「いい大学」に行ってほしい理由

高校1、2年生の指導では、まだ志望大学が決まっていないということがよくあります。

それ自体は普通のことですし、色々な情報を集めて、じっくり考えて決めてほしいと思います。

ただ私はそういうとき、状況が許せば、生徒の学力に関係なく、

「できるなら偏差値50以上の大学に行ってほしい」

と言います。

また、私はもっぱら大阪市内で働いているので、「産近甲龍以上」という言い方もします。
(関西圏外の方にはあまり通じないと思いますが、京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学のことです)

最近は大学入試改革の影響で偏差値の変動が著しく、一概に言うことが難しいのですが、要するに「それなりの努力をした人が入れる大学に行ってほしい」ぐらいの意味です。

努力せずに大学に入ることが悪だとは言いません。推薦入試でもAO入試でも、あるいは特別勉強せずに入れるレベルの大学でも、それで本人が4年間という年月とおそらくは数百万以上の学費に見合うものを得られるのなら、何でもいいのです。

しかし、これは私が実際に大学生になるまで知らなかったことなのですが──つまり誰も教えてくれなかったことなのですが──、特段の努力をしなくても入れる大学というのは、つまり努力をしたくない、あるいは努力をしたことがない学生が集まります。

当然勉強をしたくない、できない学生も大勢いるわけです。そんな彼らは、大学の講義中も雑談したり、ゲームをしたりして過ごすことが珍しくありませんし、何を専攻しても自分で調べたり考えたりしようとしません。単位さえ取れれば一夜漬けでも丸写しでも何でもいいのです。

そういう学生は昔からいましたし、その存在をどうこう言うつもりはありません。

問題は、そういう学生に囲まれて4年間を過ごしたいかどうか、です。

まさに自分がそうなりたいというのなら何も問題はないでしょうが、受験勉強をするためにわざわざ塾に来たり私の授業を受けたりする高校生は、この話をすると大抵しょっぱい顔をします。

大学講師陣、教授陣についても同じことが言えます。高い専門性と研究に対する熱意があるなら、多くの場合より良い環境でより優秀な学生達を指導したいと思うでしょう。当然、熱意も能力もない学生の集まる大学からは離れていくに決まっています。

これは私の友人が通っていた短大の話ですが、英語圏のネイティブの講師が、講義中に日本人嫌いを公言し、ある日などは「ファッキンジャップ!」と叫んで教卓を蹴ったそうです。

彼女はそれでもクビにはならなかったようなので、つまりそういう講師がいても容認する学生が多かったか、辞めさせようにも代わりの講師がいなかったかのどちらかだったのだろうと思います。

いずれにせよ、この話を聞いてこの学校に入りたいとは思わないはずです。

そして、一番肝心なことなのですが、私は出身大学をコンプレックスにしてほしくありません。

「恥ずかしいから大学名を言いたくない」「大学のレベルが低いので就活が不安」等々、入った後に自分の大学をハンディのように口にする学生は大勢います。

大学は義務教育ではありませんし、現状ではかなりの学費がかかります。また、受験勉強のために塾や予備校に通ったりして、17〜18歳という若く貴重な時間を費やす人も多いはずです。

何故そこまでの犠牲を払って、生涯履歴書に残るコンプレックスを作る必要があるでしょうか。

このコンプレックスを打破するには、再度大学に入り直すか、もしかすると大学受験以上に難しい資格やスキルを身につけるしかありません。それはそれで良い人生経験だと思いますが、そもそものコンプレックスを作らない道が高校生にはあるはずです。

確かに大学の良し悪しは高校生の目には区別しづらいものです。

難関大学と三流大学の違いは、パンフレットやガイド本だけではほとんどわかりません。何故ならそこには基本的に良いことしか書いていないのです。

いわゆる難関大は、それだけ人気のある大学だととらえると少しわかりやすくなるかと思います。

人気のあるレストランと人気のないレストランが並んでいたとしたら、しかもメニュー展開も価格も大して違わないとしたら、人気のあるレストランを選ぶのは普通のことではないでしょうか。

それが大学選びとなると、受験勉強をしたくないという理由で、人気のない方を選んでしまう学生が大勢います。そして、「ここの大学は不味い。入らなきゃよかった」と言う学生も珍しくありません。

実際、私が担当した生徒ではありませんが、偏差値の低い大学に入ったもののすぐに辞めて別の大学を再受験するために塾に戻ってきた生徒がいました。塾に戻っては来なかったものの、同様にすぐ辞めてしまったという生徒は他にもいます。

家の事情、学力の伸び悩み、他にも色々な要素で低偏差値の大学に甘んじる学生が多いのは承知しています。気持ちもわからなくはありません。

しかし現役高校生の皆さんはこれからの時代の主役です。人生はあなたが主役の物語です。

大学進学は数ある選択肢の中の一つに過ぎませんが、それが悔いの残らないものになることを切に願っています。

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