本当の株主は誰なのか?【M&A日記】
M&Aによって企業を買収するというのは、具体的には、既存の株主からその所有する株式を買い取ることを意味する。
至って当たり前のことではあるが、その際には、株式を正しく取得しないといけない。
正しく取得するというのは適法にということでもあるし、本当の株主から取得する、という意味も含まれる。
さて本当の株主とはどういうことか?
株は意外とややこしい。
元はといえば、株券という紙が主体。
株式の売買をするということは、株券自体の授受を意味していたので、これは一番分かりやすかった。
しかし、徐々に株券を発行しない会社が増えてくる。
多くの会社においては、株を譲渡する機会は殆どないので、会社設立時の出資者から変わることもないため、株券が発行されていない会社が多かった。
株券の発行は義務付けられていたが、そうしていない会社が増えた。
そして、2004年に商法が改正されて株券の不発行が認められると、2006年には会社法が施工され、株券は原則発行→原則不発行に変わった。
ということで、現代の会社は、株券発行会社であることが定款に記されていなければ、株券不発行の会社である。
では、株券を発行しない会社の株はどのように売買されるのか。
それは、契約書や議事録、全ての株式会社に発行が義務とされている株主名簿に、株が移動していることを記録することをもって株が売買されたということになる。
さて、ここでややこしい問題が出てくる。
株券発行が義務付けられていた時代に株券を発行していない会社が多かったように、株主名簿の作成が義務付けられているのに、株主名簿を作成していない会社が実はとても多い。
そして、贈与・相続等によって株式が書類上は移転していても、例えば株券自体が移転されていなかったり、株主名簿が書き換えられていないというケースがあり、そうなると誰が真の株主か分からない、ということがあるのだ。
買収企業からすれば、いくら適法な手順において株式取得を実行しても、相手が正しい株主でなかったとすればそれは何の意味もなさないことになる。
なので、過去の株式の移動変遷などを確認した上で、正しい株主から株式を買い取ることがマストだ。
移動が多すぎて、そしてその履歴が残っていなくて分からない時には、買収企業にとって大きなリスクがつきまとうことになり、そのM&Aは成立が難しくなってしまう。