幼き友情|エッセイ
11月上旬、娘の通う幼稚園でバザーがあった。
娘はバザーに伴う出店やゲームを心待ちにしており、当日は雨にもかかわらず、室内でのスーパーボールすくいを楽しみ、昔懐かしのわたあめを口にして、至福の微笑みを浮かべていた。
バザーの催し物を一通り終え、幼稚園の門を出ようとした瞬間、懐かしい顔の親子と目が合った。
初夏に保育園へと転園していった、娘のお友達Cちゃんが、お母さんに手を引かれながら、じっとバザーの様子を外から眺めていたのだ。
娘は躊躇わずに声をかけた。
「あ!Cちゃんとママだ!」
嬉しそうに駆け寄ろうとする娘に対し、Cちゃんは不安げな顔で後ずさりした。
幼稚園のバザーを覗きに来たのは明らかなのに、足がすくんでいる。やがて、くるりと踵を返すと、雨の中、元来た道を歩き始めた。
何事だろう?と不思議に思っていると、Cちゃんのお母さんから、こんな一言を伺った。
「おかしいなあ。Nちゃん(娘)に会いたいって言ってここまで来たのに、会った瞬間に引き返しちゃうなんて」
なんと、Cちゃんは娘のNに会うために、わざわざ雨の中、以前通っていた幼稚園のバザー会場まで来てくれたのだという。
それなのに、会った瞬間に帰りたくなるとは、一体どういうわけなのだろう。
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