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まず決算書でM&Aが選択肢になるのかを見ている【M&A日記】
譲渡の相談をお受けした場合、具体的な話をするのであれば決算書を見せて頂く必要がある。
事業承継の広い相談であれば、M&Aとは何かとか、事業承継における各選択肢のご説明とか、こういう話は決算書抜きでもできる。
ただ、自社としての選択肢を具体的に検討したいということになれば、決算書が必要。
まず大事な点として、決算書の内容によってはM&Aが選択肢とはならない可能性もある。
かつて、2012年に私がM&A業界に携わりはじめたとき、M&Aは経営が厳しくなったときの選択肢、という誤解がはびこっていた。
これは間違っていて、買い手の立場に立てば分かるが、経営が厳しい会社を欲しいと思う人はあまりいない。
魅力的な会社であるからこそ買収したいと思うし、経営が厳しくてもそこに光る何かがあれば興味は持ってもらえるかもしれないが、評価はあくまで数字に紐づくので、期待されるような提案は受けられない可能性が高い。
ということなので、決算書を見ることで、M&Aを選択肢として提案できるかどうかの判断をまずすることになる。
大きなポイントは、①純資産、②現預金と借入のバランス、③収支、の3点。
純資産がマイナス、即ち債務超過の会社はその要因が大事。
利益が出ていても、高額な役員報酬を積極的にとって会社に蓄えない経営者もいる。
これは×とは言わないが、会社の蓄えは更なる成長のための投資原資なので、それが無いというのは見栄えがあまりよくない。
また、そもそも業績が悪くて債務超過だとすれば、③の収支に繋がってくる話で、業績が悪い要因とその改善可能性を考える。
現実的になかなか難しいとなれば、M&Aが成立する可能性はかなり低いと言わざるを得ない。
ちなみに昨今問題となっている、不適切な買い手というのはこういう会社を買収してくる。
そもそも会社を再生させる気などないので、改善できるかどうかは関係なし。
現預金を引き抜いて倒産させて、債務の連帯保証は旧オーナーのままという卑劣なやり方。
本来買い手がつかないような会社のはずなのに、買いたいところがあるというのは要注意だ。
現預金と借入のバランスは、借入が極端に多いと、これもまたM&Aにはハードルとなる。
借入が現預金より極端に多く、それでも純資産はプラスという場合、固定資産や投資資産が多いと思われ、それらの時価評価がとても大切になる。
土地や有価証券などであれば相応の価値を見出せるかもしれないが、機械類や造作物などの場合、簿価ベースでは価値があっても実際に市場に出すと殆ど価値がない可能性があり、実態は債務超過という可能性もある。
また、EV/EBITDAマルチプルという株価算定方式を買い手が用いる場合、借入が極端に大きい場合は評価上の影響が大きすぎて成立しない可能性が高い。
こういうところを決算書で見ながら、そもそもM&A選択したり得るのかという判断と、他にはどのような選択肢があるのかという相談に乗らせて頂いている。