EV/EBITDA倍率が100倍を超える企業【M&A日記】
EV/EBITDAマルチプルという指標が、昨今M&Aにおける企業評価によく用いられるようになってきている。
EVはEnterprise Value、直訳すると企業価値。
但しこれは会計用語でいう企業価値のことで、その言葉からは企業の時価総額が連想されると思うが、それとは異なる。
「EV=時価総額+純有利子負債(Net Debt)」
M&Aにおいて、時価総額は売主に対して支払われる株の対価のことで、それに対象会社の純有利子負債を足し合わせてEVは算出される。
ちなみに純有利子負債は「有利子負債-現預金」。
EBITDAは厳密には異なるが、減価償却前営業利益の理解でほぼ支障なし。
ということなので、EV/EBITDA倍率というのは、M&Aにおいては売主に支払われる株式100%の対価に対象会社の純有利子負債を足して、その額をEBITDAで割って算出される。
ということはこの倍率が仮に10倍だとすれば、純有利子負債の額によるものの、EBITDAの10倍前後に株価が設定されたという見方ができる。
M&A市場の相場的に言えば、10倍もかなり高く、殆ど実現しない。
私も今年でM&A業界12年目になるが、10倍の評価が付いたのは片手以内。
相場的には3から高くて7倍ぐらいに収まるケースが殆ど。
ということはこれが100倍というのは、とてつもなく評価が高いということになるが、上場企業の中では2024年10月16日現在、100倍を超える企業が6社もある。
何故100倍以上になるのかは調べていないので分からないが、これは一時を切り取ったデータなので、その前の業績を遡っていけば分かるかもしれない。
例えば以前まではもっと利益が出ていたものの、特殊要因などで利益が出なくなってしまい、しかしそれは一時的なものとみなされて株価に反映されず、利益は減ったのに株価は維持されている状況とか。
あるいは、ITとか成長産業においては、将来への成長期待から極端に高い株価となることはあるので、そういう類かもしれない。
M&Aで100倍というような株価が付けば夢のようかもしれないが、残念ながら現実的にはあり得ないこと。
少なくともIT等の成長角度がとんでもないような可能性を秘めている業界以外では100%ないと思って頂いて良いかと思う。
先日資さんうどんがすかいらーくに買収された件について書いたが、外食M&A市場過去最高値ぐらいかもしれないようなバリュエーションとなっていて、それでも推測20倍強ぐらいだ。
3〜5倍を目安として自社価値は判断されることをお勧めする。