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M&A巧者、ニデック(旧日本電産)について
経営者として著名な永守氏が創業者であるニデック(旧日本電産)は、これまでに60件超の買収をしていると言われている。
M&A巧者と言われ、M&Aを巧みに活用してグループの成長発展に繋げている。
1990年代以降数千億円の時価総額から、近年は少し落ち着いているが、2021年のピーク時には7兆円を超えるところまで成長。
売上は右肩上がりで、2023年度の決算では約2.2兆円、1990年の454億円から実に約48倍もの規模になっていて、M&Aによる影響が少なくないと考えられる。
以下にニデックがM&Aをうまく活用できている理由をまとめる。
1. 明確な戦略と長期的ビジョン
ニデックは、創業者であり現会長の永守重信氏のリーダーシップの下、「世界一の総合モーターメーカー」という明確なビジョンを掲げている。
M&Aは、単なる規模拡大ではなく、事業ポートフォリオの多角化や技術力の強化など、明確な目的に基づいて行われている。
2. 選定基準の徹底
買収対象企業を選ぶ際、モーター関連事業や成長性のある分野に焦点を絞っていること。
特に、買収先がニデックの技術力や市場ポジションを強化するかどうかを慎重に見極めている。
3. PMI(買収後の統合)の徹底
ニデックの強みは、買収後の「統合プロセス」(PMI:Post-Merger Integration)を徹底的に実施すること。
具体的には、永守氏が掲げる「スピード経営」と「効率化」の文化を買収先に浸透させ、収益力を早期に改善する能力が評価されている。
買収後の企業に対し、目標設定やコスト削減、業務改善を迅速に進めることが特徴。
4. 経営陣のリーダーシップ
永守氏自身が買収先に直接関与し、改革を主導するケースも多い。
このような積極的な関与が、買収先の従業員にとって明確な方向性となり、統合がスムーズに進む要因となっていると言われている。
5. グローバル展開
日本国内にとどまらず、海外市場でのM&Aも積極的に行い、グローバル市場でのプレゼンスを強化している。
これにより、世界中の優れた技術や人材を取り込み、競争力を高めている。
6. 失敗から学ぶ姿勢
すべてのM&Aが成功しているわけではなく、失敗例から学び、それを次の案件に活かす姿勢がある。
この経験の蓄積が、M&Aの精度を向上させていると考えられる。
実際の成果
ニデックは、M&Aを通じてモーター事業を中心に多岐にわたる分野で技術力を強化し、持続的な成長を実現している。
また、買収先企業の収益力を早期に改善させる能力は、同業他社との差別化要因となっている。
ニデックがM&Aをうまく活用できているのは、単に「買う」だけでなく、「買った後にどうするか」を徹底して考え抜き、実行する能力にある。
この一貫した戦略と実行力が、M&Aを巧みに活用し、グループの成長に繋げる鍵となっていると考える。