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アンチサンドバッギング条項【M&A日記】

アンチサンドバッギング条項と言われる、M&Aの譲渡契約書にて論点となりやすい内容がある。

まずはサンドバッギングの意味から。

サンドバッギング(Sandbagging) は、「自分の能力や状況を意図的に低く見せる行為」のこと。
ビジネスや交渉の場面では、自分の立場や成果を控えめに見せ、相手を油断させたり、より有利な条件を引き出す戦略として使われる。

昨今流行っているポーカーで使われるポーカーフェイスのような意味。
自分の手は強いのに、弱く見せて相手を勝負の場に引き出して勝つ、みたいなこと。

サンドバッグのようにボコボコにするというイメージを持たれたかもしれないが、由来としては例えば靴下の中に砂を入れて振り回せば武器になるように、単なる砂で油断すると意外と強力な武器になる、ということらしい。

ともかく、相手の裏をかこうとする意図があるため、サンドバッギングは不誠実とも見なされやすい。

ではこれがM&Aでどう使われる恐れがあるか。

デューデリジェンスなどで買収側が譲渡対象企業のことを調べた結果として瑕疵が見つかったとする。
これを売主に通知せず、そのような瑕疵が無いことを表明保証事項として譲渡契約に盛り込む。
買収後、瑕疵が発覚したとして表明保証違反を主張し、賠償請求をする。
これがM&Aで起こりうるサンドバッギングだ。

これに対して、アンチサンドバッギング条項がある。
譲渡前に知り得たことを持ってして、その責任追及をすることができない、とする内容。

読んで頂いた限り、必要な条文と感じられると思うが、必ずしも契約書に盛り込めるというものでもない。

契約書の内容は、最終的には両者のパワーバランスによって変わってくる。
買主がどうしても買いたくて、売主からして別にあなたじゃなくても良いんですよ、という関係性なら契約書は売主に優位になりやすいし、逆に買主が別に買わなくてもいいんですよ、というぐらいだと、買い手に多少優位な内容にしないとまとまらない可能性が高い。

昨今ルシアン事件などで、悪意のある買い手が取り沙汰されてしまっているが、実際には誠実な買い手の方が圧倒的に多い。
DDで瑕疵が発見されても、それを持ってして条件交渉ができるので、多くの場合ではそれを共有してもらえる。

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