LTADまとめ② 第1部:長期アスリート育成の手引き 第1章:長期アスリート育成モデル
第1章 長期アスリート育成モデル
この章ではLTADモデルの歴史と
その7つのステージと10のキーファクターについて説明されています。
LTADの始まり
LTADの歴史は浅く、1995年にBalyiとWayが長期的なアスリート育成という4段階のモデルを開発したことが始まりです。
2005年には、BalyiとWayはそのモデルを基にスポーツ科学の成果、発育・発達の原則や現場のコーチ経験などを取り入れ、さらに発展させました。それが、この書籍『Long-Term Athlete Development』の内容です。
ただ、そこに至る道筋としては、1989年にサンダーソンという学者が発表した
"Growth and Development Considerations for Design of Training Plans for Young Athletes"という論文による影響が大きいようです。それまでのアスリート育成に関する文献は、すべて年齢を基準としていましたが、上記のアンダーソンの論文はアスリートの発育年齢を重要な要素としている点で画期的な論文だったようです。
LTADモデルの概要 ー7つのステージー
LTADモデルは幼児期から成人期までの全ての成長段階において、スポーツ活動そのものや、大会への参加、トレーニングによる向上などによって、選手の成長を適切に導くために、そのフレームワークとして以下の7ステージを提案しています。
1.アクティブスタート
2.ファンダメンタル(基本を楽しく身につける)
3.トレーニングを学ぶ
4.鍛えるためのトレーニング
5.競争するためのトレーニング
6.勝つためのトレーニング
7.豊かな人生のための活動
これら7つのステージにおける、それぞれのステージの目的や具体的な留意点は
第3部で語られます。
LTADモデルの概要 ー10の要素ー
また、それぞれのステージは以下の10要素の上に構築されています。
1.フィジカル・リテラシー
2.専門化
3.年齢
4.トレーナビリティ(各トレーニングが最も有効な時期)
5.知的、情緒的、道徳的発達
6.上達には時間が必要
7.ピリオダイゼーション
8.競争、競技の方法
9.システムの調整と統合
10.継続的改善
これら10要素については、その目的や具体的な方法論などについては
第2部で語られます。
長方形をしたLTAD
LTADは伝統的なアスリート育成モデルについて
「次のレベルへの切符を手に入れたアスリートのみがフォーカスされる」
「各レベルで参加者を排除し、次のレベルに進めない者は評価されない」
とし、従来のピラミッド型のモデルを批判的に捉えています。
また、ピラミッドの外にもれた人々のことは気にもしない、
このアスリート育成モデルが「北米のスポーツとレクリエーションを断絶させた」と痛烈に批判しています。
そのような背景もあり、LTADのモデル図は長方形をしています。(図1)
競技力を向上させたアスリートのみならず、
その競争からもれたアスリートや楽しむためにスポーツに取り組む人々もモデル図の中に取りこぼさず表現しています。
協働のためのフレームワーク
LTADは、スポーツを通して子どもを育成するためには、学校や競技団体、その他のレクレーション団体などがバラバラに活動するのではなく、それぞれの団体が協働すべきだと唱えています。
また、LTADは、そのような学校の体育プログラムとエリートスポーツのプログラム、地域のレクリエーションプログラムなどを結びつけ、統合する包括的なモデルとなっているそうです。
私の身近なところでも、中体連やバスケットボール協会などの団体が協働しながら育成年代の選手の育成にあたることはできていない現実があります。
LTADのフレームワークによって、両者が協働する日がやってくるのでしょうか?
まとめ
今回の章はLTADモデルの概要を説明する章でした。
中学校の部活にLTADを応用するための視点としては、以下の2点を明確にする必要があると感じました。
1つ目は、「LTADという大きな枠組みの中での中学校の部活の立ち位置」です。
つまり、自分の運営する部を競技志向とするのか?レクリエーション志向とするのか?それとも、その両者を包括する志向とするのか?といった立ち位置を明確にする必要性です。
この点に関しては、私自身は競技志向の参加者もレクリエーション志向の参加者も包括した部の運営ができないか?と現在、模索しています。
2つ目は「他の団体と協働できる視点、内容を取り入れること」です。
つまり、自身の部の立ち位置が明確になったら、そのために教育委員会や中学校、中体連やバスケットボール協会、あるいは同じカテゴリーの他チーム(Bユースやクラブチーム)などと連携し、できることを明確にする必要性です。
この点に関しては、今後の課題ですが、より高い競技志向を持つ子どもや、
より強いレクリエーション志向を持つ子どもには、その志向に見合ったチームへの移籍や、協会が主催する育成事業やレクレーション事業への積極的参加を勧めることなども視野に入れる必要があると考えています。そのためには、同じカテゴリーのBユースやクラブチームとの情報交換や、県バスケットボール協会や地域のレクリエーション協会などとの連携も必要になってくると感じています。
今後は、
自分の運営するチームが7つのステージのどこに該当するのか?
10の要素についてどのようなことを現場に導入できるのか?
という視点から、中学校部活でのLTADの応用について考えていきたいと思います。