繰越欠損金とM&A
会社が赤字を出すと、それは繰越欠損金として翌年以降に繰り越される。
現在の税制では10年間繰り越すことができる。
1億円の赤字を出して、翌年度に5000万円の利益を出した場合、この5000万円は繰り越されていた1億円の赤字によって相殺されて、翌年度の課税所得は0円ということになる(大企業は控除額が50%に制限される)。
世の中にはいろいろな理由で、大きな繰越欠損金を抱えている企業がある。
大きな赤字を出したとて、企業が存続できるかどうかはキャッシュフロー次第。
100億円の赤字を出しても150億円借入れたり、資本調達できれば会社は存続する。
楽天が膨大な赤字を出しつつも存続できているのは、それだけの資金調達ができているからだ。
表題に戻る。
例えば1億円の繰越欠損金を抱えている会社Aがあったとする。
A社の純資産は0円、利益はトントン。
この会社をB社が1円で買収したとする。
B社は年間1億円の利益を上げている。
実効税率を30%と仮定すると、3000万円税金を払っている。
B社は自社の事業の内、5000万円利益を創出する事業をA社に移転した。
それによって、A社で5000万円の利益、B社で5000万円の利益を創出する、というグループになった。
A社は1億円の欠損金を抱えているため、5000万円の利益は控除されて、税払いはなし。
B社は5000万円×30%で1500万円の税金を払った。
結果、B社はA社を買収したことで、1500万円の税金を削減することができた。
このようなことができてしまう。
さて、実態としてはどうか。
実態としては、まず税務署は租税回避行為を否認する権限を持っている。
なので、B社の買収が租税回避目的と捉えられると、繰越欠損金による税金控除は否認される可能性がある。
ということは、B社がA社に事業を移転することについて、合理的な理由が必要ということになる。
移転させることによって、A社とのシナジーが創出される、事業が効率化されるなどの理由。
また、事業を移転させたといえ、契約等をA社に移転させただけで、実態としてはB社が変わらず事業を行っているようであれば、これは租税回避行為とみなされる可能性がある。
なので、上述した事例を実現することは可能だが、あくまでそれは事業上の明確な目的があってのことで、税控除はその結果として生じたものである、という状態が必要。
こういう話があったときには、専門家に相談して進められることを推奨します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?