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陶芸・再解釈の可能性

小代焼中平窯の西川です。
タイトルだけ読んでも伝わらないですよね。



今回は
『時代や地域を跨いで意匠を再解釈する』という制作態度が
『伝統を踏まえつつも新しい価値を持つ作品を生みだせる』かもしれない…?

というお話です。



最近、私が個人的にやり始めたことなのですが
現在進行形ですので結果的に上手くいくのか失敗に終わるのか、
私自身にも分からないんです。


しかし、今現在を書き留めることで5年後10年後に振り返ると何かの気づきがあるかも。

と思いこの文章を書いている次第です。





再解釈の歴史


意匠や制作工程が類似しているものの、
美しさの種類の違う名品が生まれてきた歴史を振り返りたいと思います。

歴史については完全に解明できていない部分や意見が割れている事柄もあります。
私が書く内容が全てであるとは思わないようにしてください。


焼き物って歴史があるので太古からずっと続いてきたといイメージがあるかもしれませんが、

実は日本では、
釉薬を掛けた陶磁器は安土桃山時代~江戸時代に突然・同時多発的に始まりました。

※六古窯に代表される焼締陶は歴史が長いので例外です。


今回はその安土桃山時代の焼き物を例にします。



志野焼と唐津焼:デザインが類似


志野焼と唐津焼は共に安土桃山時代に茶の湯の流行に伴って始まり、
爆発的に発展した焼き物です。

それぞれかなり短い期間内で生産を止め、幻の焼き物となっていた時期がありました。
(二彩唐津・三島唐津と呼ばれる作風は比較的長期間続きましたが。)


それぞれ無地のものもあるのですが、
「鉄で絵を描き、釉薬を掛けて焼いた陶器」というのは
当時の日本では革命的な出来事でした。


そして、その器の形状や絵のモチーフなどなど、志野焼と唐津焼に共通した器があるんです。


あくまで私の印象ですが同じデザインでも

志野焼はしっとりとした情緒ある作風であり、
唐津焼(絵唐津)はカラッとして飄々としている作風であるところが

魅力的であるように感じています。



黒楽と瀬戸黒:製法が類似


こちらはどちらも茶の湯で用いられる抹茶茶碗ですが、
その製法が他の陶磁器と一線を画します。

鉄釉を掛けた茶碗を
焼成中の窯の中から引っ張り出し、急冷するんです。


大量に作れるかどうかを物差しにしてしまうと非効率この上ない技法なんですが、
この技法でしか得られない、美しい黒色の茶碗になります。

しかし、似たような製法でも焼成中の温度の違いや釉薬の違い、
また、形状の違いにより異なる魅力があります。


低温の楽焼(長次郎の作)はわびさびの精神を体現したような印象を受けますし、
比較的高温の瀬戸黒では造形も相まって力強い生命力を感じます。

そしてどちらも魅力的です。


私がやろうと思っていること


既に唐津焼や備前焼で『引き出し黒』に取り組んでいる方々がいらっしゃいますので、私は周回遅れです 笑


しかし、小代焼の地(熊本)で取り組もうとしていることは、
私にとっては新しいことになりますので 見守っていただけますと幸いです。



小代焼に関して


小代焼に関しては再解釈ではなく、古小代の名品を真正面から解釈しようと考えています。

…古小代を私なりに再解釈しようとしているとも言えるのか…?
まぁ、ここの定義に拘り過ぎても言葉遊びで終わりそうですので、これ以上深くは入りません。


古小代の写しも作りますが、完全な写しでなくとも古小代の良さを抽出したものを自身の作品へ活かせればと思っています。

もちろん素材も技法も本家本元でいくつもりです。

…ちょっと大きなことを言い過ぎたかもしれません…。
…私が未来で後悔しないことを祈ります 笑


ちなみに定番食器はここまで気難しく考えてませんよ~!
どうぞ、気軽に見てやってくださいm(__)m



高麗茶碗や桃山陶芸


私は今のところ井戸茶碗、伊羅保茶碗、古伊賀、瀬戸黒茶碗、志野茶碗、黄瀬戸茶碗
に魅力を感じています。


また、個人的に釘彫伊羅保茶碗や一部の御本茶碗の高台内に見られる渦巻き模様が気になっていして。

ひょっとしたら古小代の『ニナ尻』も共通の美意識のもとに作られた可能性もあるのではないでしょうか?

…まぁ、この話には特段の証拠はありません。
私がそう感じているだけです。


現地の素材、現地の製法で再現するあり方は素敵です。

しかし、今回はその意匠やそこから感じる良さとは何かを自分の中で考え、手元にある素材と製法で再解釈してみようと思っています。

そうした取り組みの中で「何かが生まれるかも?」という予感があるのです。



その後の展望


その後の展望はまだありません 笑
この取り組みが成功か失敗か、まだ分からないからです。



10年後に本歌の良さを絶妙に落とし込んだ 新たな名品が生まれる可能性はありますし、
どうしようもない駄作ばかりが産み落とされる10年間となる可能性もあります。


本当に5年後10年後に実を結ぶのか?
確信はありません。



しかし、
『いま種を蒔かなければ絶対に実を結ばない』ということだけは確信しています。



7月17日(月) 西川智成 

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