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LTADまとめ その11 第9章 ピリオダイゼーション

第9章 ピリオダイゼーション

3年生の最後の大会が終わり、1・2年生の新チームでの練習が開始しました。
新チームになって最初はどんな練習をしよう-
とりあえず、近隣のチームと練習試合するか–。
いやいや、まだ試合なんかできるレベルじゃない。まずは基礎練習から-。
この時期は、指導者として頭を悩ませながらも、ワクワクする時期です。

ともあれ、生徒たちの成長を最大化させるためには、しっかりとした年間計画が必要です。LTADにおいても「ピリオダイゼーション」として、年間計画の重要性と具体的な方法論が語られています。

この章では、LTADの10個のキーファクターのうちの一つ、
「ピリオダイゼーション」について、その詳細が語られます。

※ここから先はLTAD第9章「ピリオダイゼーション」を簡単にまとめた内容になります。

はじめに

ピリオダイゼーションとは時間管理であり、
トレーニングの計画を立て、実行することです。

長期的(数年単位)、短期的(年単位)なトレーニング、競技、回復プログラムを通じて、トレーニングの量、強度、頻度の側面を整理し、アスリートの必要性に応じ、ピークパフォーマンスを達成できるようにするものです。

また、ピリオダイゼーション、複雑なトレーニングプロセス(スキル開発、筋力トレーニング、再生)を論理的にスケジュール化し、パフォーマンスを最適に向上させるためのフレームワークを提供するものです。
トレーニングの構成要素を週、日、セッションに分割し、その時々に必要なトレーニングやその改善点について優先順位を整理し、利用可能な時間に基づいて、練習計画を立てていきます。

ピリオダイゼーションに関しては、育成年代のアスリートに対して、大人のプログラムを使用している場合がほとんどです。
そこで、本章では、ピリオダイゼーションとは何か、そして、育成年代のアスリートの発達段階に適したトレーニング、競技、回復のプログラムをデザインするためにはどのような方法があるのかを説明します。

この章は、年齢とトレーナビリティーの章(5章と6章)をつなぐものであり、これらの章の「運用化」の章でもあります。

ピリオダイゼーションとLTAD

ピリオダイゼーションは、固定化されたプロセスや方法論ではなく、実際には非常に柔軟なツールです。適切な方法論と継続的なモニタリングや評価を組み合わせて適切に使用すれば、あらゆるレベルのアスリート育成に最適な計画を行うことができます。

LTADは、すべての段階におけるピリオダイゼーションモデルを開発することで、この問題に取り組んでいます。これは、育成年代と大人になってからの両方に特有の成長、成熟、およびトレーナビリティーの原則を考慮したものです。

LTADは、一般的に10年から12年の期間で、身体的、技術的、戦術的、精神的な能力を最適化するものです。LTADは、4年ごとの計画(エリートアスリートはオリンピックとパラリンピックの4年間のサイクルを1シーズンと捉えます。)と、さまざまな大会までの準備期間、大会中の期間、次の大会までの移行期間をサイクルにした計画の両方を使用します。

スポーツパフォーマンスに関する文献に記載されているピリオダイゼーションモデルは、サブエリートやエリートのシニア、または成熟した設計されたパフォーマーを対象としています。子供や青少年、または障害のあるアスリートに対するピリオダイゼーションに関する情報はほとんどありません(第2章参照)。

大人のアスリートに対してのトレーニングプログラムを設計することは比較的容易です。アスリートの長所と短所をプロファイリングすることで、プログラムを立案し、短所を解消し、長所をさらに伸ばすことができます。

しかし、育成年代のアスリートにとって、長期的な計画はより複雑なものとなります。先に述べた生物学的マーカー(PHVの開始、PHV、および初潮)を参考に、コーチがアスリートの成長速度に反応しながら、トレーニング計画を決定する必要があります。

このプロセスは、「反応的ピリオダイゼーション」と呼ばれ、アスリートの成長速度に反応し、それに応じてトレーニング、競技、回復プログラムを調整するものです。もちろん、このためには、選手の成長を十分に観察することが必要です。

ピリオダイゼーションの構成要素

ピリオダイゼーションとは、シーズンごとのプログラムをより小さな期間のトレーニングサイクルに細分化することです(Matveyev, 1983)。

ここでは、年間計画を例にピリオダイゼーションの構成要素を見てみましょう。
年間計画とは、1年52週の間に行われるトレーニング、競技、回復の一連の流れを指します。年間計画は、アスリートが重要な競技会でピークに達するように準備することを目的としています。年間計画の中には、ピリオドとフェーズの両方があります。

まず、ピリオドについてです。
1つの年間計画の中には、準備期、競技期、および移行期という3つのピリオドがあります。
○準備期は、一般的なトレーニングと競技に特化したトレーニングを行います。
○競技期間は、大会に参加し、試合を行う時期です。
○移行期は、休息と回復、次のシーズンへの移行する時期。

次は、フェーズについてです。
準備期には、一般準備期、特定準備期、競技前期の3つのフェーズがあります。
○一般準備期(GPP)は、一般的な個人またはチーム固有のフィットネスと技術的または戦術的なトレーニングを重視し、高い量と低い強度のトレーニングを特徴とするトレーニング段階です。
○特定準備期(SPP)とは、個人またはチーム特有のスポーツに特化したトレーニングを重視し、トレーニング量を少なく、強度を高くすることを特徴とするトレーニング段階です。
○競技前準備期(PCP)は、個人またはチームに特化した高強度かつ低量のトレーニングを特徴とするトレーニング段階です。パフォーマンスに特化したトレーニングを重視し、練習量の調整を行います。

準備期の3つのフェーズは、競技期と移行期と合わせて、1年で5つのフェーズを構成しています。
○競技期(CP)は、競技に特化したトレーニングとトレーニング量の調整とピーキングを主要な大会、トーナメント、リーグ戦に向けて行います。これまでに作り上げたフィットネスとパフォーマンスレベルを維持することがその特徴です。
○移行期(TP)は、休息と再生によって特徴づけられるトレーニング段階であり、短い受動的・能動的休息という形が特徴です。

さらに、各フェーズは「メソサイクル」に分割されます。
また、各メソサイクルは「マイクロサイクル」に分割され、
最終的に、各マイクロサイクルは「デイリーサイクル(トレーニングセッション)」に細分化されます。

図1:夏季スポーツと冬季スポーツの年間ピリオダイゼーション計画
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.120 FIGURE9.1を修正

図1は夏季スポーツと冬季スポーツの年間ピリオダイゼーション計画です。図
上部には、準備期、競技期、移行期の3つのピリオドがあります。
夏のスポーツの場合、選手は10月から準備期間を開始する必要があります。
これにより、4月から8月の夏の競技期間にピークを迎えることができます。
準備期間中、アスリートは目標を設定し、筋力と持久力のトレーニングに取り組み、スポーツ特有のフィットネスを身につけ、戦略や戦術を学びます。
競技期間中は技術や戦略・戦術を特に学びます。
最後に、移行期間では、アスリートは休息と回復を行い、前シーズンを振り返り、新たな目標を設定します。そして、次の競技シーズンに向けて準備を行い、次年度の年間計画へとつなげます。

シングル・ダブル・トリプルピリオダイゼーション

年間計画には、シングル、ダブル、トリプルがあります。
シングルピリオダイゼーションは、図2に示すように、競技期が年間に1回のみの年間計画です。

図2:シングルピリオダイゼーションの一例 競技期が一度であることに注目
GPP=一般的準備期 SPP=特別準備期 PCP=競技前準備期 CP=競技期 TP=移行期
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.121 FIGURE9.2を修正

ダブルピリオダイゼーションは、1年のうちで競技期が2回あり、最初の競技サイクルの前に一般的準備期、特定準備期、競技前準備期があり、2回目の競技サイクルの前には特定準備期、競技前準備期があります(2回目の一般的準備期は必要がない)。トリプルピリオダイゼーションプランは、年間に3つの競技期を持ちます。

シングルピリオダイゼーションは初級者向け、ダブルピリオダイゼーションは中級者向け、トリプルピリオダイゼーションはエリートアスリート向けです。ダブルピリオダイゼーションはシングルピリオダイゼーションよりもスポーツに特化したトレーニングで構成されており、トリプルピリオダイゼーションはシングルピリオダイゼーションやダブルピリオダイゼーションよりも明らかに多くのスポーツに特化したトレーニングで構成されています。

スポーツに特化したトレーニングを行えば行うほど、アスリートの身体的、技術的、戦術的能力の向上が期待できます。しかし、より質の高いトレーニングや競技を行えるように、それらの能力を向上させるには、時間がかかります。通常、ダブルピリオダイゼーションを始めるには3〜4年、マルチピリオダイゼーションを始めるには2〜4年の年数が必要です。トリプルピリオダイゼーションに取り組む能力を身につけることができるのは一部のトップアスリートのみです。
表1はシングル、ダブル、トリプル・ピリオダイゼーションのフェーズ一覧です。

表1:年間計画におけるフェーズ
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.122 TABLE9.1 修正

メソサイクル

メソサイクルは、2週間から5週間程度の小さな単位で、トレーニングのフェーズを短くしたサイクルです。トレーニングのフェーズをより小さな単位に分割することで、管理を容易にします。メソサイクルの各週が1つのマイクロサイクルになります。メソサイクルの最初の1~4週間は負荷調整週と呼ばれ、アスリートは漸進的過負荷の生理学的原則を適用しながら、トレーニング負荷を徐々に増やしていきます。

図3:伝統的なメソサイクルが表す様々な負荷と回復の比率
a:4対1のメソサイクル  b:3対1のメソサイクル
c:2対1のメソサイクル  d:1対1のメソサイクル
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.123 FIGURE9.3を修正

メソサイクルの最後には必ず回復のためのマイクロサイクルを取り入れ、トレーニング負荷を減少させます(図3)。メソサイクルの最終週をリカバリー週と呼日ます。メソサイクルの最後にあるリカバリーマイクロサイクルは、休息ではなく、回復と適応を高めるためにトレーニング負荷を減少させた期間となります。リカバリー週の導入により、1つのメソサイクルが終了し、新たなメソサイクルが開始されます。表2に科学的なピリオダイゼーション文献で確認されているメソサイクルの種類を示します。

表2:メソサイクルの類型
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p123 TABLE9.2を修正

メソサイクルの内容は、その位置、つまり、競技からどれだけ遠いか近いかによって決定されます。図3は4:1、3:1、2:1、1:1のメソサイクルを示しており、メソサイクルが長くなればなるほど、量は多くなり、強度は低くなる。その結果、メソサイクルが短くなればなるほど、量は少なくなり、強度は高くなります。したがって、適応を高め、疲労を軽減するためには、より頻繁な回復が必要になります。

マイクロサイクル

最小のトレーニングブロックはマイクロサイクルと呼ばれ、通常7日間(6日間のトレーニングと1日の休息)です。マイクロサイクルにおけるトレーニングと休息の比率は5:1、3:1、または2:1など様々なパターンがあります。マイクロサイクルの比率は、競技日との位置関係で決定されます。表3は、科学的なピリオダイゼーションの文献で確認されているマイクロサイクルの種類を示しています。

表3:マイクロサイクルの類型
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p124 TABLE9.3を修正

マイクロサイクルの内容は、個人またはチームにおけるニーズと、競技会との関係で決定されます。
競技会が年間サイクルの後半に行われる場合,一般的準備期と特定準備期前半における導入期、発達期のマイクロサイクルが体力、技術、戦術の向上を促します。
競技会に近い時期(特定準備期後期および競技前準備期)には、安定化、調整、および回復のサイクルが、アスリートの競技会への準備を促します。
競技期におけるマイクロサイクルは、すでに確立された身体能力の維持と技術的・戦術的な開発を、常に最適な回復プログラムとともに行う必要があります。

テーパーとピークのマイクロサイクルは、大会前のトレーニングによって生じる疲労を取り除くために設計されています。
トレーニングの量は大幅に削減されますが、トレーニングの強度と頻度は高いままです。テーパリングは、競技会の準備の中で最も理解されていないプロセスです。テーパリングはトレーニングを行わないことではありません。多くのコーチはテーパリングの計画と実施に関していい加減な仕事をしています。多くのコーチが、大会前にトレーニングの量を大幅に減らさないという間違いを犯しています。
テーパリングに関する科学的文献には、トレーニング量を減らしても、高強度かつ高頻度であれば、すでに獲得された身体的・技術的能力を維持できることが証明されています(Mujika, 2009)。
十分なトレーニングを積んだ選手であれっても、トレーニングの遅れのために、競技会の数週間前になって、これらの能力を慌てて向上させようとしても、それはできません。もちろん、戦術や意思決定能力は、大会直前の数日間で向上させることができますが、持久力、体力、スピード、技術は向上させることができないのです。

マイクロサイクルの例をいくつか見てみましょう。
図4は、代謝的適応または有酸素性適応を誘発する入門的なマイクロサイクルの例です。図4と図5の量と強度の違いに注意してください。図4では、トレーニング量は多く(100, 80, 100, 60, 90, 100)、一方、強度は70%で安定しています(これは最大心拍数が200bpmのアスリートが140bpmで連続した連続トレーニングを行うことを意味します)。

図4:持久力についての入門的なマイクロサイクルの例
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT」p.125 FIGURE9.4を修正
図5:スキルやスピードについての入門的なマイクロサイクルの例
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.125 FIGURE9.5を修正

図 5 はスキルやスピードの適応を促す入門用または発展用のマイクロサイクルの例です。図4と図5のトレーニング量と強度の違いに注意してください。図5では,疲労した状態ではスキルやスピードを向上させることができないため,トレーニング量は少なくなっています.トレーニングの量は 30, 40, 30, 40, 30, 20%であるのに対し,トレーニングの強度は 100, 90, 100, 80, 100, 100%となっています。

図6:スキルやスピードについての入門的なマイクロサイクルの例
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.125 FIGURE9.6を修正

図6は、スキル、テクニック、代謝適応の混合マイクロサイクルの例です。ここでは、サイクルの最初の3日間はスキル(またはスピード)が強調されています。この最初の3日間は、強度が高く、トレーニング量が少ないことが特徴です。最初の3日間で蓄積された疲労のため、4、5、6日目には、より質の低い代謝的(持久的)なトレーニングが行われ、最適なトレーニング効果を生み出します。4日目、5日目、6日目は、低強度、高ボリュームのトレーニングが特徴です。トレーニング量は40、35、30、90、100、100%と増加させ、トレーニング強度は100、90、100、70、70、70%と減少させています。

トレーニングセッションとユニット

マイクロサイクル内のトレーニングセッションの数は、アスリートやチームのニーズによって決定されます。アスリートが上級者であればあるほど、必要なトレーニングセッションの回数は多くなります。初心者の場合、他のスポーツへの参加に加え、1マイクロサイクルあたり2~3回のトレーニングセッションを行うのが理想的です。

最も一般的なマイクロサイクルは、6:1の割合で行われます。この比率は、1週間のスケジュールに沿っているため、実用的で便利です。アスリートは、平日にトレーニングを行い、週末に競技を行います。スポーツが上達するにつれ、週9回、最終的には週12回と段階が進みます。多くのスポーツのエリートアスリートは、マイクロサイクルごとに12〜15回のトレーニングを行っています。

トレーニングセッションは、ウォームアップ、セッションの主要部分、補完的または副次的な活動、クールダウン、回復、休息で構成されています。また、トレーニングセッションは、スキルトレーニング、スピードトレーニング、パワートレーニング、ストレングストレーニング、エンデュランストレーニングといったトレーニングの単位で構成されます。これらの構成要素の中には、互いに干渉し合うため、1回のセッションでは実行できないものもあります。

10ステップのアプローチで年間計画を作成する

以下は、年間計画を作成するための10ステップです。
年間計画は、競技会から逆算して作成します。

ステップ1:シーズン最初の競技会を決定します。個人スポーツでは、コーチまたはアスリートが、アスリートに最も適した競技を選択することができます。チームスポーツの場合は、大会のスケジュールによって決まります。

ステップ2:シーズン最後の競技会を決定します。そうすることで、ステップ1と合わせて、年間計画中の競技期を決定することができます。

ステップ3:移行期の長さを決定します。伝統的に、移行期間は3〜4週間で、受動的休息と能動的休息を含見ます。移行期、アスリートは短い休息をとった後、アクティブに活動するべきです。補完的なスポーツ(つまり、同じエネルギーシステムを使用するスポーツ)に参加することで、精神的な回復が得られ、トレーニングしながらリフレッシュすることができます。移行期が長すぎると、トレーニング不足が起こります。ステップ1から3を図7に示しています。

図7:ステップ1-3 年間計画中の競技期と移行期を決定する。
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.128 FIGURE9.7を修正

ステップ4:競技前準備期の長さを決定します。このフェーズの目的は、アスリートを競技に適した体型にすることです。競技前準備期は、伝統的に3週間から5週間です。この期間には、テーパリング(練習量を減らし調整すること)が含まれます。

ステップ5:特定準備期の長さを決定します。初級アスリートの場合、このフェーズは短く、中級およびエリートの場合はより長くなります。よりスポーツに特化した作業を行うことで、能力やパフォーマンスを向上させることができますが、初心者はそのような能力がないため、より一般的準備期を長めに取ります。

ステップ6:一般的準備期の長さを決定します。初心者はこのフェーズをより必要としているため、初心者は長く、中級者やエリートアスリートは短くします。ステップ 3 からステップ 6 を図 8 に示しています。

図8:ステップ4-6 PCP、SPP及びGPPを配置する。
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.128 FIGURE9.8を修正

ステップ7:トレーニング量のプロットを行います(図9)。トレーニング量の漸進的なオーバーロードは一般準備期の間に起こるります。特定準備期に入った後、トレーニング量は徐々に減少し(トレーニングの特異性と強度が増すため)、競技前準備期と競技期の間は現状維持となります。

図9:ステップ7 トレーニング量をプロットする。
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.129 FIGURE9.9を修正

ステップ8:トレーニング強度のプロットを行ないます。図10に示すように、一般準備期の間は非常に安定した強度がプロットされます。これは、トレーニング量が徐々に増加するためで、量と強度を同時に増加させてはいけないことがその理由です。特定準備期に入ると、トレーニングの強度は徐々に増加し、トレーニング量は減少します。競技前準備期と競技期は、強度が高く、量が比較的少ない(維持)ことが特徴です。競技期では、必要に応じて、メジャーピークとマイナーピークに分けることができます。

図10:トレーニング強度をプロットする。
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.129 FIGURE9.10を修正

ステップ9:メソサイクルとマイクロサイクルの配分を確定します(図11)。これは、競技期の開始から逆算して計画し、生理学的および経験的なコーチングガイドラインを考慮して行います。一般準備期間中は、一般的なトレーニング量であるため、高トレーニング量かつ低強度の4:1および3:1のメソサイクルが推奨されます。特定準備期中は、3:1と2:1のメソサイクルが推奨されています。特異的トレーニングは身体への要求が高いため、回復のためのマイクロサイクルをより多く計画します。競技前準備期の期間中は、2:1と1:1のメソサイクルを主に実施し、より良い回復を行い、疲労を軽減し、より良いパフォーマンスを生み出します。メソサイクルが決まったら、クリスマスシーズン、試験、学校の休み、その他の休日を確認し、計画が最適になるように注意深く再検討することが必要です。

図11:ステップ9 各フェーズのメソサイクルとマイクロサイクルの配分を決定する。
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMEMT』

ステップ10:個人のテストやパフォーマンスの記録、基準となるデータをもとに、数値化を行います。トレーニングの5つのSを使い、トレーニングの重点的な割合、つまり優先順位を決定することができます(図12)。例えば、テストの結果、持久力の大幅な向上が必要な場合は、持久力に50%の重点を置くことが求められます。しかし、持久力が十分であれば、持久力を20%、筋力を50%の割合で配分することも可能です。

図12:ステップ10 5つの体力要素それぞれのトレーニング負荷の割合を決定する。
出典:『LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT』p.130 FIGURE9.12を修正

また、アスリートの必要性に応じて、他のSに配分することも可能です。例えば、一般準備期では、持久力50%、筋力20%、スピード5%、スキル20%、柔軟性5%の割合で負荷を配分することもできます。

特定準備期では、持久力は30%、筋力は20%、スピードは10%、スキルは35%、そしてしなやかさは5%に抑えられます。

競技前準備期と競技期では、持久力が10%に維持され、スピードが15%、スキルが60%に増加し、柔軟性は5%に維持されます。

10ステップの年間サイクルを実践する

こここでは、年間計画を作成するためのステップを簡略化したものを紹介します。

ステップ1:評価する(フィードバックとフィードフォワード)
ピリオダイゼーションの最初のステップは、これまでの過程を評価し、今後の計画を立案することです。アスリートの発育年齢を理解し、前年度の長所と短所を振り返ることで、適切な年間計画の作成に取りかかることができます。

○アスリートまたはチームのプロフィールを作成する
・成長年齢を確認する。
・長所と短所を把握する。
○前年度までのトレーニング、大会、リカバリープログラムの評価
・前年の年間プログラムの長所を確認する
・以前の年間プログラムの短所を明らかにする。
・次年度のプログラムを作成する。

ステップ2:計画書の作成
ピリオダイゼーションの第二段階は、次年度の計画を立てることです。このプロセスでは、そのシーズンの主な大会から逆算します。この計画には、競技段階、競技前段階、特別準備段階、一般準備段階、および計画期間中のトレーニング量と強度の計画を行う必要があります。

○大会のあり方を分類する。
・個人スポーツ(選択された競技会)
・チームスポーツ(指定された大会)
○競技期を決定する。
○競技前期を決定する。
○特別準備期を決定する。
○一般的準備期を決定する。
○ 最適なトレーニング量とトレーニング強度を計算する。
○年間トレーニングプランにトレーニングの予備量と強度をプロットする

ステップ3:メソサイクルとマイクロサイクルの計画
計画書が作成できたら、メソサイクルとマイクロサイクルの構成に取りかかります。各サイクルを構成する際には、アスリートのより大きな目標、より広い目標を念頭に置き、トップダウン方式を使用します。
○競技期の始まりから逆算して、メソサイクルとマイクロサイクルを設計する。
○試験期間、休日、研修などを考慮し、メゾサイクル、マイクロサイクルの配分を見直す。
○年間計画の目標に基づき、メソサイクルおよびマイクロサイクルの配分を最終的に確定する。
○最終的に確定したメソサイクルおよびマイクロサイクルの値に基づいて、最終的なトレーニング量と強度を年間計画書に記録する。トレーニングおよび大会の負荷が、技術的、戦術的、身体的、精神的、および、回復・再生の手順に従っていることを確認する。

ステップ4:トレーニングの負荷、量、強度の定量化
メソサイクルとマイクロサイクルの作成に続いて、トレーニングの負荷、量、および強度の定量化を行う必要があります。トレーニングの5つのSは、このステップを進める上で有効です。

○年間計画の各フェーズにおいて、トレーニングとパフォーマンスの5つのSの貢献度を定量化する。
・スタミナ(持久力)
・ストレングス(体力)
・スピード
・スキル
・しなやかさ(柔軟性)
○年間計画の始めのマイクロサイクルのみについて、トレーニングとパフォーマンスの5つのSの配分比率を定量化する。(年間計画は、重要な要素をすべて洗い出した骨格ですが、8~9ヶ月先のマイクロサイクルを数値化することは現実的ではありません。短期的な目標が達成できなければ修正を行う必要があります。)
○最初のメソサイクルのマイクロサイクルにおける週と日のトレーニングセッション数を決定し、トレーニングへの最適な適応と、回復と再生を最適化するためのセッションの順序を決定する。
○1日および1週間のトレーニング量を定量化する。
○ピークパフォーマンスを達成するために調整の手順を明らかにする。

ステップ5:モニタリングと評価
計画の実施とそのモニタリング、および評価は、非常に重要です。医学的、心理学的なモニタリングやテストを含め、フィールドテスト、ラボテスト、パフォーマンステストを定期的に行うべきです。計画されたトレーニング効果を得ることができているか定期的にモニタリングすることが大切です。

結論

ピリオダイゼーションは、スポーツ科学やスポーツ医学と、スポーツ特有の技術的、戦術的なプログラムを統合したものです。この章では、年間計画、ピリオド、フェーズ、メソおよびマイクロサイクルなど、ピリオダイゼーションによる年間トレーニング、競技、回復プログラムの様々なサイクルについて説明しました。

ピリオダイゼーションでは、大会を起点として、計画を立てます。メソサイクル、マイクロサイクルのを紹介しましたが、その作成には、段階的なアプローチが必要となります。

まとめ

今回の章は「ピリオダイゼーション」について書かれたものでした。

これを中学校の部活に応用するための視点としては
①年間計画作成の際に、そのまま応用する。
②1年間の運用ののち修正を行い、部活動版LTADに基づく年間計画を作成する。
ことが考えられます。

①年間計画作成の際に、そのまま応用する。

毎年、様々な資料をもとに自分で作成した年間計画のフォーマットを利用して、年間計画を作成していましたが、今回はこのLTADのピリオダイゼーションの考え方をそのまま利用して年間計画を作成しようと思います。

LTADの付録として、年間計画表と年間計画作成の手順が巻末に記載されています。今年度はこの年間計画表と作成手順をそのまま利用してみることにします。

この章だけではありませんが、私がLTADに対して感じているのは、
「ざっくりしてるな〜」ということです。
これが多分LTADの最大の弱みでもあり、強みでもあると感じています。

付録の年間計画表についても窮屈なものではないので、十分、部活動という日本独自のスポーツ文化の中でも使えそうな気がしています。
この詳細については、また違う記事としてnoteに上げようと思います。

②1年間の運用ののち修正を行い、部活動版LTADに基づく年間計画を作成する。

そして、とりあえず作成した年間計画に従い、1年間チーム作りを行います。
その後、評価、振り返りを行い、次年度につなげたいと考えています。


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