なかはる

暇つぶしのお供になれば幸いです。

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[超短編小説] 月が沈む夜に

俺の彼女は少し面倒だ。 初めのうちは可愛くて、甘えてくる彼女に癒されていた。 しかし時間が経つにつれ束縛が激しくなり、いつしか会社の同僚に癒しを求めるようになっていった。 そんなことにも気づかず、一途な彼女からの愛は増すばかりだ。 いつ別れを切り出そうかと毎日のように考えるが、いざとなると難しく週末だけは仕方なく彼女に付き合っていた。 そんなある日、いつものように同僚を家に呼んで夕食を楽しんでいる時だった。 ピンポーンとチャイムが鳴った。 玄関へ行き、覗き穴を覗くと彼女が

    • [超短編小説] スーツ

      スーツに身を包むと気が引き締まる。 しかし僕は基本的にスーツを着ない。 着るのは年に数回くらいだろう。 なぜなら、僕は引きこもりだからだ。 所謂ニートで、母からの仕送りでギリギリの生活を送っている。 数ヶ月前まではアルバイトをしていたが、どうしても仕事や同僚に馴染めず辞めてしまった。 友だちもおらず、社会との関わりもない。 昔からそうだった。 学生時代、友だちが居ないというだけで色々なレッテルを貼られ、生き辛い環境だった。 しかし今となっては一人でも誰からも何も

      • [超短編小説] 不協和音

        私はインスタグラマーだ。 フォロワーは数万人、男女ともに好かれている。 投稿した写真にはすぐさまいいねが付き、私の承認欲求を満たしてくれる。 こんな私にも悩みはある。 所謂「アンチ」と呼ばれる人たちだ。 フォロワーが数千人の時代にはアンチはなく、ファンからチヤホヤされるだけだった。 しかし、1万人を超えたあたりから急にアンチと呼ばれる人が湧き出て、些細なことにいちいち難癖をつけるようになった。 アンチは次第にエスカレートし、コメント欄でファンとアンチの攻防が繰り広げられる

        • Au revoir フランス語で「またね」の意 怪盗といえばやはりフランスですよね! 題名をお洒落にしたものの、内容はお洒落ではありません。 急にファンタジー要素をぶち込み、大した回収もなく終わるという荒業が行われています。私にもう少し力があればなあ。魔法使いたい。

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        [超短編小説] 月が沈む夜に

        • [超短編小説] スーツ

        • [超短編小説] 不協和音

        • Au revoir フランス語で「またね」の意 怪盗といえばやはりフランスですよね! 題名をお洒落にしたものの、内容はお洒落ではありません。 急にファンタジー要素をぶち込み、大した回収もなく終わるという荒業が行われています。私にもう少し力があればなあ。魔法使いたい。

          [超短編小説] Au revoir

          「魔法っていいよなあ。ロマンあるよな!憧れるわあ」 「なに、おまえ高校生にもなって魔法とか信じてるの」 「いや、そういうわけじゃないけど。なんか夢あるじゃん」 こいつはシュン、この手の話が大好きなクラスメイト。 転校生だった俺に一番に話しかけてくれたやつで、それ以来仲良くしている。 「そういや最近さ、現代のルパンなんて騒がれてる怪盗知ってる?」 「ああ、ニュースになってるやつね」 「美術品なんか盗んでどうするんだろうね。売ったところでバレて捕まりそうだし」 「まあ裏で取引

          [超短編小説] Au revoir

          [超短編小説] オタク狩り

          現代の日本に再び戦国の世が訪れていた。 政府から出された「それ」は人々を、一部の人々を苦しめていた。 隠れてコソコソと好きなアイドルグッズを買うオタクたち。 トイレでコソコソとアイドルについて語るオタクたち。 今、日本のオタクは反逆者として処罰対象になっているのだ。 その「オタク狩り令」が施行されたのはかなり昔のことだという。 私たちが生まれるずっと前にできたものだ。 これのおかげでアイドルの数は激減し、それと共にオタクたちも自然消滅していった。 しかし、アイドルがゼロ

          [超短編小説] オタク狩り

          初めて短編小説のコンテストに参加しました!結果はいかに…

          秋さんが主催する#2022年のライトノベル短編  というコンテストに参加しておりました。 結果「銀熊賞」 初めての投稿で賞をいただくというとても嬉しい結果となりました。 私がnoteを始めて間もない頃に開催されたコンテストでしたので、タイミングもちょうど良く「多くの方の目に触れることができればなあ」という気持ちで参加したものでした。 ありがたいことに多くの方に読んでいただき、評価していただきました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。 文章を書くことが好きとはいえ、万人に

          初めて短編小説のコンテストに参加しました!結果はいかに…

          [超短編小説] 正義

          「お前、おかしいよ」 そう言われたのはいつだったか。 学生の頃は友達付き合いもちゃんとやっていたし、恋人だっていた。 いつからだろう、こんな人間以下の生活を送るようになったのは。 「そうか、あいつの言葉が俺をこんなふうにしたんだ」 そう気付いた俺はいてもたってもいられなくなり ボロボロになった、本来は白であったはずの黒ずんだグレーのスニーカーを引っ掛け家から飛び出した。 居場所はもちろん連絡先すら分からない。 こんな俺に探すアテや頼れる友人もなく 「はあ、とりあえずコン

          [超短編小説] 正義

          [超短編小説] COUNTDOWN 学生時代に書いたものが出てきたので、少し手を加えこちらに載せました。 今もですが、更に拙い文章で恥ずかしく思いながらも手直ししていました…笑

          [超短編小説] COUNTDOWN 学生時代に書いたものが出てきたので、少し手を加えこちらに載せました。 今もですが、更に拙い文章で恥ずかしく思いながらも手直ししていました…笑

          [超短編小説] COUNTDOWN

          「おはよう」 私の声だけが教室に響く。 私がクラスのみんなから無視され始めたのは丁度一週間前だ。 「ごめん」の一言を残し親友が私から去り、さらに同じ日に彼氏からも理由なく別れを告げられた。 その日から私は一人になった。 今日、新たな展開があった。 「死ね。学校やめろ」 私への暴言が黒板にぎっしりと書かれていた。 私は何も言えず、教室の真ん中に呆然と立ち尽くしていた。 その時「お、みんなおはよう!」と担任が教室に入ってきた。 馬鹿みたいに声が大きく、テンションも高いので生徒

          [超短編小説] COUNTDOWN

          [詩] 無題

          走る 僕たちはいつまでも 眠る 戦い疲れた僕たちは 枯れる 水のない世界では 滅ぶ 力のないニンゲンは 響く 苦しむモノの声 生きる 僕たちは手を取って

          [超短編小説] お片付け

          「ユウト、昨日も言ったよね。ちゃんと片付けて」 口煩い母親、毎日これだ。 「おい、ユウト。何回言わせるんだ片付けなさい」 仕事しか脳のない、このクソ親父が…。 「お兄ちゃん、ほんと無理、早く片付けて」 ちょっと賢いだけのくせに調子に乗りやがって。 「分かったよ!やってやるよ!」 うちの家族は潔癖だ。 何故か僕だけが普通の感覚のためこんな風に汚いもの扱いされる。 本当に意味が分からない。 「仕方がない…今夜綺麗にしてやるよ…」 翌日はとても清々しい気持ちで1日を過ご

          [超短編小説] お片付け

          初めての投稿を終えて

          初めまして、なかはると申します。 まず、noteを始めたのは昨日のこと。 知人のお話を読む為に何度か開いたことはあるが、自分が投稿なんてと思っておりました。 どうすれば読みやすいのか分からず、 短編をさらに5つに区切って投稿してみました。 「1日1投稿目指すぜ」というような夢は数時間で崩れ去り、「僕らのボス」を皆様に早く読んでいただきたい! 少しでも多くの人の目に!という思いが強く一気に投稿。 しかし、そうなってくると、これは1つの投稿にすればよかったのでは?と思い始

          初めての投稿を終えて

          [短編小説] 僕らのボス

          私は考えていた。この案件をどう処理するか。 安堂さんは自分の仕事で手一杯だとこの前嘆いていたばかりだし、西宝さんは明日から出張だ。 そして、ボスは相変わらず昼から酒を飲んでいる。 「ボス、どうしたらいいですかね」僕はダメもとで声をかけてみる。 「もうあれから三ヶ月だろ。まずは一人でやってみなって」案の定これだ。 ボスは、路頭に迷いかけていた僕を拾ってくれた。 とても良い人なのだが、あまり仕事については教えてくれない。いつもこんな調子で「まずやってみな」と言い、案件を終

          [短編小説] 僕らのボス

          [短編小説] 僕らのボス(5)終

          「所謂ロボット、ヒューマノイドなのね。この前のラボからの電話もボスの破損についてだったの。あの日、夕方からすごく雨、降ったじゃない?緊急の案件で、傘も持たずに飛び出してさ、ショート寸前で依頼人に会ったの。そしたらやっぱり例の裏稼業の方々で…。そこからは言わなくても分かるだろうけど」 果たしてそんな映画のようなことあるのだろうか。 うまく情報を処理し切れない僕を置いて西宝さんは続ける。 「だから中身は元のボスのまんま。仕事の事も全部把握してるし、話し方、仕草、癖、全部同じな

          [短編小説] 僕らのボス(5)終

          [短編小説] 僕らのボス(4)

          「おはようございます。今日は早いんですね」 と、凝った肩を揉みながら扉を閉める。 「おはよう」と言う西宝さんと安堂さんの後ろには何やら男性がいる。 「あれ、そちらの方は…」 「紹介するわね、こちら新しいボスよ」 ゆっくりと振り向いた顔はどこか懐かしさを感じるような、どことなくボスに似ているような、そんな男性だった。 「初めまして…で良いのかな?これからは気持ち新たにここのボスとしてやっていくよ。よろしくね」 「あ、はい。よろしくお願いします」 なんだ、対応が早すぎないか。

          [短編小説] 僕らのボス(4)