独立独歩の陶芸家・辻清明氏
小代焼中平窯の西川です(^^)
今回は私の好きな陶芸家のお一人である辻清明氏について書いていきます。
清明氏は1927年生まれで、2008年に81歳でお亡くなりになりました。
また、以前ご紹介しました辻協氏の旦那様です。
私は特に清明氏の花器(花入)作品が好きでして、多種多様な作品群の中でも特に力を感じます。
協氏と同じく料理の器にも優品が多いです。
食器に関しては何気ない日の普段使いには協氏の器、人を集めて宴を開くような華やかな場には清明氏の器が合うように感じています。
『独歩 辻清明の宇宙』
清明氏の作品集です。
定価で30,000円(税抜)となっておりますので、なかなか値の張る書籍ではありますが、写真が素晴らしく清明氏ファンにとっては十分に読む価値があります。
陶芸作品だけではなく、清明氏がコレクションしていた骨董や清明氏宅の茶室なども写真に収められており、清明氏の美意識を総合的に知ることが出来ます。
ガラス作品や書などなど、様々な作品を手掛けていらっしゃいますが、代表作は何と言っても信楽の花入でしょう。
清明氏自身も床の間という格式のある場所へ飾る器であるため、花入には並々ならぬ想いがあったようです。
自然な歪みのある花入ですが、作り手の立場から見ると何の工夫も無しに作れるような作品ではありません。
言葉で伝えることはとても難しいのですが、
大地や荒磯を連想させるあの自然な力強さは、不自然なまでの陶芸への情熱や造形感覚が無ければ作れるものではないのです。
小代焼中平窯とは基本的な技法や作風は違うのですが、私は清明氏の花入を制作上のお手本にしています。
『肴と器と』
辻ご夫妻による、季節の料理や器の取り合わせを勉強できる書籍です。
ご夫婦の作品だけではなく、他の作家の器や骨董などなど、良い意味で拘りが無く自由に器を取り合わせています。
これは茶の湯の美意識にも通じるように思います。
これは個人の見解ですが…、
侘茶と言っても、本当にただの粗末な小屋の中で何の変哲もない丼茶碗でお茶を呑んでも、何も面白くないんですよね…。
一見、素朴な茶室に見えてとても良い木材を使用していたり、
高価な唐物茶入と新作(当時の楽焼)の茶碗を組み合わせたり、
そういった取り合わせの妙や意外性の中にある美意識が侘茶であると思っています。
まさに、村田珠光の「藁屋に名馬をつなぎたるがよし」の名言のように、
侘びた藁屋に優れた馬のような名品を組み合わせるような美意識です。
…少々脱線してしまいましたね(^^;
まぁ、上記のような感じで辻ご夫婦の料理と器の取り合わせも妙味や意外性があって、大変面白いということを言いたかったんです。
また、ご夫婦揃って大のお酒好きだそうで、確かに酒呑みの好きそうな料理が多いなと楽しい気分になりました(笑)
魯山人氏に続く割山椒の名手であるともお見受けしておりまして、花入と同様に料理の器も参考にしております。
2024年8月23日(金) 西川智成