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遙かなるマウイ島
マウイ島が好きだ。それもとても深く。
ちょっと前まで、どこそこ?と言われていたが、
あの例の大火事で有名になったハワイの中にある一つの島である。
ハワイと聞くと、行ったことがない多くの人は、まずはホノルルを連想する。そしてそこのみが、ハワイのすべてだと思っているふしがある。
しかし、村上春樹が好きなカウワイ等や、火山があるハワイ島や、前述したマウイ島と。実は多彩な島の集まりである。意外に奥が深い。
そして、当初はワイキキビーチで満足しているが、次第に離島に行きたくなる(沖縄と同じ)。
そして、私はカウワイ島以外の島にはすべて行ったが、その中でマウイ島がとても好きになった。
実際行ってみると他の島とは、明らかに空気が違う。自然のパワーを感じるハワイ島とも、全体的に観光地的なオアフとも全然違う。
ひとことで言うと、優しいのだ。空気も、風も、空も、山(ハレアカラ)も海も、五感に入ってくるすべてが優しい。そんな気がする。
地図で見ると、まるでおばあちゃんがお辞儀をしていると表されるが、まさに、その姿そのものように、どこかのんびりしていて、同時に開放感がある。
たぶん、他の人は違う感覚を持つかもしれないけれど、ハワイ好きな友人も、マウイ島がハワイの良さが一番よく出ていると言っていた。
自分は、いつも晴れている、カパルア、カアナパリ、ワイレアが好きだが、雨が多い北側のカフルイや、ハナも行ってみると、どこか東南アジア的でほっとする。そういった二面性もあるし、原始の生活をそのまま送るハワイの住民の村も散財している。
外国に行って、住みたいとまで思うことはあまりないが、このマウイ島だけは唯一住んでみたいと思った場所だった。こんなところで、ずっと小説を書けたら幸せだろうにと思ってしまう。真剣にコンドミニアムを探したこともある。
どうして、マウイ?理由はわからない。ただ、とにかく空気が合う。そんな理屈を超えたことしか答えられない。
きっと、自分にとってマウイ島のように、誰しもそういう場所というのは、この世のどこかにあるのだろう。あまりハワイと関係ないが司馬遼太郎は、モンゴルの遊牧民族に混じって暮らそうと本気に思っていたらしい。が、私の場合は、このマウイ島だった。
そして、最後に行った後にコロナがあって、突然のあの大火事のニュース。
驚いたとともに、画像であの焼け跡を見て、まるで自分の故郷が焼けてしまったような喪失感を持った。そんな思いを抱いたのも、外国では初めてだった。
あの、バニヤンツリー、揺れる葉の茂み、冷ややかな陰。それが一夜の内に失われたと思うだけで、ずいぶんと哀しくなった。
あの火事は自然災害とも、何かの陰謀のせいとも、いろいろな噂が飛び交っていたが、そんなことはどうでもいい。もうあのラハイナの風景は蘇らないのだ。
と、書いている内に、急になぜか無性にハワイに行きたくなった。円安終わらないかな。再訪して失われたラハイナのために、何かできたらと思う。
“ どの風も やさしさ感じて マウイ島 ”
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