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新日本国憲法私案の解説【9】

立法部

2院制議会

 日本国憲法では第4章国会となっているが、国会は立法機関なのだから条文では立法部と表記する。三権は立法、執行、司法で統一した。
 議会は2院制とする。連邦国家では、国民代表の下院と州代表の上院といったように必然性がある。
 しかし日本国憲法下の衆議院、参議院は選挙制度に大きな差がなく、代表する民意に差がないばかりか、選挙時期によって、あらわれるねじれで国政が滞ることがある。
 議員は国民代表と地域代表を選出し、それぞれ国民院と地域院とする。細かな規定は日本国議会法として法律で定める。大まかな権限権能は合衆国憲法を参照している。

立法権限と権能

 日本国憲法では、選挙制度が列記されながら、権限や権能がその中に埋もれてしまい明確でない。そこで立法権限と権能を列記した。
 日本国憲法には項目がないが設けることにする。法律を議決すること、が権限のすべてといえるが、日本国憲法では、規定がなかった重要な立法権限を明確化する狙いがある。通貨発行権限は政府ではなく議会が、国軍の編成権は議会、指揮権は政府とする。当然だが、国軍の編成権は日本国憲法には存在しない。
 議会の権能も日本国憲法では特に規定していない。いくつか列記したが合衆国憲法の受け売りだ。そんないい加減案ことでいいのかとおしかりを受けそうだが、目的は議会の立法権限と権能を明確化することだ。
 以下でいくつかの権能と権限を解説する。

貨幣発行権

 重要になるのが貨幣発行権の問題だ。新型コロナウイルス戦争や英国のEU離脱で注目を集めているMMT理論だが、これも政府機関に貨幣発行権があり、中央銀行が貨幣を発行していることが前提になっている。

条約の承認

 日本国憲法では、73条第3項に条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。内閣の事務に規定してあるが、議会の権能として規定する。

政務卿の信認

 このあと執行の章で説明するが、政務卿は直接選挙で選出することを要請している。選挙の結果を議会が信認したのち天皇が認証する、というプロセスになる。
 また政務卿を信認しないときは、国民院議員は総辞職することにする。政務卿は基本的に地域代表議員と共同体首長が推薦する。その推薦に国民院が抵抗するとき、国民にその決定が正しいかの判断を求める目的である。

憲法改正の発議

 日本国憲法では第96条に、この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。とある。このあと、法律と同様に天皇が公布する。

非常事態の承認

 これは日本国憲法にはない。改正が必要とする本書の重要課題である。国家緊急権を憲法で規定すること、それは日本国議会の承認を必要とすること、期限を設けること、などいくつかの安全装置を設けて執行者の恣意的な運用を防止する必要がある。

独立院の管轄

 日本国憲法でも規定されている憲法上の機関である会計検査院を意識した条文だ。基本的に政府(執行部)の執行活動を監視する機関なので、政府とは別の機関とした。会計検査院は監査院に、他にも議院を管轄する庶務院、情報収集や記録組織として文書院などが考えられる。

会期不継続の原則

 議会運営について、最大の課題は会期不継続の原則だ。法案審議は次の会期に継続しないので廃案を目指す野党が時々牛歩戦術で採決を引き延ばす。こんな無駄なことはないので廃止するのが妥当だろう。
 議会は会派で行動しているので、多数の議席を占めている会派が賛成すれば普通に法案が可決されるが、決まりきった採決に、反対の意思を支持者に示すためだけに、莫大な運営経費をかける牛歩行為をする野党にはあきれるばかりだ。
 しかし、ただ採決を遅らせるために牛歩をするのではない。それらをマスコミが取り上げて世論に訴え、世論喚起されれば会期内の成立を阻止できるかもしれない。いやいや、次の会期でまた審議すればいいと、思われる人もいるだろうが、それが会期不連続の原則で阻止できるのだ。

国会法
第六十八条
会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。但し、第四十七条第二項の規定により閉会中審査した議案及び懲罰事犯の件は、後会に継続する。
第四十七条
1 常任委員会及び特別委員会は、会期中に限り、付託された案件を審査する。
2 常任委員会及び特別委員会は、各議院の議決で特に付託された案件(懲罰事犯の件を含む。)については、閉会中もなお、これを審査することができる。

国会法

 牛歩行為は、国会の権能を否定する立憲主義の破壊行為だ。憲法私案では会期は通年とすることで、決まりきった採決を行わず、世論へ訴えることで廃案にする行為を永久に封印させる。

内閣の法案提出権

 内閣の拘束という課題もある。日本の内閣は議会の拘束時間が長く、委任された行政の執行が滞ることがある。日本の首相は108日(2016年)であるが、英国首相などは38日(2016~17年)で、ドイツは6日(委員会は非公開。2016年)。
 米国の大統領にいたっては、一般教書演説のため両院合同委員会に出席した1日のみだ(2017年)。これでは日本の首相は全く業務ができない。
 これは結局、内閣の法案提出権の課題ともいえる。内閣が自ら閣法を提出するので、質疑に応じなければならず、結果議会に無駄な拘束を受け、挙句の果てに廃案なんてことになる。

内閣の解散権

 内閣による―憲法上は天皇の行為、衆議院の解散は認めない。日本国憲法では、内閣には国権の最高機関たる議会解散権もあり、一体どちらが最高なのかが不明瞭である。これで明確に議会が国権の最高機関である。

定足数

 日本国憲法に総議員数という文言がある。説が分かれているので、それを是正するために法定議員数という文言を使用した。また3分の1の出席で成立するとなっている本会議の必要定足数を、10分の1にすることで、多数意見を反映している議案のスムーズな採決をはかる意図がある。

常設議会

 日本の議会の低俗さは目に余るものがある。子供には絶対見せられない。「人の話は静か聞くこと」と子供には教えるが、総理の施政方針演説などはヤジの嵐だ。委員会の採決時など委員長席に大挙して詰めよるシーンは、野球の乱闘と同じで、参加しないと罰則があるのかと疑いたくなる。
 特に実感している弊害は予算が日程通り執行されないことだ。常会は毎年1月召集され会期は150日だ。通常であれば6月には閉会して、議員の仕事が終わり長いバカンスだ。しかも視察と称して公費で海外にも行くことができる。
 次年度の予算審議は2月に行なわれ、年度内に成立しないときは暫定予算を組んで、4月新年度から暫定的に執行させることがある。そもそも、100兆を超える金額の予算を1カ月で精査できるわけもなく審議は滞りがちだが、与党側に不祥事があるとそれらの審議をすべて予算委員会で行うものだから、さらに審議が遅れる。
 野党は予算審議時間を人質に取り、政権から譲歩を引き出すことを戦略としていた。与党が自民党で3分の2、野党が社会党で3分の1という勢力のころは、国対の駆け引きで議案を成立させていたが、現在は国対が機能せず、野党は、予算委員会では不祥事審議にかこつけて、予算審議を遅らせ、国会外でデモやSNSによる世論喚起を行っている。
 僕は、国会対策委員長による決着ということに疑問を感じている。ましてや、昨今の廃案を目的とした国会外の乱闘活動には憤りを覚える。そのような行動をする政党を立憲破壊党と呼ぶことにする。
 憲法私案ではこれらの立憲破壊はできないようにした。夏休みはあるが公費で視察は認めない。月曜から金曜まできっちり議案審議をしてもらう。年度初めから予算が執行できるようにする。新憲法下では、年度末になると夜間工事が増えて渋滞が発生するようなことはなくなるだろう。

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