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新日本国憲法私案の解説【10】

執行部

内府

 卿という古めかしい尊称を復活させる。政務を総括するトップは政務卿で、国民参加の直接予備選挙で候補者を選出する。そして地域代表議員が推薦し、さらに最終的には、地域院議員と地域共同体首長による指名選挙を行い指名する。これによって伝統的権威の中に民主政体を確立する。
 さらに国民選挙で選出することで国のリーダーを調整型からカリスマ型の出現も可能な制度にした。国民の一時的なパッションでリーダーを選出する弊害は、ワイマール憲法で経験済みなので冷却装置として、最終的には地域院議員と地域共同体首長による良識的判断によって指名する。これによって国家の危機際して英雄の登場余地を残す。
 政務卿は自らの分身となる祭務卿を事前に指名する。祭務卿は地域院議員から指名し、皇室事務を総括するとともに、政務卿が執務不能に陥るときは代行する。現行制度上では宮内庁長官と副総理を兼ねる、鎌倉幕府の連署をイメージした重職になる。同時に、地域院議長を兼任する。
 内府の任務について説明する。外務卿は、外交や国家安全保障などを、内務卿は領土、領空、領海の警備と人民の保護、広域災害を担当する。総務卿は、内政全般、教務卿は、教育、科学、技術全般について、商務卿は産業、貿易全般について、財務卿は、財政について、法務卿は、法行政について、庶務卿は、内府および外府、行政区の事務を担当する。内府は議会に責任を負う。

外府

 外府は、宮内長官、広報長官、外交長官、貿易長官、国土長官、交通長官、国防長官、社会長官、産業長官、通信長官、衛生長官、環境長官、金融長官、歳入長官、調達長官、社会長官、労働長官、年金長官、資源長官、食料長官、技術長官、科学長官、教育長官、競技長官、諜報長官、司警長官、法政長官、領域長官で機関名は省とする。
 政務卿は当然、執行権の責任者として、すべての執行機関を掌理する。その他、祭務卿が宮内省、諜報省、外務卿が、外交省、国防省、内務卿が、国土省、領域省、通信省、交通省、食料省、総務卿が、衛生省、環境省、社会省、労働省、教務卿が、教育省、競技省、科学省、商務卿が、技術省、資源省、貿易省、産業省、財務卿が、歳入省、金融省、年金省、法務卿が法政省、司警省、庶務卿が調達省、行政区事務を担当する。

行政区

 行政区とは地域共同体とは別に中央行政の区画として道を設置する。道の責任者を長官として、領域省、国土省、交通省、通信省などと緊密に連携して、領域の警備や保全を行う。任命は政務卿が行い、天皇が認証する親輔職である。

拘束されない執行部

 内府は日本国憲法の内閣のように議会に責任を負う。外府は基本的に議会への責任機関ではないが、内府を通じて間接的に議会の統制を受ける。そのかわり、外府は業務に専念できる。議会答弁の義務はない。もちろん議会から要請があれば答弁はすることはやぶさかではない。これにより執行責任者は、通年議会でも業務に支障はないようにする意図がある。
 日本国憲法では首相以下、閣僚が国会に数百時間縛られて、外交、内政にか ける時間が各国の首脳に比べて極端に少ないという課題を解決する。政府による議会の解散権と法案の提出権は認めない。これにより三権分立を日本国憲法より厳格に行うことができる。
 閣法提出により首相が議会に縛られるため、主要各国の[i]首脳に比べ外交活動は少なくならざるを得ない。招待を受けても調整がつかないというケースも多くあるだろう。軍事オプションがない日本の国際的なプレゼンスを高める唯一の方法が外交だとすれば、この議会拘束の弊害は大きい。
 現在の内閣には72条で「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」とあり、法律案の提出権があるが、内府には予算提出権を付与しないことで、議会への拘束をできるだけ減らして、より三権を分立させる狙いがある。

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