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両想いなのに結ばれない⁉アンドレ・ジッドの「狭き門」①

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今月は、アンドレ・ジッド『狭き門』を取り上げます。

『狭き門』では恋愛と禁欲的信仰の間で葛藤する二人が描かれます。

彼女の宗教的禁欲や、彼女に見合う自分になるまでは……と自己研鑽をつづける主人公。その結果、両想いなのに結ばれないという、こじらせ恋愛の悲劇。

聖書の一節、「狭き門より入れ」(マタイ伝)が冒頭に掲げられ、ノーベル文学賞作家ジッドが繊細な筆力で読者を引き付けます。

※あらすじは山内義雄著『狭き門』(新潮文庫)を参考にしています。




『狭き門』――恋愛と禁欲的信仰の間で――

アンドレ・ジッド(ジイド)

1869~1951。フランスの作家。
8歳でアルザス学院に入学するが、病気などのために退学と復学を繰り返す。
19歳でアンリ四世校に転入するも退学。
以後、文筆活動に入り、小説、随筆、評論、日記など多様な形式の作品を多数発表した。
1947年、ノーベル文学賞受賞。しかし、死後、全作品がバチカンにより禁書に指定される。

代表作品:『パリュード』『背徳者』『法王庁の抜け穴』『一粒の麦もし死なずば』など


【書き出し】

ほかの人たちだったら、これをもって、一巻の書物を書き上げることもできただろう。だが、私がここに物語る話は、私がそうした生活を生きんがために全力をつくし、そして、私の精根がそれに傾けつくされたところのものなのだ。



【名言】


狭き門より入れ、滅びにいたる門は大きく、その路は広く、これより入る者おほし。生命にいたる門は狭く、その路は細く、これを見出す者すくなし。
(マタイによる福音書)より

過ぎ去ったことを悔やむのはやめましょう。もう頁(ページ)はめくられてしまったのですもの。



【あらすじ(前半)】


私(ジェローム)は、十二歳になる前に父を失った。

母と私はパリに移り住むことにしたが、夏になると、叔父のビュコランが毎年呼んでくれるフォングーズマールで過ごした。

叔母のリュシルはたいへん美人だったが、私は尊敬と恐れの交じったような気持ちがして、近くにいると窮屈だった。

ビュコラン家には長女のアリサ、妹のジュリエット、一番下の弟のロベールの三人の子どもがおり、私は二歳年上のアリサに恋心を抱くようになった。

私が十四歳になった頃、ビコラン家で偶然、叔母の不倫相手を見てしまった。二人に気づかれずに部屋の前を通り抜け、アリサの部屋に入ると、彼女はつぶやくようにこういった。

「あら、ジェローム、なぜ帰ってきたの?」

彼女の目には涙が溢れていた。この瞬間、私の一生が決定された。私の一生の目的は、アリサを恐怖や不幸から守り、その生活を守ってやることしかないと思ったのだ。アリサは言った。

「ジェローム、誰にも言わないでね……お気の毒なお父様は、何にもご存知ないんだから」

母と私がパリへ戻る途中、叔母が家出をしたと言う知らせが届き、私たちは引き返すことになった。その週末の礼拝で、牧師がキリストの言葉を引用して語った。

「力を尽くして、狭き門より入れ。生命に至る門は狭く、その路は細く、之を見いだすもの少なし。」

私は、自分こそが、その一人になろうと決意した。そして、アリサにふさわしい自分になるために、努力や敬虔な行為などのすべてを、神秘的な気持ちでアリサに捧げた。

彼女との心の距離は、徐々に近づいていき、お互いの愛情が深まっていった。私の母も、患っていた心臓病が重篤になるにつれ、二人の結婚を応援するようになった。やがて母は安らかに息を引き取り、私は深く悲しんだが、一方では、母の死が、ありさを、私のほうに早く近づけることになるだろうと言う空想が、悲しみを抑えていた。

この年の夏、二人の愛はさらに深まり、私たちは不幸や死を征服し、毎朝喜びに包まれていた。アリサの妹・ジュリエットは私とアリサの恋の仲介役となってくれ、私はアリサの前では怯えて言えないことも、ジュリエットには話して聞かせることができた。


夏の終わりのある日、庭を散歩しながら、ジュリエットが私とアリサの婚約を話題にした。私はアリサへの愛と二人の未来について夢中で語り、ジュリエットの戸惑う様子に気がつかなかった。そこにアリサが現れたが、その顔は真っ青だった。翌日、私は彼女と婚約する気で言ったが、アリサは「婚約するのはやめましょう。私、そんなに幸福になる必要がないの」と言うのだった。

学校に戻ってまもなく、アリサから手紙を受け取った。そこには婚約ができない理由として、アリサが年上であり、私が将来アリサに飽きた際に苦しみが生まれることが述べられていた。

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