数珠をつけ、十字架を下げ、コーランを手にして。
午後に吹いた風は強く、時の流れを早めたのに、気がつく者は少なかった。
手紙の文字は薄れ、日付さえ曖昧に微笑んだ。
ブルース・スプリングスティーンになりたかったのに、なれたのは彼の歌詞のような男。
今夜、俺は島国の閉ざされた家にいる。
汗の出る仕事を終え、缶ビールとゲームを手に、彼方の戦争の終結を祈ってる。
前線で籠る兵士にも容赦なく雨は降りつけ、彼らの体温は奪われていった。
胸にしまわれた写真の表情も変わって見えた。
ブルース・スプリングスティーンになりたかったのに、なれたのは彼の歌詞のような男。
今夜、俺は新天地へ向かう船の底にいる。
数珠をつけ、十字架をさげ、コーランを手にして。
数珠をつけ、十字架をさげ、コーランを手にして。
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