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LTADまとめ④ 第2部:長期アスリート育成のキーファクター その概要

第2部ではLTADの開発に影響を与えた10の重要な要因について説明をしています。実際に、LTADを応用するためには、これらの要因をそれぞれ学ぶ必要がありそうです。

第3章以降では、それぞれの要因一つ一つについて詳細に解説されています。
ここでは、10の要因について、その概要を簡単にまとめます。

1.フィジカル・リテラシー

フィジカル・リテラシーとは人間の基本的な動き、基本的な動作スキル、スポーツの基本的な技術を習得することです。
フィジカル・リテラシーは生涯スポーツへの参加と競技スポーツにおける卓越性追求の両方の礎となります。
成長期に入る前にフィジカル・リテラシーを獲得しておくことが理想です。

2.スペシャラゼーション(競技特化/専門化)

スペシャラゼーションとは、アスリートが参加するスポーツを一つに限定し、そのためのトレーニングを行い、年間を通じてその競技に参加することを指します。
日本では競技特化や専門化と言われています。
スポーツは早期専門化型スポーツと後期専門化型スポーツとに分類することができます。

3.年齢

LTADの各ステージにおいて、保護者やコーチはアスリートの年齢を考慮する必要があります。
しかし、ここで言う「年齢」とは、ただ生年月日を知ると言う意味ではありません。以下のような多くの年齢を考慮する必要があります。
 ・年齢 生まれてから経過した年数と日数
 ・相対年齢 同じ暦年で生まれた子供たちの生まれ月による差
 ・発達年齢 身体的、精神的、認知的な成熟度
 ・骨格年齢 骨の習熟度に基づく骨格の成熟度
 ・一般的トレーニング年齢 ある特定種目の競技を専門的に開始してからの年数

4.トレーナビリティ(各トレーニングに適した時期)

 コーチは最適なトレーニングプログラムを作成するために、身体に対するトレーニングが最も効果を発揮する期間を知らなければなりません。

5.知的、情緒的、道徳的な発達

子どもの知的、感情的、道徳的な発達の速度はそれぞれ異なります。
コーチは、子どもたちのこれらの発達の違いがトレーニングや競技にどのような影響を与えるかを知っておく必要があります。

6.卓越性には時間がかかる

若いスポーツ選手が才能に恵まれているかどうかにかかわらず、あるスポーツで最高の選手になるためには、何年にもわたるトレーニングや練習が必要となります。また、ただ単に多くの時間を費やすだけではなく、最適な成長を促すための手立てが必要となります。その手立てというのが、質の高いコーチングや発達段階に応じたトレーニング、効果的な休息の計画などになります。

7.ピリオダイゼーション(計画的トレーニング)

ピリオダイゼーションとは、スポーツにおける時間管理の手法です。
適切な種類のトレーニングを適切な時期に行い、パフォーマンスの最適な向上を提供するものです。トレーニングの構成要素を週、日、セッションに分けて配列し、限られた練習時間の中で、トレーニングの優先順位を明確にし、必要な競技力の向上をもたらします。

8.競技会

スポーツにおける行動の原動力は競技会で成果をあげることです。
コーチは競技会のあり方に基づいて指導を行います。
また、保護者や周囲の人々は競技会の結果に基づいて成功を定義します。
そのため、発達段階に応じた競技会のデザインが、LTADの鍵となります。

9.システムの整合性

スポーツを行う人を取り巻く状況は様々ですが、それらをまとめて、一つのシステムと表現しています。個人の視点から見て、長くスポーツを継続していくためには、このシステムが整っていることが大切です。
また、組織的な視点では、スポーツに関わる4つの主要部門(健康、教育、レクリエーション、競技)の相互作用も一つのシステムと捉えることができます。
LTADでは、アスリートの育成を効果的に進めるためには、これらのシステムの整合性を図ることが重要だと考えられています。

10.継続的な改善

最後のキーファクターは、日本の企業哲学である「KAIZEN(カイゼン)」です。
スポーツの世界は常に変化をしています。
それに対応するためには、継続的な変化が必要となります。
何も行動を起こさなければ、参加者の減少や不健康な人々の増加につながります。LTADは、スポーツ組織や個人が継続的な改善を行うための触媒となります。

LTADの限界

ここで取り上げた10の要因は重要なものですが、これがアスリートの長期的な成長に影響を与える唯一の要因というわけではありません。
アスリートの成長には、その他の要因(遺伝的要素や貧富の差、社会的地位など)も影響している可能性があります。
これらの要因の相互作用がどのように影響し合うかは、ほとんど明らかになっていません。また、10の要因が今後増えていくことで、その相互作用の複雑さは指数関数的に増加してしまします。

これが、現在直面しているLTADの限界ともいえます。
しかし、スポーツに関わる人々が新しい要因を追加したり、その相互作用を明らかにすることによってLTADは改善され続け、より良いものになっていくはずです。

まとめ

今回はLTADの根幹をなす10の要因についての概要説明でした。
中学校の部活にLTADを応用するための視点としては、
これら10の要因をそれぞれについて現場に導入できることを考え、実施することが必要になります。

次回からは、それぞれの要因についての詳細をまとめると同時に、現場で導入できそうなことや、実際の部活指導に導入していることなどを紹介したいと思います。


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