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子どもから大人に移り変わる少年少女の淡い恋心……樋口一葉の『たけくらべ』②


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9月第1作目には、樋口一葉の長編小説、『たけくらべ』を取り上げます。

樋口一葉といえば、五千円札になった女性として、国民全体にその存在が知られているはずの方です。

一方で、お札で顔は知っているけど、実は彼女の作品を読んだことがない、という方も多いのではないでしょうか。

近代日本でも数少ない女性職業作家となった樋口一葉の代表作。

この機会にぜひご紹介していきたいです。




『たけくらべ』――子どもから大人に移り変わる少年少女の淡い恋心……


樋口一葉【1872~1896】

東京府(東京都)生まれ、
本名、樋口奈津。
十四歳のときに中島歌子の歌塾・萩の舎に入門。
十七歳のときに父が死去し、小説で一家の生計を立てることを志す。
1892年に処女作『闇桜』を発表。
1894年に『大つごもり』を発表後、独創的な文体が森鴎外、幸田露伴などに絶賛されるが、二十四歳の若さで肺結核により死去。
2004年より、肖像が五千円紙幣に採用。
代表作品:『うもれ木』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』など


【書き出し】


廻れば大門の見返り柳いと長けれど、
お歯ぐろ溝に燈火うつる三階の騒ぎも手に取る如く、
明けくれなしの車の行来にはかり知られぬ全盛をうらなひて、
大音寺前と名は仏くさけれど、
さりとは陽気の町と住みたる人の申(もうし)き……


【名言】

色白に鼻筋とほりて、口もとは小さからねど締りたれば醜くからず、物いふ声の細く清しき、人を見る目の愛敬あふれて、身のこなしの活々したるは快き物なり


【あらすじ】(後編)


 ある日、正太と美登利が筆屋で遊んでいると、二、三軒先の軒先を信如が歩いているのを見つける。

「筆屋に来たものの、自分たちを避けたのだ」と思った美登利は、「嫌な坊主ったらない」と罵りながら、信如の後姿を見つめていた。

すると正太が大人のような口調で信如の肩を持つので、美登利は「子供の癖にませたようでおかしい」とからかった。

正太は「もう少しで大人になる。そしたら立派な格好をして、綺麗な嫁さんを連れて歩くのだ」と強がるが、筆屋の女房に、「お嫁さんには美登利さんと決めているんでしょう」と言われると、図星で顔を赤くした。



ある雨の日、信如は大黒屋の寮の前で、運悪く下駄の鼻緒を切ってしまう。

うまく鼻緒をすげることができずにいたところ、「誰か鼻緒を切った人がいる」と気づいた美登利が、紅入り友仙(友禅)ちりめんの切れ端を持って駆け出してきた。

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