思想による殺人……犯した罪は許されるのか?ドストエフスキーの『罪と罰』④
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第2作目には、ドストエフスキーの『罪と罰』を取り上げます。
ドストエフスキーといえば、近代文学を代表する世界的文豪です。
同時代に活躍したトルストイと並び、ロシア文学の世界的存在感を一気に引き上げた立役者でもあります。
長編が多く、内容も難解だと言われていますが、教養としては概要だけでも知っておきたい名作の数々!!
『罪と罰』と共に代表作として有名なのが、『カラマーゾフの兄弟』です。
今回は、話の内容が比較的分かりやすく、考えさせられる議論もしやすい『罪と罰』の方をピックアップさせていただきますね。
それでは、『罪と罰』の世界へ入っていきましょう!
『罪と罰』―思想犯の罪と許しをキリスト教観点から描く世界的傑作
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821~1881)
【書き出し】
七月はじめの酷暑のころのある日の夕暮れ近く、一人の青年が、小部屋を借りているS横丁のある建物の門をふらりと出て、思いまようらしく、のろのろと、K橋のほうへ歩きだした。
【名言】
【解説②】清らかな女性が凶悪犯の心を溶かす
「生きていることが害悪のような欲深い老婆の命とお金を奪い、そのお金で多くの人間の命を救うことができるならば、その殺人は正義なのではないか」
若い自分の未来のためには、強欲な高利貸しアリョーニャを殺してもいい……そんな独りよがりな論理を構築し、殺人を犯したラスコーリニコフ。
アリョーニャだけでなく、犯行現場に居合わせただけで、彼女の義理の妹リザヴェータをも殺してしまいます。
そのこともあってか、犯行後に恐怖と自己嫌悪の思いに捉われるようになります。
犯行の翌朝には激しい悪寒と焦燥感。
翌日、たまたま家賃の督促の件で警察署に呼び出されたときには、署長らが前日の老女殺害事件を話題にしているのを耳にし、恐怖に耐えきれず卒倒してしまいます。
その後も、捜査状況が気になりすぎて、自ら警察に赴いて身の潔白を語り始めたり、
現場近くのペンキ屋が犯人だとされて誤認逮捕されても、
予審判事ポルフィーリイに疑いの目を向けられ続けていることを知ったラスコーリニコフは、耐え切れず、後に恋人となるソーニャについに罪を自白します。
完璧な思想のもとにうまく殺人をしおおせた、と思ったのに、標的以外の無実の女性を殺してしまったり、犯人捜しに耐えられなくなり、不自然な行動をとるラスコーリニコフの姿はどこか滑稽で、人間心理の弱さを感じさせます。
そんな極限状態のラスコーリニコフでしたが、心清らかな女性の存在が、徐々に彼を変えていきます。
『罪と罰』で描かれる「聖女」①リザヴェータ
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