが恐怖だった。
マダニにも刺され、ハチに怯え、毛皮に群がるハエに鳥肌をたて、
森から聞こえたクマの声にもビビり散らしました。
なんなら嘔吐恐怖症があるので、今でもジビエには苦手意識があるし、
猟場を巡って喧嘩を始める人間たちが何よりも恐ろしかった。
でも、全部全部、安堵に変わる瞬間が、ありました。

それが、生きているものが死んでいるものに変わる時。
(死。
どうしようもなく消えていく。)
この言葉、獲物を仕留める時に通り過ぎていくんです。
「どうしようもなく消えていく。」
そして、安堵が訪れる。

その時に生きているものが、一番怖いんだって強く確信するんです。
骨は、本当は怖くないんです。
だから、私はあの写真を起点に、その安堵感を共犯者として感じて欲しかった。
それはすごく、無意識の何かに触れて、その人の世界に干渉できる気がするから。
いやぁ〜、怖いですねぇ〜。

正直、少し狩猟を続けることにネガティブになり、長らく罠をかけなかったタイミングもありました。理由は複合的ですけどね。
でも、来年に向けてすごくポジティブになれる転機もあって、その声かけはこのiitoco!!アドベントカレンダーを主催する江原さんからのヘルプコールでした。
「みんなで育てている田んぼに鹿の痕跡があるから、見に来て欲しい。」
「できたら、罠をかけて欲しい。」
すごく切羽詰まった様子だったので、なんとか助けになりたい…
でも、すごく迷いました。
罠をかけること、それは当たり前だけど、最終的には動物を殺すことだから。
自分のために罠をかけるのとは、大きく違う。
誰かの願いで殺すことは、すなわち明確な共犯者を作ることになるんです。
もちろん、江原さんはわかってる。でも、今は目の前に迫っている生きているものたちの恐怖で盲目になっていることもあるかもしれない。
覚悟はあっても、その後に訪れる安堵が、後悔に変わるタイミングがあるかもしれない。
だから、罠をかけるのは本当に最後の手段、ということをお伝えして、
田んぼの現場検証へ向かいました。

具体的には以下のような内容を確認しています。
足跡から本当に鹿かどうかを同定する。
侵入経路の特定を行い、再訪の危険があるかどうかを確認。
糞の有無や量、乾燥具合、その他のフィールドサインを確認。
最後に、既存の鹿よけなどに損傷がないかを確認。
これらを総合して、鹿がその場所を通り道にしただけか、餌場にしようとしているのかを推測しました。
今回の場合、鹿は間違いなく来ているが、餌場にしようと積極的に向かってきているようには感じなかったので、簡易の鹿よけをつけて、違和感で鹿を遠ざけるという手段で様子を見る、というのが江原さんと導き出した結論でした。

この出来事がポジティブである理由は、結果、私が罠をかけることも、鹿が米や作物を食べて甚大な被害を出すこともなかったからです。
つまり、ラッキーだったしみんなハッピーになったってこと…!
不思議でした、普段は獲物を殺すために足跡や痕跡を、慎重に慎重に調査していくのに、同じ知識と経験を使って、命を殺さない可能性を探っていくんです。
その後も、別の畑の主からヘルプコールを受けて、同じように命を殺さない可能性を探りました。そうやって私なりに田畑を守るための手段をお渡しした後に、二人からもらった言葉が、今の私にとって大きな救いです。もう一言です。
「安心した!」
本当に安心した顔で、どちらも同じようにその言葉をくれました。
なんとなくその言葉で確信したのは、やっぱり誰も、本当は自分のために命を殺したいとは思っていなくて、ただ、安心したかったんだ、ということ。
そして、私の知識と経験は、
死の安堵だけじゃなくて、生の安堵も生み出せるということ。

誰も、本当の共犯者には、ならなくていい。
でも、私の表現を介して、共犯者なってほしい。
展示は今月の23日まで開催しております。
ぜひ、骨に会いに来てください。
「この世界のむこう:パラレル・ワールド」
会期
2024年10月19日(土)〜12月23日(月)
休館日
毎週火曜日
入館料
一般:500円、高校生以下無料
主催
小海町高原美術館
※作品は、今年小海町で行われたアーティストインレジデンスの成果展示として、最終展示室に展示しております。
※展示の詳細は上記リンクより公式ページをご覧ください。