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[超短編小説] COUNTDOWN


「おはよう」
私の声だけが教室に響く。
私がクラスのみんなから無視され始めたのは丁度一週間前だ。
「ごめん」の一言を残し親友が私から去り、さらに同じ日に彼氏からも理由なく別れを告げられた。

その日から私は一人になった。

今日、新たな展開があった。
「死ね。学校やめろ」
私への暴言が黒板にぎっしりと書かれていた。
私は何も言えず、教室の真ん中に呆然と立ち尽くしていた。
その時「お、みんなおはよう!」と担任が教室に入ってきた。
馬鹿みたいに声が大きく、テンションも高いので生徒からは嫌われている。
「お、おい。なんだこの落書き。だ、誰が書いた!」
「あーそれ、ただの落書きだから気にしないで。深い意味はないから」と誰か女子生徒が声を出した。
「そ、そうか。それならいいんだが…」案の定担任はそれ以上は追求しない。

翌日、また新たな展開があった。
「ねえ、おはよう!」いつもと違い、私に向けられた挨拶。
私が返事をしないでいると「私ね、決めたの…」と何やら話し始めた。
「本当は嫌だったの、無視したりするの。いじめっていう程じゃないけど、こういうことよくないよね」
いじめの主犯の女子生徒に、いつもくっついている子だった。
「どういう風の吹き回しなのだろう」と思いつつもその日からその子と行動を共にすることが増えた。

「また、前のように楽しい日々が続くといいな」なんて呑気なことを思いながら。


「ねえ、あいつ私のこと本当に親友とか思い始めてるんだけど」
「やばいね。バカすぎ!」
「大体さ、家が金持ちで、成績優秀な上に男までとるとか何様なの」

また裏切られた。

たまたま聞こえてしまった会話。
理不尽な、理由とも言えない理由。


あの話を聞いてからなんとなく教室に居づらく、そのまま家に帰ることにした。

玄関の扉を開ける。

いつから「ただいま」と言っていないだろう。
リビングからは母と弟の楽しそうな声が聞こえる。
母はよそ者のように私を見る為、あまり関わりを持たないようにしている。

私の唯一の理解者である父は、病院の院長であり忙しいのか、ほとんど家にはいない。

私は本当に独りなんだ…。

家の隣にある父の病院へ行き「最近眠れなくて」と睡眠薬を処方してもらった。

自室へ戻り、処方された薬を全て飲んだ。
とても気分が悪くなり大事な薬を吐いてしまった。
しかし、もう心に決めていた。
家にあった色んな薬をあるだけ飲んだ。

部屋にある小さい頃の家族写真、中学からの彼氏との写真、高校で出会った親友との写真。
涙で滲む視界に、もうそれらは映らなかった。

もう鳴ることもなくなった携帯を握りしめ、私はそっと目を閉じた。

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