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中井秀明 文芸評論 https://nakaii.hatenablog.com/

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最近の記事

中井秀明「変な気持」

文芸評論「変な気持」のPDFファイルを販売します。 初出は群像2004年6月号、分量は2万字(400字詰め原稿用紙換算50枚)です。 標題の「変な気持」とは、1932年に32歳で亡くなった小説家梶井基次郎の言葉です。彼は生前発表した20篇の作品中3度この言葉を使っています。拙論はこの4つの文字の、作中での振る舞いの違いに着目し、そこから「心境小説」という日本文学の、あるいは日本語の根源的条件に迫るものです。 冒頭部と結末部を下に掲げます。 <冒頭部> <結末部>

¥500
    • 「村上春樹が好きだ」を取り戻す(過去形の現在化)

      ※「村上春樹が好きだった(過去形)」の続きです。 学生時代は巣鴨に住んでいた。そのころ地蔵通りと大塚駅前を結ぶ折戸通りの真ん中あたりに、なぜか新刊書が安く買える古書店があって、よく利用していたのだが、ある日、発売後まもない『ダンス・ダンス・ダンス』がその店の棚に差さっているのを見つけたのである。 喜び勇んでレジに持って行く。 部屋に帰る。 読み始める。 ――あれっ? すぐにそう思った。 面白くない―― 水道の蛇口をひねったら出てくる無色透明の液体みたいな文章だ

      • 村上春樹が好きだった(過去形)

        定点観測のつもりで読み返す本がある。村上春樹、1973年のピンボール、初めて買った純文学の本。「見知らぬ土地の話を聞くのが病的に好きだった」――この出だしの文を読むと今でも、北海道帯広市にかつてあった商業施設、サニーデパートのワンフロアを占めていた田村書店の、「む」の棚からこの本を抜き出し、頁をぱらっと捲ったときに覚えた不思議な緊張感が、ぞわぞわするほどの鮮やかさで蘇ってくる。 中二だった。校内暴力の全盛期。人口十四万の地方都市にも「ツッパリ」はいた。アーケード街の歩行者天

        • 下読みをやめた

          純文学系の小説新人賞の下読みをしていた。していた、というのは、もうやめたからである。毎年お声がけいただき、いつも引き受けていたが、おととし、少し考えて、断ることにした。深い理由はない。ただ、その何年も前から、もう「文芸誌」はいいかな、という気持ちになっていた。 某誌を毎月送ってもらっていた頃は、根が真面目なので、あわせてほかの文芸誌にもひととおり目を通したりもしていたのだが、いつしか送られて来なくなり、ここ数年は、どれも手に取ることすらしなくなっている。率直にいって関心が失

          ¥200

        中井秀明「変な気持」